
「建築構造ってどんな種類・名称があるの?」
「建築構造の特徴や用途を知りたい」
「RC造やSRC造ってなに?」
建築業界には、さまざまな建築構造があります。アルファベットで「〇〇造」って書いてあるけど、何のことかわからない人も多いです。
この記事では、建設業界で使われる建築構造の特徴や用途を解説します。技術が進歩しているので性能が変わってきている部分もありますが、一般的な基礎知識を学べます。
建築業界に興味がある、もっと詳しく建物構造を知りたい人にも、最低限の建設業界に入れる知識が身につきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
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目次
建築業界の特徴
建築業界の特徴として、主に以下の3つが挙げられます。
- 構造物を造る仕事
- 人手不足の業界
- 安定している業界
建築業界は、住宅やマンションなどの建築物を建築したり、道路やダムなどのインフラを造ったりする業界です。一言で「建築」と言っても、以下のように2つの分野に分かれます。
- 建築分野……住宅、マンションなどの建築
- 土木分野……ダム、道路、鉄道、埋立地などの造成
そして、さまざまな業界のなかでも人手不足が深刻化している業界でもあります。年収が高いことで有名ですが、職人の高齢化により人手不足が問題視されているのが現状です。しかし裏を返せば、未経験からでも就職しやすい業界と言えるでしょう。
最後に、市場規模や需要、売上が安定している業界であるということです。建築業界の市場は、民間企業による民間投資とインフラ建設のための政府投資の2つから成り立っています。東日本大震災をきっかけに、これらの建設投資額は右肩上がりで上昇しています。今後、建設投資額の上昇率が落ち着いたとしても、建築物やインフラの点検、また建て替え需要の増加によって業界が衰退するとは考えにくいです。
建築業界の構造
建築業界と言っても、その業務内容は多岐にわたります。
例えば、行政が高速道路の新設を検討した際に、まずは、ゼネコンが内容を確認したうえで工事を受注します。ゼネコン内だけで高速道路を完成させるわけではなく、工程管理や計画を決めて、各作業ごとに専門業者に工事を依頼する仕組みです。
以下のように、ゼネコンが上層にくるピラミッド構造になっています。
- ゼネコン
- サブゼネコン
- 中小企業
- マリコン
- ハウスメーカー・工務店
それぞれ詳しく解説します。
ゼネコン(元請け)
ゼネコンとは、ゼネラルコントラクターの略で、総合建築業に分類される企業のことです。
単に建築工事を進めるだけではなく、建築工事に必要な設計・施工・研究の3つの業務を総合的に行うのがゼネコンの役割です。
不動産会社や行政から建築の依頼を受注し設計を行ったり、耐震強度の強いコンクリートの開発に力を入れたりします。
ゼネコンのなかでも売上高が1兆円を超える企業はスーパーゼネコンと呼ばれ、2023年11月時点で以下の5社が存在します。
- 清水建設
- 鹿島建設
- 大林組
- 大成建設
- 竹中工務店
ゼネコンの詳細が知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
サブゼネコン(下請け)
サブゼネコンは、ゼネコンから空調や電気関係などの、専門分野の工事を請け負うゼネコンのことを指します。
建築物を完成させるには、サブゼネコンのような専門業者の協力が必要不可欠です。
ゼネコンが作成した図面に基づき、各工程ごとに作業を進めていく部門のリーダーの役割を担います。
サブゼネコンの詳細が知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
中小企業(下請け)
中小企業は、全業界共通して、資本金額が3億円以下または従業員数が300人以下の会社のことをいいます。(参考:中小企業・小規模企業者の定義|中小企業庁)
マンションや商業施設のような大型の建築物の工事ではなく、個人住宅や店舗など小規模の建築物の施工を行うのが中小企業です。
マリコン(海洋土木)
マリコンとは、マリンコントラクターの略で、海底トンネルや湾岸、護岸工事などの海洋土木に特化した建築会社のことです。
陸上での建築とは工事内容が異なるため、使用する重機や必要な技術・知識も海洋土木に特化したものを必要とします。
日本国内のマリコンでは、五洋建設や東亜建設工業、東洋建設などが該当します。
マリコンの詳細が知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
ハウスメーカー・工務店
ハウスメーカーや工務店は、住宅建築に特化しており、個人からの依頼だけではなく、元請け業者から仕事を受注し工事を進める場合もあります。
ハウスメーカーとは、自社ブランドを持ち全国規模で営業を行う住宅会社のことです。各地域に営業所を構えているケースも多いので、名前が広く知れ渡っているのが特徴です。
一方、工務店は、特定の地域に密着して住宅建築を行う会社を指します。地場に根付き、長年地域住民の暮らしを支えているような工務店も少なくありません。新築住宅の建築から増改築・リフォームまで、施主の要望に柔軟に対応できるという特徴があります。
ハウスメーカーと工務店の詳細が知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
建物構造にはどんな種類がある?

建物構造とは、建物を支える骨組みの種類のことです。一般的に、部屋探しをしている方には、3つに分けて説明します。「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」です。
しかし、建設業界に関わる場合、基礎知識として次の建築構造の種類・名称と特徴には、目を通しておくべきです。
- W造(木造)
- S造(軽量鉄骨造)
- S造(重量鉄骨造)
- RC造(鉄筋コンクリート造)
- SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
- ALC造(気泡コンクリート)
- PC造(プレキャストコンクリート)
- AL造(アルミ造)
- CFT造(コンクリート充填鋼管構造)
- CB造(コンクリートブロック造)
- RS造
- WRC造
それぞれの建物構造の特徴を解説します。
なお、一般の方は「建物構造」「建物工法」を混同されがちです。簡単に説明すると、「構造」は建物を支える骨組み。「工法」は構造を組み立てる方法・手法のことでを指します。
■建物構造の種類・名称一覧
名称 | 家賃 | 防音性 | 耐震・耐火 | 通気性 |
---|---|---|---|---|
W造 (木造) | 安い | 低い | 低い | 高い |
S造 (軽量鉄骨造) | やや安い | やや低い | やや低い | 良い |
S造 (重量鉄骨造) | 普通 | 普通 | 普通 | 良い |
RC造 (鉄筋コンクリート造) | やや高い | 普通 | 高い | 低い |
SRC造 (鉄骨鉄筋コンクリート造) | 高い | 高い | 高い | 低い |
ALC造 (気泡コンクリート) | 普通 | やや低い | 高い | 普通 |
PC造(プレキャストコンクリート) | 高い | 普通 | 高い | 低い |
AL造 (アルミ造) | 普通 | やや低い | やや低い | 普通 |
CFT造 (コンクリート充填鋼管構造) | 高い | 高い | 高い | 低い |
CB造 (コンクリートブロック造) | 普通 | 普通 | 高い | やや低い |
RS造 | やや高い | 普通 | 普通 | 低い |
WRC造 | 普通 | 高い | 高い | 低い |
W造(木造)
【メリット】
- 材料費が安価なので施工費用が安い
- 比較的軽い材料なので、短工期で建てられる
- 通気性・調湿効果が高く、カビや結露を防ぐ
【デメリット】
- 強度や耐久年数が短め
- 遮音性・気密性・耐火性が低い
- シロアリなどの害虫対策が不可欠
W造(木造)のWは「Wood」のこと。
戸建て住宅や低層アパートなどに広く採用されている構造です。日本の気候や風土にあっているため古くから用いられています。
木は生きた材料として言われ、水分を吸収すると膨張し、乾燥すれば水分を発散して収縮する「調湿性・通気性」に優れています。
そのため、湿度の高い日本に適していますので、日本のほとんどが木造住宅です。2階建てで三角屋根であれば、およそ9割は木造です。
近年完成した新国立競技場は、木材を多用しています。しかし、鉄骨を木で覆っていたり、木目調の塗装をしたアルミ材を使っているので、完全な木造とは呼べません。
「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」 が施行されており、公共建築に木材を使用していることも多いです。そのため、柱や梁が木材というだけでは見分けるのは難しいです。
また、1300年前の木造の法隆寺は現在もありますが、長年メンテナンスし続けているから長持ちなのです。国税庁が定める法廷耐用年数は22年と、他の構造より比較的短く耐震性は低いです。
そして、鉄筋造などと比べて材料の密度が低いので遮音性は低いです。しかし、比較的建築費用が安いので、賃料がやすいのは魅力です。
S造(軽量鉄骨造)
【メリット】
- 材料を工場で大量に生産して、安定した品質、材料費を抑えられる
- 現場で加工の手間がないので、短工期で建てられる
- 木造より強度と防音性が高い
【デメリット】
- 通気性、断熱性が悪いので、カビや結露が発生しやすい
- 厚さが薄いので重量鉄骨と比べて劣る
- 火災時など熱で変形する恐れがあるので、耐火性は劣る
S造(軽量鉄骨造)のSは「Steel スチール」のこと。
柱や梁などの骨組みに「厚さ6㎜未満の鋼材」を使った構造を軽量鉄骨造といいます。また「厚さ6㎜以上の鋼材」は、次の項で解説する重量鉄筋造です。
主に2階建ての戸建てやアパート、小型店舗などの小さめの建物に用いられています。
木造の柱が人工的に強度を高めた鋼になったとイメージするとよいでしょう。強度や防音性は木造より高いです。しかし、鉄の特性で通気性や断熱性が悪いです。
しかし、壁や床、天井などに使う材料は木造とほぼ同じの場合が多いので、住んでみると木造と変わらないと言われることもあります。
S造(重量鉄骨造)
【メリット】
- 耐久性、耐震性が高い
- 壁が厚くなるので防音性が高まる
- 柱が少ないので、広いスペースを確保できる
【デメリット】
- 厚みが増すほどに高額になる
- 重量があるため、地盤補強工事等に工費も高い
- 不動産購入費や賃料が高くなる
S造(重量鉄骨造)のSは「Steel スチール」のこと。
柱や梁などの骨組みに「厚さ6㎜以上の鋼材」を使った構造を重量鉄筋造といいます。中小規模のマンションや、商業施設で用いられることが多いです。
柱と梁を一体化した「ラーメン構造」と呼ばれる、壁で支える構造が用いられます。柱を少なくできるので、広い空間を確保が可能です。吹き抜けなどの間取りの自由度が高くできます。
鉄なので耐震性などの引っ張られる力には強いですが、熱に弱かったり、サビやすいです。近年はコンクリートと合わせた「RC造(鉄筋コンクリート造)」の方が多い傾向です。
RC造(鉄筋コンクリート造)
【メリット】
- 耐火性・耐震性に優れている
- 遮音・防音性が高い
- 低層から高層、土地が変形であっても自在に工事が可能
【デメリット】
- 通気性が低いので、カビや結露しやすい
- コストが高い
- 増改築や、取り壊しをしにくい
- 地盤が弱いと採用されづらい
RC造(鉄筋コンクリート造)のRCは、「Reinforced Concrete 補強されたコンクリート」のこと。
主に柱や梁、床、壁に、鉄筋とコンクリートを組み合わせてできています。鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたものです。主に、大型マンションや団地、複合商業施設などに用いられています。
鉄筋の性質と、コンクリートの性質を合わせた特徴があります。
- 鉄筋:引張力には強いが、熱に弱くサビやすい
- コンクリート:引張力には弱いが、熱に強くサビにくい
鉄筋の熱に弱くさびやすい弱みを、引張力が弱いコンクリートで包むことでお互いのデメリットをカバーし合います。
しかし、鉄とコンクリートの重量がかかるので、地盤が弱いと採用されづらいこともあります。次に解説するSRC造との性能の差は、防音性以外では大差がないです。
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
【メリット】
- 耐火性・耐震性に優れている
- 遮音・防音性が高い
- 柱や梁を小さくでき、居住空間が広い
【デメリット】
- 通気性が低いので、カビや結露しやすい
- 工程が複雑でコストが高い
- 家賃が一番高くなりやすい
- 外気の影響が受けやすい
SRC造のSRCは「Steel Reinforced Concrete コンクリートで強化したスチール」のこと。
鉄骨造と鉄筋コンクリート造を組み合わせた構造です。鉄骨の柱を中心にした周りに鉄筋を組み、コンクリートを流し込んだ構造です。タワーマンションやオフィスビルなど高層ビルによく用いられています。
鉄骨造よりしなやかで、鉄筋コンクリート造より耐久性・耐震性が優れています。しかし、材料が多く、工程が複雑なので建築コストや、工期が長期化しやすいです。
ただ、近年ではRC造(鉄筋コンクリート造)の技術が高まり、必ずしも高層建築に採用されることはないようです。
柱や梁を小さくできるので、居住空間が広くなるので、居住空間やデザイン性がすぐれています。しかし、鉄を多く使っているため、外気の影響を受けやすく、冷暖房費がかかりやすいです。
ALC造(気泡コンクリート)
【メリット】
- 耐久性・断熱性・耐火性が高い
- 調湿性があり、日本の気候に合う
- 軽いので、工期が短い
- 遮音性が高い
【デメリット】
- 水に弱いので、防水加工は必須
- つなぎ目が多くなるので雨水が入りやすい
- コストが高い
ALC造(気泡コンクリート)のALCは「Autoclaved Lightweight aerated Concreate」、軽量気泡コンクリートのこと。
高温で発泡加工することで、内部に気泡ができるので、非常に軽い外壁材です。コンクリートの重量の約1/4といわれています。建物の構造は「軽量鉄骨」になります。
ヨーロッパを中心に普及しており、東京スカイツリーや東京都庁など、高層建築物、複合商業施設などに用いられています。
外壁材のメリットは多いですが、旭化成建材の「へーベル」を含めた、日本に3社しか取り扱えない特殊外壁材です。
内部に気泡があるので軽いこともあり、埋め立て地などの地盤の弱いところでも採用されやすいです。また、断熱性が高いので、夏は涼しく、冬は温かい。調質性もあるので、高温多湿の日本の気候に合いやすいです。
PC造(プレキャストコンクリート)
【メリット】
- 耐火性・耐震性に優れている
- 遮音・防音性が高い
- 低層から高層、土地が変形であっても自在に工事が可能
- RC造より工期が短くなりやすい
【デメリット】
- 通気性が低いので、カビや結露しやすい
- コストが高い
- 増改築や、取り壊しをしにくい
- 地盤が弱いと採用されづらい
PC造(プレキャストコンクリート)は、壁などを構成するコンクリート部材をあらかじめ工場で作成して、現場で組み立てる建物構造です。
工場で作るので品質が均一になり、コンクリートの防音性・耐火性・耐震性が高くなります。現場の職人の力量に、性質が左右されにくくなります。
建物構造は、RC造(鉄筋コンクリート)と同じです。違いは建築現場で作るか、工場で作るかが違うだけなので、RC造の性質が同じです。
しかし、工場には壁材などの型枠があるものを使うことになり、場合によっては自由度が減ると感じる方もいるかもしれません。
AL造(アルミ造)
【メリット】
- 軽量で加工がしやすい
- サビや塩害に強い
- 耐震性は高い
【デメリット】
- 鋼材より弱い
- 断熱性・通気性が低い
- 大型の建物に不向き
AL造(アルミ造)のALは、「aluminum」アルミニウムのこと。
アルミを使った構造で、最大の特徴は軽さです。鉄骨の1/3と軽量なので、建物の重量が軽くなるので、耐震性は高くなります。
アルミはサビや塩害に強いため、海沿いの住宅などによく用いられます。軽量のため加工しやすく、工場で精密に加工したものを現場で組み立てるので、工期が短いです。
しかし、断熱性や通気性が低く、大型の建物には不向きです。断熱材を二重構造にするなどの対策を行う必要があります。
CFT造(コンクリート充填鋼管構造)
【メリット】
- 耐久性・耐震性に優れている
- 自由なデザイン・設計ができる
- 防音性・耐熱性が高い
【デメリット】
- コストが高い
- 高い技術力が必要
CFT造(コンクリート充填鋼管構造)のCFTは「Concrete Filled Steel Tube」のこと。
鋼管の内側にコンクリートを充填した構造です。
柱や梁を鉄骨以上に細くすることが可能で、自由なデザイン性・設計ができる上、耐久性・耐震性に優れています。充填されたコンクリートが熱を吸収するので、耐熱効果が高いです。
ただし、建設には高い技術が必要になり、コストがかなり高いです。
「あべのハルカス」「横浜ランドマークタワー」といった、タワーマンションや高層ビル、大型の商業施設に主に用いられています。
CB造(コンクリートブロック造)
【メリット】
- RC造(鉄筋コンクリート造)よりコストが低い
- 独特な外観・風合いが出せる
【デメリット】
- 防湿性が低い
- 増改築が難しい
CB造(コンクリートブロック造)は、「Concrete Block」のこと。
名前のとおり、コンクリートを積み上げて作った建築構造です。日本ではコンクリートを積み上げただけでは、建物としての許可がでないので、鉄筋を1本から数本入れています。
レンガを重ねているような独特の外観ができるので、おしゃれな建物、デザイン重視のコンセプト物件などに用いられています。
しかし、防湿性が低く、増改築が難しいので、小規模の倉庫などの外壁に使用されることが多いです。
RS造
【メリット】
- 設計の自由度が高い
- 低層階と中層階でデザインが変えられる
【デメリット】
- 外観からは見分けがつかず、鉄筋コンクリート造として表現されやすい
- 中層階では防音性が低いことが多い
RS造は、「Reinforced Steel 補強されたスチール」のこと。
建物の上下で建物構造を変更する構成のものをいいます。例えば、建物の下位部分にある柱や壁、床、天井などをRC造(鉄筋コンクリート造)でつくり、上部をS造(軽量鉄筋造)などにするといったものです。
主に低中層マンションの建設の際に、低層階に頑丈で重量のあるもの、中層階以上は自由度が高いものが採用されています。設計に自由度が高く、デザイナーズマンションに用いられます。
他にも2階建ての美術館、野球場、大型集客施設、地下街とつながっている商業ビルも多いです。
混合した建物構造ですが、RC造(鉄筋コンクリート造)と表記していてもRS造のこともあります。なので、防音性があると思って住んでみたら、隣の部屋の音が聞こえやすいといった苦情もあります。
しかし、見た目で判断するのは難しいので、不動産会社によっては価値と性能が高いRC造(鉄筋コンクリート造)と、正確に表現されていないこともあります。
WRC造
【メリット】
- 防音性が優れている
- 耐久性が高く、耐震性に優れている
- 柱と梁がないので、部屋が広くとれる
- 建設コストが低い
【デメリット】
- ドアや窓など間取りに制限がある
- 増改築が難しい
- 3階以下の低層階マンションが適正階数
WRC造とは、「Wall Reinforced Concrete コンクリートを補強した壁」のこと。
柱と梁を使わず、床や天井の面だけで建物を支える壁式鉄筋コンクリート構造のことです。
そのため、壁を厚くするので耐久性、耐震性が優れています。地震や台風での倒壊や、大きな被害は特に少ないです。また、壁が厚いことで防音性が優れているのも特徴です。
比較的低コストで、居室内のデットスペースが生じにくいため、主に低層マンションなど集合住宅、戸建住宅でよく用いられます。
ただし、適正階数は3階(限界は5階)といわれており、壁や床だけで構成される特性上、大きな開口部をとりづらいため設計の自由度は低いです。
建築業界の課題
2023年時点での建築業界の課題として挙げられるのが、以下の3つです。
- 人手不足
- 「危険」という業界全体のイメージ
- 2024年問題
それぞれ詳しく解説します。
人手不足
建築業界の課題の一つに、人手不足が挙げられます。
総務省の労働力調査によると、2003年に600万人近くいた建設業全体の就業者数は、2023年には500万人を下回っています。
また、就業者の年齢階級別を確認すると、いかに建設業の高齢化が進んでいるかがわかるでしょう。2022年時点で29歳以下の就業者がおよそ12%、55歳以上の就業者が35%以上という結果になっています。
全産業を比較すると、建設業の高齢化が深刻なことがわかります。
建設業は体育会系の気質が強く、肉体的にも精神的にもキツイという印象から、就職を避ける若者が多くいます。
また、大部分を占める高齢層の職人の多くは、「先輩の仕事を見て覚える」という考え方を持っており、丁寧に教える文化が根付いていないのも、若者の定着や人材育成が進んでいない理由の一つでしょう。
結果として、長時間労働や残業、休日出勤が増えているのが現状です。
「危険」という業界全体のイメージ
建設業の仕事は、3K(きつい・汚い・危険)と言われ危険なイメージがあります。
実際に事故も起きているため、危険な仕事というのは間違いありません。
以下のグラフは、建設業労働災害防止協会が事故に関するデータをグラフ化したものです。
出典:建設業における労働災害発生状況|建設業労働災害防止協会
建設業での死傷者は2022年で14,000人以上で、死亡者も281人という結果になっています。全産業の死亡者774人に対して、一つの産業だけで281人ですので、いかに危険な仕事なのかがわかります。
▪️建設業の死傷者数と死亡者数(2019年〜2022年)
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
死傷者 | 15,183 | 14,790 | 14,926 | 14,539 |
死亡者 | 269 | 256 | 278 | 281 |
建築業の危険性と安全対策について、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
2024年問題
2024年問題とは、2024年4月1日から施行される「働き方改革関連法」への対応のことです。ブラック企業やパワハラが問題視される昨今において、労働者を守るために施行される法律です。
本法律は、正確には2019年4月1日から施行開始されていますが、建築業界においては、働き手の高齢化や労働環境の状態を考慮し、5年後の2024年4月1日に延期された背景があります。
本法律で重要なポイントの一つが、時間外労働に対して罰則つきで上限が設けられることです。万が一違反した場合には、6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。
長時間労働の抑制になるため、労働者側としては働きやすい環境で仕事をできるようになると考えられます。しかし、企業側としては工事計画の見直しや、工事自体の長期化により建築コストの増加も懸念されています。
建設業界としては、早急に対策が求められている問題です。
詳しくは、国土交通省が公開する「建設業における働き方改革」をご覧ください。
課題解決のために|建設DXの重要性
前章で解説したような建築業界の課題を解決するために、重要視されているのが建設DXと呼ばれる分野の存在です。
DXという言葉を聞いたことはあっても、建設業界にどのように関係してくるのかイメージがわかない人もいるのではないでしょうか。
DXについて詳しく解説するので、参考にしてください。
DXとは
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、社会全体がよりスマートで効率的になるように、デジタル技術を活用する考え方や動きのことです。DXの促進により仕事や学び、生活がより豊かで便利になり生産性の向上に役立つため、導入し始めている企業も増えています。
建築業界では、建設生産プロセスの効率化やデジタルデバイスやアプリを活用した事務作業の自動化などがDXにあたります。前章で解説した労働者の高齢化や人手不足、事故、長時間労働への対策として、DXの活躍が期待されているのです。
DXを実現させる方法
建築業界でDXを実現させるには、以下の方法が考えられます。
- 無人建機の遠隔操作技術
- AIに熟練技能をインプット
- 3Dプリンタによる生産性向上
- 測量や点検にドローンを活用
本来、人が直接操縦する必要のある建設機械ですが、機械に取り付けられたカメラを通して遠隔で操作したり、AIによって自動での操縦や制御も可能になりつつあります。
無人建機の遠隔操作技術によって、危険は現場での作業を減らし死傷事故の減少につなげられるでしょう。
AIに熟練技術をインプットさせることで、属人性が強いと言われる職人技術の効率的な継承も可能です。
3Dプリンタの建築分野への活用は、近年非常に注目されています。セレンディクス株式会社が提供する3Dプリンタハウスは、工期の短縮・人件費の削減・低価格での住宅提供を実現したとして話題になっているのです。
土地の測量や建物の点検においては、ドローンが活躍しています。従来は、複数人の専門家が作業を行っていたため、コスト面や期間に関する課題や、急斜面・高所での作業に課題がありました。しかし、ドローンであれば、操縦者は安全な場所で操作でき、短時間で終わらせられるため、コストも抑えることが可能です。
取り組み事例
建築業界でのDXとして、大成建設と小柳建設の事例があります。
大成建設では、建設現場の安全性や品質を確認する作業の効率化をはかるために、遠隔巡視システムを開発・導入しています。カメラ付きの機動力に優れたロボットが、24時間体制で作業場の巡視業務にあたることが可能です。
また、小柳建設では、MR(Mixed Reality:複合現実)と3次元データを用いて、業務に仮想現実を取り入れました。実際に現場に立っているかのような視点で確認でき、検査も遠隔で行えます。
建設業界の今後は?AIやロボットの台頭による影響
建設業界の今後は、AIの活用で人材不足の問題を解消すると考えられています。
AIやロボットなどのDXの登場で「仕事がなくなるのでは?」と不安に感じている人もいるかもしれませんが、人間の仕事をAIがすべて奪うのは難しいでしょう。仕事が奪われるのではなく、AIやロボットを上手に活用して共存するという考え方が重要です。
実際に、AIやロボットの活用で、現場仕事への負担を減らすことができ、その代わりに別の仕事を獲得したり女性従業員の活躍の場を増やしたりできます。
建築業界のより良い未来のために、AIやロボットの活用があるのです。
7.建設キャリアアップシステムに期待される効果
建設業界の現状の改善が期待される制度に「建設キャリアアップシステム」があります。
概要とメリットを詳しく解説するので読み進めてみてください。
7-1.建設キャリアアップシステムとは
建設キャリアアップシステムとは、国土交通省が推進する制度で、建設業に携わる事業者の業務負担軽減に役立てる仕組みのことです。
建設業に関わる技能者の資格や社会保険加入状況、現場の就業履歴などを登録でき、事業者が技能者の適切な評価につなげるのに役立てられます。
建設キャリアアップシステムを導入する目的は、主に以下の3つです。
- 技能者のキャリアの見える化
- 将来を見据えた技能者の確保
- 事業者の業務負担の軽減
人手不足や働き方改革の対策として、建設キャリアアップシステムに期待が寄せられています。
建設キャリアアップシステム導入のメリット
建設キャリアアップシステムを導入するメリットは、以下の通りです。
技能者にとってのメリット | ・賃金や待遇面において適正な評価を受けられる・建設業退職金共済事業本部から退職金を受け取れる・スキルアップの計画が立てやすい |
建設業者にとってのメリット | ・建設キャリアアップシステム対応の現場としてアピールできる・下請け事業者が元請け事業者に対してアピールできる・業務負担の軽減につながる |
建設キャリアアップシステムは、導入や申請が難しいと感じるかもしれませんが、導入することで、上記のような大きなメリットを得られるのでぜひ活用してみてください。
まとめ:将来性がある安定した業界で働こう

本記事では、建築業界の特徴や構造、現状、将来性などを網羅的に解説しました。
建築業の市場はこれからも安定し、需要が高い業界ですので、興味がある人はこの機会に就職・転職を検討してみましょう。
建築業は、人々の豊かな暮らしや安心安全な生活において欠かせない仕事です。
しかし、働き手の高齢化や人手不足、働き方改革などの問題を抱えています。若手が不足していることから、建築技術の継承が形になっていないのも大きな課題です。
これらの課題を解決するために、取り入れられ始めているのが、AIやロボットを導入することでの建築業界のDX化です。
建設業界の転職求人サイト「トントン」では、未経験者向けの求人も掲載されています。建築業界に進みたい人は、ぜひ活用してみてください。