
建築や建設関係の会社を経営している方の中で、「安全衛生目標」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。また、現場作業において、責任者やリーダーのポジションについている方も、安全衛生目標という言葉を聞いたことがあるでしょう。
今回は、安全衛生目標とは、どのようなものなのかに加え、なぜ必要なのかを詳しく解説します。さらに、安全衛生管理計画書の作成方法なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
安全衛生目標とは
安全衛生目標とは、「労働安全衛生方針」に基づいて建てられる目標のことであり、業務中に事故が起きないように、安全を維持するための具体的な施策を提示するものです。
たとえば、「労働災害を90%減らす」「ヘルメットの使用率を100%にする」といったように、具体的な内容と数字を併せて書くことが一般的です。
漠然とした内容を数字を安全衛生の目標として掲げていても、作業者は何を目標に取り組めばいいのかイメージしづらいことから、可能な限り具体的に掲示することが大切です。
なお、安全衛生目標のベースにある「労働安全衛生方針」とは、安全衛生に関する国際規格のISO45001の認証に必要な「労働安全衛生マネジメントシステム」の方向性を決める指針のひとつです。
ISO 45001とは
ISO45001とは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。建築や建設のほか、製造工場などを運営している企業が、ケガや事故、健康被害といった労働者が被る可能性があるリスクを抑止するために、安全で健康的な職場を提供することを目的として定められた規格です。
もともと、ISO45001が制定される前は、OHSAS18001やOHSAS18002といった国際規格もありました。しかし、今ではISO45001に集約され、国際規格としてスタンダードになっています。
安全衛生目標に関連する法令
安全衛生目標は、OSHMS指針という労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針の第8条4に定められています。
労働安全衛生マネジメントシステムは、主に以下の4つの内容を基本としています。
- PDCAサイクル構造を自立的にシステム化する
- システムを手順化、明文化、記録化する
- 危険性または有害性の調査、およびその結果に基づく措置
- 全社で推進体制を敷く
PDCAサイクルを通じ、安全に関するマネジメントを高めるための取組みをおこなうことで、システム監査やチェックの機能が適切に働くものと考えられています。そういった考えをベースにすることで、職場環境の改善を図ることができ、会社全体の安全衛生水準が向上されることを期待できます。
これらの仕組みは、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針がもとになっており、第8条4において、安全衛生目標が定められているといった背景があるのです。
安全衛生管理目標の具体例

安全衛生管理目標の必要性は理解できたものの、具体的にどういった目標を掲げればいいのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、安全衛生管理目標の具体例を紹介します。
【安全衛生管理目標の具体例】
- 定期健康診断の受診率100%
- ヘルメット未装着率0%
- ヒヤリハット事例を1人1件以上提出
- 安全ルール遵守率90%以上
- 雇入れ時教育の実施率100%
- メンタル不調者を発生させない
- 10箇所以上でリスクアセスメントを実施
- KY活動により作業手順のミスによる災害を昨年比20%削減
- すべての機械設備の作業前点検の実施率100%
- 4S活動を毎日実施
安全衛生管理目標では、具体的にどのようなことをおこなうのかに加え、数字を明確にすることが大切です。「定期健康診断の受診率100%」といったように、数字を具体的にすることで、どういった取組みをおこなわなければならないのか、どうすれば目標を達成できるのかを、考えやすくなるでしょう。
安全衛生目標達成のために必要な「安全衛生管理計画書」
安全衛生目標を達成するためには、「安全衛生管理計画書」が必要です。とはいえ、そもそも安全衛生管理計画書とは、具体的にどういったものなのかわからない方が多いのではないでしょうか。
安全衛生管理計画書とは、工事や作業を安全におこなうための行動や計画を記した計画書です。安全衛生管理計画書があることで、作業者同士が安全衛生目標を共通認識することができ、目標を意識しながら作業に取り組めるでしょう。
そのため、安全衛生管理計画書を作成するときは、具体的かつわかりやすくすることがポイントとなります。
安全衛生管理計画書が重要視される理由
そもそも、なぜ安全衛生管理計画書が重要視されるのか、疑問に思われている方もいるでしょう。
安全衛生管理計画書は、安全に作業をおこなうための具体的な行動や計画が記載されており、すべての作業者に共有されます。安全衛生管理計画書があることで、目標を達成できたのかどうかを客観的に確認できるといったメリットがあるのです。
実際、積極的に労働安全衛生マネジメントシステムを採用し、安全衛生管理計画書を作成した事業所では、労働災害がゼロになったという事例もあります。さらに、すべての事業所において労働災害がなくなることを目指す中で、労働基準監督署が安全衛生管理計画書の提出を求めるケースも珍しくありません。
健全かつ安全な事業運営をおこなうためにも、安全衛生管理計画書を適切に作成することが大切です。
安全衛生管理計画書作成の4ステップ
安全衛生管理計画書がいかに重要なのかを理解できたものの、実際にどのような流れで安全衛生管理計画書を作成し、活用すればいいのかわからない方もいるでしょう。
ここでは、安全衛生管理計画書の作成の流れと活用方法を4つの段階にわけて詳しく解説します。
【安全衛生管理計画書作成の4ステップ】
- 現状の把握
- チェックシートの作成
- 安全衛生管理計画書の作成と実施
- 安全衛生管理計画書の評価と改善
まず、安全衛生管理計画書を作成するときは、現状をしっかりと把握することが大切です。現状、どういった問題があるのか、どういうことを解決しなければならないかを正確に分析するところからはじめましょう。
そして、チェックシートを作成し、漏れがないかを確認していきます。そのあと、漏れがないことを確認したら、安全衛生管理計画書の作成を進めていきましょう。
なお、安全衛生管理計画書は基本的に1年計画となることから、毎年評価をおこない、改善を洗い出すことがポイントです。
安全衛生管理目標の設定方法
具体的な安全衛生管理計画書の作成方法と流れを理解したあとは、次に目標設定の方法について見ていきましょう。
以下、安全衛生管理目標の具体的な設定方法です。
- 危険な場所・有害箇所を特定する
- リスクがある人を特定する
- どの程度のリスクがあるのかを見積もる
- リスクを低減する方法を検討する
なお、安全衛生目標にはリスクアセスメントが非常に重要であり、リスクアセスメントを意識して計画することをおすすめします。
危険な場所・有害箇所を特定する
安全衛生目標を設定するときは、危険な場所や有害箇所を特定することが大切です。以下、危険な場所や有害箇所になりやすいところを、東京労働局労働基準部が公表している「リスクアセスメントをはじめよう」をもとにまとめています。
- 墜落・転落の災害危険
- はさまれ・巻き込まれなどの災害危険
- 転倒の災害危険
- 物が飛来・落下してくる災害危険
- 積荷等が崩壊する災害危険
- 重量物等の運搬による災害危険
- 物との衝突による災害危険
- 機械や刃物による切れなどの災害危険
- 交通事故による災害危険
- 感電による災害危険
- 有害物質による中毒等の健康障害危険
- 健康管理不足による健康障害危険
- 過重労働による健康障害危険
- その他(爆発火災、高温物等との接触、寒冷環境、有害光線などによる災害危険)
リスクがある人を特定する
危険な場所や有害箇所の特定が終わったら、次にリスクがある人をリストアップしていきます。たとえば、管理者や会社の役員などが挙げられるでしょう。
そのほか、中高年労働者や、身体が不自由な人も想定されます。そのほか、社内スタッフだけでなく、来訪者や外注先、運送業者などの社外でリスクが想定される人も考えておかなければなりません。
どの程度のリスクがあるのかを見積もる
どのような被害を受ける可能性があるのか、有害箇所への接近頻度はどれくらいなのかをもとに、災害が発生する確率を定義し、どの程度のリスクがあるのかを見積もることが大切です。
リスクを評価するときは、リスクが発生する可能性だけでなく、リスクを許容できるかどうかも併せて考えるのがいいでしょう。また、それぞれ点数化することで、リスクレベルを算出しやすくなります。
リスクを低減する方法を検討する
可能な限り、リスクを抑えるためには、リスクの低減方法を熟考する必要があります。
以下、東京労働局労働基準部が公表している「リスクアセスメントをはじめよう」もとに、リスクを許容できない順番を詳しく見ていきましょう。
- 法令に定められた事項の実施(労働安全衛生法関係法令、指針など)
- 設計や計画の段階における措置の実行(危険な作業の廃止・変更、危険性や有害性の低い材料への代替、より安全な施工方法への変更等)
- 工学的対策(囲い、安全装置、設備の改善等)
- 管理的対策(安全な作業方法への変更、立入り禁止措置、マニュアルの整備、教育訓練等)
- 個人用保護具の使用等(1から4までの対策を講じた場合でも、除去・低減しきれないものに限ります)
安全管理目標における重要な実施事項
ここでは、安全管理目標における重要な実施事項について詳しく見ていきましょう。
- チョコ停・ヒヤリハットの推進
- 作業マニュアルの更新
- 異常時の措置を制定
- 職場パトロールの実施
チョコ停・ヒヤリハットの推進
チョコ停とは、設備や機械の不調などを理由に、作業が停止することを意味しています。チョコ停の報告を受け、改善活動を早急に実施することで、品質の向上だけでなく、生産性の向上も期待できるでしょう。
さらに、ヒヤリハットの報告を推進することで、どのようなリスクが隠れているかが可視化され、責任者や現場監督者は安全に配慮しやすくなります。
作業マニュアルの更新
作業マニュアルに、品質保持において気をつけたいポイントや重要な箇所を盛り込むことで、新人教育やキャリア教育に役立てることが可能です。さらに、安全上の注意点なども併せて記載しておけば、注意喚起をスムーズにすることができ、事故を未然に防ぎやすくなります。
また、作業マニュアルを定期的に見直し、更新することで、より効果のあるマニュアルとなり、安全衛生管理目標の達成を期待できるでしょう。
異常時の措置を制定
作業中に、機材トラブルや設備事故、災害などが発生したときに、どのような対応を取るのかを決めておくことが大切です。事前に、異常への措置を制定しておけば、冷静な判断ができるでしょう。
なお、事前にトラブルへの対処を決めておくだけでなく、実際のトラブルを想定した予行練習などもおこなっておくと、より効果を期待できます。
職場パトロールの実施
日常的に職場をパトロールすることで、事故が起こりにくい環境を作ることが可能です。とくに、危険な場所や有害箇所については、念入りにパトロールをおこなうことで、事故を未然に防げる効果を期待できるでしょう。
また、パトロール時に、何かトラブルにつながる可能性があることを見つけたら、随時指摘をおこなうことが大切です。社員に共有することで、すべての社員の安全に対する意識を再確認することが可能になるでしょう。
まとめ
安全衛生管理目標を検討することで、事故が発生しない安心かつ安全な職場環境を作ることが可能です。その際、リスクがある危険な場所や有害箇所をしっかりと見極め、どのようなリスクが潜んでいるかを、しっかりと想定しておくことがポイントです。
事前に、起こりうるリスクを想定し、対策を検討することで、事故のない安心できる職場作りが可能になるでしょう。