
「ゼネコンとはどんな意味?」
「ゼネコンの仕事内容は?」
「ゼネコンにはどんな会社がある?」
“ゼネコン”の名前はニュースなどで聞いたことがあっても、このように疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
「ゼネコン」とは、東京スカイツリーや国立競技場など、日本の建設業を支える重要な会社を指します。
さらに、スーパーゼネコンや準大手ゼネコン、中堅ゼネコンの売上や年収など、参考になる情報をいろいろな角度から詳しく解説していきます。
ゼネコンに興味を持っている方は、ゼネコンについてくわしく知ることができるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
ゼネコンに就職や転職を考えている人にとっては必見の内容となっています。
ゼネコンとは

はじめに、ゼネコンの基本的な知識について確認していきましょう。
ゼネコンの意味や役割、似た言葉との違いについて解説します。
ゼネコンの意味
ゼネコンとは、「General Contractor(ゼネラル・コントラクター)」の略語であり「総合請負業者」を意味します。
「総合請負業者」とは、発注者から工事を請け負い、完成までのプロジェクト全体をまとめる業者のことを表します。なぜ総合と言われるかについては、この後に解説していきます。
ゼネコンの役割
ゼネコンの役割について、以下の3つに分けて紹介していきましょう。
- 大規模な工事を手がける
- 「設計・施工・研究」の3部門を合わせ持つ
- 工事全体のマネジメントを行う
大規模な工事を手掛ける
ゼネコンが扱う工事は大きく「建築工事」と「土木工事」の2種類あります。
建物の種類は以下のように分類すれば分かるでしょう。
建築工事 | 高層マンション、オフィスビル、公共施設、医療施設など |
土木工事 | 道路、橋、トンネル、ダムなど |
その他にも、街づくりなどの都市開発事業や、技術力を駆使した環境事業など、ゼネコンが担う事業は多岐に渡ります。
さらにゼネコンの特徴は売上の規模です。ひとつの工事あたりの金額は数千万~数百億円となるため、中堅ゼネコンでさえ年間の売上高は数千億円を超える規模になります。
スケールの大きな仕事に携わることを夢見る人にとっては、ゼネコンは夢を叶えられる会社といえるでしょう。
「設計・施工・研究」の3部門を合わせ持つ
ゼネコンと町の工務店との違いは「設計・施工・研究」の3部門を自社が合わせ持っているかどうかという点です。
中小の建設会社や工務店では「施工」だけ、あるいは「設計」と「施工」だけ、という会社です。
建物の大きさで比較すると、中小の建設会社や工務店では、小さなビルや戸建て住宅の建設などが多くを占めています。
「設計・施工・研究」を合わせ持つゼネコンは、資金力がある大規模な会社に限られます。特徴的なのが「研究」分野です。
デベロッパーなどの発注者との交渉には「設計」「施工」の技術力だけではなく、品質力を持った会社であることをアピールするために「研究」分野は欠かせないでしょう。
工事全体のマネジメントを行う
ゼネコンは、発注者から工事を請け負い、完成までの工事全体をまとめる業者のことを表します。とび、左官などさまざまな工種の専門工事業者に現場工事を発注します。
1次業者から2次業者へと複数の階層にわたって大規模な工事を行うため、会社の規模も大きくなくてはマネジメントできません。
ゼネコンの役割は、請け負った工事のプロジェクト全体を管理し、適切にコントロールすることです。この点が「総合請負業者」と呼ばれる理由です。
ゼネコンと似た言葉との違い
ゼネコンと似た言葉に「サブコン」と「マリコン」があります。それぞれの違いを紹介してみましょう。
サブコンとは
サブコンとは、「sub contractor(サブ・コントラクター)」の略語です。
ゼネコンから工事を請け負う専門工事業者のことを指します。たとえば「とび・土工業」「電気工事業」「解体工事業」などさまざまな工事の種類があります。
ゼネコンはサブコンと協力しながら工事を完成させていきます。
マリコンとは
マリコンとは、「marine contractor(マリン・コントラクター)」の略語です。
文字通り、防波堤、海底トンネル、埋め立てなどの海洋工事を主として行うゼネコンのことを指します。
海洋工事は一般的な建設工事とは異なる専門技術が必要なため、マリコンは特別な技術力を持った会社に限られています。
ゼネコンの仕事内容は?

ゼネコンの仕事内容は、大きく次の4つに分類されます。
- 設計
- 施工
- 研究
- 営業
それぞれくわしく解説していきましょう。
1. 設計の仕事内容
ゼネコンが、ライバル会社との差別化を図るポイントは「設計力」です。
設計の仕事は、デザインや機能など発注者の要望を実現するための力が問われるでしょう。発注者との交渉を重ねていくなかで、要望に沿った建物を設計していきます。
設計の仕事をさらに分類していくと「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つに分けられます。
以下の表で確認してみましょう。
意匠設計 | 建物の外観や内部空間のデザインや配置、間取りや仕上げなどの設計 |
構造設計 | 建物が地震や雨風などの災害に耐えられる安全性を満たすために、土台や柱、梁などの骨組みなどの設計 |
設備設計 | 上下水道などの衛生設備や電気設備、空調設備などの設計 |
ゼネコンの設計の仕事には「一級建築士」や「CADオペレーター」などの有資格者が多いです。
2. 施工の仕事内容
施工の仕事はゼネコンの根幹とも言えます。
設計図どおりに工事を行い、建物が完成していくまでの管理をする仕事です。
さらにゼネコンの施工は作るだけに限りません。工事を行う準備段階から現場検証を行ったり、建物が完成した後にはメンテナンス業務も発生します。さらには収支の計算もしなくてはならないでしょう。
施工の仕事を分類していくと「工程管理」「原価管理」「品質管理」「安全管理」の4つに分けられます。順番にくわしく解説していきましょう。
工程管理
工程管理は、施工計画書や工程表を作成して、コンクリート工事や鉄筋工事など一つひとつの工事の進捗状況を管理する仕事です。
工事が工程通りに進めばいいですが、天気の急変や資材搬入の遅れなど突発的な変化も起きやすく、さまざまな調整をしなければならない場面が多いでしょう。
各工事の進捗状況を把握し、専門工事業者間の連携をとりながら臨機応変に現場を動かしていくことは、ゼネコンにとって大変重要な仕事といえます。
ゼネコンの工程管理の仕事には「建築施工管理技士」「土木施工管理技士」などの有資格者が多いです。
原価管理
原価管理は、予算内で工事を完成させるため、材料費や人件費などの原価を管理する仕事です。
工事全体の収支を計算して利益が出るように原価をコントロールすることは、最後は会社全体の財務状況に直結していくので、大変重要な仕事といえるでしょう。
ゼネコンの原価管理の仕事には「建設業経理士」などの有資格者が多いです。
品質管理
品質管理は、設計図どおりに現場が進行していくなかで、発注者の要望に沿った品質が守られているかを確認する仕事です。
工事の進捗段階ごとに、搬入資材が指定のものか確認しながら、現場の状況を写真に記録して細かい部分まで品質をチェックします。
一定の品質を保てなければ仕様の低い建物になってしまいます。後に瑕疵があった場合には大きな問題に発展してしまうため、品質管理は大変重要な仕事といえるでしょう。
安全管理
安全管理は、工事現場で働く作業員が安全に働けるように管理する仕事です。
工事現場では、通路の確保や高所からの転落防止など安全面には特に注意しなければなりません。また、労働基準法を遵守しながら労働時間の管理などを行います。
3. 研究の仕事内容
研究の仕事は、日本の建設業の発展に大きく関わってくるため、重要な役割を担っているといえます。研究の例としては以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 耐震性を考慮した建設物
- 強度の高いコンクリート
- 効率的な施工を行うための工法
- 生産性向上を図るAIやIoT
- コストを抑えた品質
近年の建設業界では、作業員の人手不足や建設資材の高騰などの問題を抱えています。
このような状況下では、限られた人数や材料で工事を完成させるために新たな技術開発が求められます。
研究の仕事は、建設素材や構造などの知識を幅広く有した専門職です。日々仮説と検証を繰り返しながら、独自の技術を開発してゼネコンを支える役割を担っています。
4. 営業の仕事内容
営業の仕事は、発注者との交渉の中で要望を聞き、企画書や提案書を作成して契約に結びつける役割です。
発注者は官公庁や民間企業などのさまざまな業種があります。発注者との信頼関係の構築や、ゼネコン内での各部門との連携が必要になるため、コミュニケーション力が求められるでしょう。
ゼネコンの売上高ランキング

ゼネコンは、売上高の規模によるランキングによって、以下の3つに分類されます。
- スーパーゼネコン
- 準大手ゼネコン
- 中堅ゼネコン
それぞれどのような会社があるのか、売上や年収などのデータを紹介していきます。
スーパーゼネコン
スーパーゼネコンと呼ばれている会社は以下の5社です。
- 清水建設
- 鹿島建設
- 大成建設
- 大林組
- 竹中工務店
上記のスーパーゼネコンは、1兆円を超える売上があり、土木、建築のほか海外でも事業を展開している技術力に優れた会社です。
さらに、歴史も古く国内から海外まで有名な建造物を施工し数多くの実績を重ねています。
はじめに、スーパーゼネコン5社の特徴やデータを紹介していきましょう。
※データは「各社有価証券報告書(2022年3月時点)」を参照しています。
清水建設
創業 | 1804年 |
売上高(単体) | 1兆2873億円 |
従業員数(単体) | 10688人 |
平均年収 | 978万円 |
特徴 | 建築分野に強い、女性の起用や働き方改革を積極的に実施 |
施工実績 | 横浜スタジアム、サンシャイン60など |
鹿島建設
創業 | 1840年 |
売上高(単体) | 1兆2449億円 |
従業員数(単体) | 8080人 |
平均年収 | 1127万円 |
特徴 | 数多くのグループ企業を持つ、現場第一主義の社風 |
施工実績 | フジテレビ本社、東京駅丸の内駅舎など |
大成建設
創業 | 1873年 |
売上高(単体) | 1兆2192億円 |
従業員数(単体) | 8579人 |
平均年収 | 963万円 |
特徴 | スーパーゼネコン唯一の非同族経営、住宅分野に強い |
施工実績 | 東京都庁第一庁舎、中部国際空港など |
大林組
創業 | 1892年 |
売上高(単体) | 1兆3741億円 |
従業員数(単体) | 9026人 |
平均年収 | 1024万円 |
特徴 | 再生可能エネルギー事業に注力、PFI事業に強い |
施工実績 | 六本木ヒルズ、東京スカイツリーなど |
竹中工務店
創業 | 1610年 |
売上高(単体) | 9890億円 |
従業員数(単体) | 7757人 |
平均年収 | 989万円 |
特徴 | スーパーゼネコン唯一の非上場企業、建築事業に強い |
施工実績 | あべのハルカス、東京ドームなど |
準大手ゼネコン
準大手ゼネコンは、スーパーゼネコンに次ぐ売上を誇ります。準大手の明確な定義はありませんが、売上高3,000億円~4,000億円以上の会社です。
準大手ゼネコンと呼ばれている会社は以下の9社です。
- 長谷工コーポレーション
- 戸田建設
- 五洋建設
- 前田建設工業
- 三井住友建設
- 西松建設
- 熊谷組
- 東急建設
- 安藤ハザマ
準大手ゼネコン9社のデータを紹介していきましょう。
※データは「各社有価証券報告書(2022年3月時点)」を参照しています。
長谷工コーポレーション
創業 | 1937年 |
売上高(単体) | 6308億円 |
従業員数(単体) | 2433人 |
平均年収 | 910万円 |
戸田建設
創業 | 1881年 |
売上高(単体) | 4517億円 |
従業員数(単体) | 4175人 |
平均年収 | 876万円 |
五洋建設
創業 | 1896年 |
売上高(単体) | 4289億円 |
従業員数(単体) | 3136人 |
平均年収 | 860万円 |
前田建設工業
創業 | 1919年 |
売上高(単体) | 3660億円 |
従業員数(単体) | 3220人 |
平均年収 | 927万円 |
三井住友建設
創業 | 1887年 |
売上高(単体) | 3043億円 |
従業員数(単体) | 2954人 |
平均年収 | 962万円 |
西松建設
創業 | 1874年 |
売上高(単体) | 3177億円 |
従業員数(単体) | 2794人 |
平均年収 | 835万円 |
熊谷組
創業 | 1898年 |
売上高(単体) | 3310億円 |
従業員数(単体) | 2626人 |
平均年収 | 840万円 |
東急建設
創業 | 2003年 |
売上高(単体) | 2430億円 |
従業員数(単体) | 2624人 |
平均年収 | 732万円 |
安藤ハザマ
創業 | 1869年 |
売上高(単体) | 3158億円 |
従業員数(単体) | 3261人 |
平均年収 | 861万円 |
中堅ゼネコン
中堅ゼネコンは、準大手ゼネコンに次ぐ売上高1,000~2000億円前後の会社です。
中堅ゼネコンと呼ばれている会社は以下の8社です。
- 奥村組
- 鉄建建設
- 東洋建設
- 東亜建設工業
- 淺沼組
- 飛島建設
- 錢高組
- 大豊建設
中堅ゼネコン8社のデータを紹介していきましょう。
※データは「各社有価証券報告書(2022年3月時点)」を参照しています。
奥村組
創業 | 1907年 |
売上高(単体) | 2372億円 |
従業員数(単体) | 2123人 |
平均年収 | 918万円 |
鉄建建設
創業 | 1944年 |
売上高(単体) | 1487億円 |
従業員数(単体) | 1823人 |
平均年収 | 816万円 |
東洋建設
創業 | 1929年 |
売上高(単体) | 1365億円 |
従業員数(単体) | 1314人 |
平均年収 | 831万円 |
東亜建設工業
創業 | 1908年 |
売上高(単体) | 2107億円 |
従業員数(単体) | 1555人 |
平均年収 | 936万円 |
淺沼組
創業 | 1892年 |
売上高(単体) | 1324億円 |
従業員数(単体) | 1273人 |
平均年収 | 847万円 |
飛島建設
創業 | 1883年 |
売上高(単体) | 1057億円 |
従業員数(単体) | 1180人 |
平均年収 | 823万円 |
錢高組
創業 | 1705年 |
売上高(単体) | 1017億円 |
従業員数(単体) | 901人 |
平均年収 | 801万円 |
大豊建設
創業 | 1949年 |
売上高(単体) | 1184億円 |
従業員数(単体) | 1049人 |
平均年収 | 799万円 |
ゼネコンの平均年収

売上高の規模による3つの分類の平均年収は以下のとおりです。
分類 | 平均年収 |
---|---|
スーパーゼネコン | 1016万円 |
準大手ゼネコン | 867万円 |
中堅ゼネコン | 846万円 |
日本人のサラリーマンの平均年収は400万円程度とされてる中、ゼネコンの平均年収はとても高い水準にあるということがお分かりになるでしょう。
ゼネコンの年収が高い理由
では、ゼネコンの年収が高くなる理由はなぜでしょうか。
つぎの3つの理由から解説していきます。
- 残業や休日出勤が多い
- 平均年齢が高い
- 手当が充実している
1. 残業や休日出勤が多い
ゼネコンは残業や休日出勤が多いため、その分の手当が支給されます。特に工事が完成間近になれば、引き渡し期日に間に合わせるため、特にハードになるでしょう。
場合によっては、深夜にタクシーで帰宅したり、現場近くのホテルに宿泊するケースもあります。
2. 平均年齢が高い
ゼネコンの平均年齢は他業種と比べて高いため、平均年収も高くなります。ゼネコンのほとんどの会社が年功序列制を採用しています。
バブル期に大量採用を行っていた社員が、現在50代前半を占めているため、必然的に平均年齢は高くなっています。
3. 手当が多い
ゼネコンは他業種と比べて手当が多いです。一般の会社にあるような「住宅手当」や「家族手当」が支給されるのはもちろんですが、ゼネコン特有の手当に「現場手当」があります。
工事現場での仕事は危険を伴うために、毎月3~5万円などの「現場手当」が支給されます。
まとめ
本記事では、ゼネコンについて、いろいろな角度から参考となる情報を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
スーパーゼネコン、準大手ゼネコン、中堅ゼネコンと、売上高によって分類が存在します。特に1兆円以上の売上高を誇るスーパーゼネコンは、有名な建築物を数多く手がけているため建設業界の中でも際立つ存在でしょう。
ゼネコンの仕事は、建設現場の施工管理から、日本の建設技術の向上に資する研究開発、発注者と会社とのパイプ役となる営業など多岐に渡ります。
ゼネコン内のさまざまな仕事からプロジェクトに携わり、建物を作る喜びを味わいたい方にはぴったりの業界といえます。
ゼネコンの各仕事の特色を押さえて、自分にあう会社を探してみてはいかがでしょうか。