【建築業界の基礎知識】建物構造の種類と特徴を押さえよう!

「建築構造ってどんな種類・名称があるの?」
「建築構造の特徴や用途を知りたい」
「RC造やSRC造ってなに?」

建築業界には、さまざまな建築構造があります。アルファベットで「〇〇造」って書いてあるけど、何のことかわからない人も多いです。

この記事では、建設業界で使われる建築構造の特徴や用途を解説します。技術が進歩しているので性能が変わってきている部分もありますが、一般的な基礎知識を学べます。

建築業界に興味がある、もっと詳しく建物構造を知りたい人にも、最低限の建設業界に入れる知識が身につきます。

ぜひ最後まで読んでみてください。

建物構造にはどんな種類がある?

建物構造とは、建物を支える骨組みの種類のことです。一般的に、部屋探しをしている方には、3つに分けて説明します。「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」です。

しかし、建設業界に関わる場合、基礎知識として次の建築構造の種類・名称と特徴には、目を通しておくべきです。

  • W造(木造)
  • S造(軽量鉄骨造)
  • S造(重量鉄骨造)
  • RC造(鉄筋コンクリート造)
  • SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
  • ALC造(気泡コンクリート)
  • PC造(プレキャストコンクリート)
  • AL造(アルミ造)
  • CFT造(コンクリート充填鋼管構造)
  • CB造(コンクリートブロック造)
  • RS造
  • WRC造

それぞれの建物構造の特徴を解説します。

なお、一般の方は「建物構造」「建物工法」を混同されがちです。簡単に説明すると、「構造」は建物を支える骨組み。「工法」は構造を組み立てる方法・手法のことでを指します。

■建物構造の種類・名称一覧

名称家賃防音性耐震・耐火通気性
W造
(木造)
安い低い低い高い
S造
(軽量鉄骨造)
やや安いやや低いやや低い良い
S造
(重量鉄骨造)
普通普通普通良い
RC造
(鉄筋コンクリート造)
やや高い普通高い低い
SRC造
(鉄骨鉄筋コンクリート造)
高い高い高い低い
ALC造
(気泡コンクリート)
普通やや低い高い普通
PC造(プレキャストコンクリート)高い普通高い低い
AL造
(アルミ造)
普通やや低いやや低い普通
CFT造
(コンクリート充填鋼管構造)
高い高い高い低い
CB造
(コンクリートブロック造)
普通普通高いやや低い
RS造やや高い普通普通低い
WRC造普通高い高い低い

1. W造(木造)

【メリット】

  • 材料費が安価なので施工費用が安い
  • 比較的軽い材料なので、短工期で建てられる
  • 通気性・調湿効果が高く、カビや結露を防ぐ

【デメリット】

  • 強度や耐久年数が短め
  • 遮音性・気密性・耐火性が低い
  • シロアリなどの害虫対策が不可欠

W造(木造)のWは「Wood」のこと。

戸建て住宅や低層アパートなどに広く採用されている構造です。日本の気候や風土にあっているため古くから用いられています。

木は生きた材料として言われ、水分を吸収すると膨張し、乾燥すれば水分を発散して収縮する「調湿性・通気性」に優れています。

そのため、湿度の高い日本に適していますので、日本のほとんどが木造住宅です。2階建てで三角屋根であれば、およそ9割は木造です。

近年完成した新国立競技場は、木材を多用しています。しかし、鉄骨を木で覆っていたり、木目調の塗装をしたアルミ材を使っているので、完全な木造とは呼べません。

「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」 が施行されており、公共建築に木材を使用していることも多いです。そのため、柱や梁が木材というだけでは見分けるのは難しいです。

また、1300年前の木造の法隆寺は現在もありますが、長年メンテナンスし続けているから長持ちなのです。国税庁が定める法廷耐用年数は22年と、他の構造より比較的短く耐震性は低いです。

そして、鉄筋造などと比べて材料の密度が低いので遮音性は低いです。しかし、比較的建築費用が安いので、賃料がやすいのは魅力です。

2. S造(軽量鉄骨造)

【メリット】

  • 材料を工場で大量に生産して、安定した品質、材料費を抑えられる
  • 現場で加工の手間がないので、短工期で建てられる
  • 木造より強度と防音性が高い

【デメリット】

  • 通気性、断熱性が悪いので、カビや結露が発生しやすい
  • 厚さが薄いので重量鉄骨と比べて劣る
  • 火災時など熱で変形する恐れがあるので、耐火性は劣る

S造(軽量鉄骨造)のSは「Steel スチール」のこと。

柱や梁などの骨組みに「厚さ6㎜未満の鋼材」を使った構造を軽量鉄骨造といいます。また「厚さ6㎜以上の鋼材」は、次の項で解説する重量鉄筋造です。

主に2階建ての戸建てやアパート、小型店舗などの小さめの建物に用いられています。

木造の柱が人工的に強度を高めた鋼になったとイメージするとよいでしょう。強度や防音性は木造より高いです。しかし、鉄の特性で通気性や断熱性が悪いです。

しかし、壁や床、天井などに使う材料は木造とほぼ同じの場合が多いので、住んでみると木造と変わらないと言われることもあります。

3. S造(重量鉄骨造)

【メリット】

  • 耐久性、耐震性が高い
  • 壁が厚くなるので防音性が高まる
  • 柱が少ないので、広いスペースを確保できる

【デメリット】

  • 厚みが増すほどに高額になる
  • 重量があるため、地盤補強工事等に工費も高い
  • 不動産購入費や賃料が高くなる

S造(重量鉄骨造)のSは「Steel スチール」のこと。

柱や梁などの骨組みに「厚さ6㎜以上の鋼材」を使った構造を重量鉄筋造といいます。中小規模のマンションや、商業施設で用いられることが多いです。

柱と梁を一体化した「ラーメン構造」と呼ばれる、壁で支える構造が用いられます。柱を少なくできるので、広い空間を確保が可能です。吹き抜けなどの間取りの自由度が高くできます。

鉄なので耐震性などの引っ張られる力には強いですが、熱に弱かったり、サビやすいです。近年はコンクリートと合わせた「RC造(鉄筋コンクリート造)」の方が多い傾向です。

4. RC造(鉄筋コンクリート造)

【メリット】

  • 耐火性・耐震性に優れている
  • 遮音・防音性が高い
  • 低層から高層、土地が変形であっても自在に工事が可能

【デメリット】

  • 通気性が低いので、カビや結露しやすい
  • コストが高い
  • 増改築や、取り壊しをしにくい
  • 地盤が弱いと採用されづらい

RC造(鉄筋コンクリート造)のRCは、「Reinforced Concrete 補強されたコンクリート」のこと。

主に柱や梁、床、壁に、鉄筋とコンクリートを組み合わせてできています。鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたものです。主に、大型マンションや団地、複合商業施設などに用いられています。

鉄筋の性質と、コンクリートの性質を合わせた特徴があります。

  • 鉄筋:引張力には強いが、熱に弱くサビやすい
  • コンクリート:引張力には弱いが、熱に強くサビにくい

鉄筋の熱に弱くさびやすい弱みを、引張力が弱いコンクリートで包むことでお互いのデメリットをカバーし合います。

しかし、鉄とコンクリートの重量がかかるので、地盤が弱いと採用されづらいこともあります。次に解説するSRC造との性能の差は、防音性以外では大差がないです。

5. SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

【メリット】

  • 耐火性・耐震性に優れている
  • 遮音・防音性が高い
  • 柱や梁を小さくでき、居住空間が広い

【デメリット】

  • 通気性が低いので、カビや結露しやすい
  • 工程が複雑でコストが高い
  • 家賃が一番高くなりやすい
  • 外気の影響が受けやすい

SRC造のSRCは「Steel Reinforced Concrete コンクリートで強化したスチール」のこと。

鉄骨造と鉄筋コンクリート造を組み合わせた構造です。鉄骨の柱を中心にした周りに鉄筋を組み、コンクリートを流し込んだ構造です。タワーマンションやオフィスビルなど高層ビルによく用いられています。

鉄骨造よりしなやかで、鉄筋コンクリート造より耐久性・耐震性が優れています。しかし、材料が多く、工程が複雑なので建築コストや、工期が長期化しやすいです。

ただ、近年ではRC造(鉄筋コンクリート造)の技術が高まり、必ずしも高層建築に採用されることはないようです。

柱や梁を小さくできるので、居住空間が広くなるので、居住空間やデザイン性がすぐれています。しかし、鉄を多く使っているため、外気の影響を受けやすく、冷暖房費がかかりやすいです。

6. ALC造(気泡コンクリート)

【メリット】

  • 耐久性・断熱性・耐火性が高い
  • 調湿性があり、日本の気候に合う
  • 軽いので、工期が短い
  • 遮音性が高い

【デメリット】

  • 水に弱いので、防水加工は必須
  • つなぎ目が多くなるので雨水が入りやすい
  • コストが高い

ALC造(気泡コンクリート)のALCは「Autoclaved Lightweight aerated Concreate」、軽量気泡コンクリートのこと。

高温で発泡加工することで、内部に気泡ができるので、非常に軽い外壁材です。コンクリートの重量の約1/4といわれています。建物の構造は「軽量鉄骨」になります。

ヨーロッパを中心に普及しており、東京スカイツリーや東京都庁など、高層建築物、複合商業施設などに用いられています。

外壁材のメリットは多いですが、旭化成建材の「へーベル」を含めた、日本に3社しか取り扱えない特殊外壁材です。

内部に気泡があるので軽いこともあり、埋め立て地などの地盤の弱いところでも採用されやすいです。また、断熱性が高いので、夏は涼しく、冬は温かい。調質性もあるので、高温多湿の日本の気候に合いやすいです。

7. PC造(プレキャストコンクリート)

【メリット】

  • 耐火性・耐震性に優れている
  • 遮音・防音性が高い
  • 低層から高層、土地が変形であっても自在に工事が可能
  • RC造より工期が短くなりやすい

【デメリット】

  • 通気性が低いので、カビや結露しやすい
  • コストが高い
  • 増改築や、取り壊しをしにくい
  • 地盤が弱いと採用されづらい

PC造(プレキャストコンクリート)は、壁などを構成するコンクリート部材をあらかじめ工場で作成して、現場で組み立てる建物構造です。

工場で作るので品質が均一になり、コンクリートの防音性・耐火性・耐震性が高くなります。現場の職人の力量に、性質が左右されにくくなります。

建物構造は、RC造(鉄筋コンクリート)と同じです。違いは建築現場で作るか、工場で作るかが違うだけなので、RC造の性質が同じです。

しかし、工場には壁材などの型枠があるものを使うことになり、場合によっては自由度が減ると感じる方もいるかもしれません。

8. AL造(アルミ造)

【メリット】

  • 軽量で加工がしやすい
  • サビや塩害に強い
  • 耐震性は高い

【デメリット】

  • 鋼材より弱い
  • 断熱性・通気性が低い
  • 大型の建物に不向き

AL造(アルミ造)のALは、「aluminum」アルミニウムのこと。

アルミを使った構造で、最大の特徴は軽さです。鉄骨の1/3と軽量なので、建物の重量が軽くなるので、耐震性は高くなります。

アルミはサビや塩害に強いため、海沿いの住宅などによく用いられます。軽量のため加工しやすく、工場で精密に加工したものを現場で組み立てるので、工期が短いです。

しかし、断熱性や通気性が低く、大型の建物には不向きです。断熱材を二重構造にするなどの対策を行う必要があります。

9. CFT造(コンクリート充填鋼管構造)

【メリット】

  • 耐久性・耐震性に優れている
  • 自由なデザイン・設計ができる
  • 防音性・耐熱性が高い

【デメリット】

  • コストが高い
  • 高い技術力が必要

CFT造(コンクリート充填鋼管構造)のCFTは「Concrete Filled Steel Tube」のこと。

鋼管の内側にコンクリートを充填した構造です。

柱や梁を鉄骨以上に細くすることが可能で、自由なデザイン性・設計ができる上、耐久性・耐震性に優れています。充填されたコンクリートが熱を吸収するので、耐熱効果が高いです。

ただし、建設には高い技術が必要になり、コストがかなり高いです。

「あべのハルカス」「横浜ランドマークタワー」といった、タワーマンションや高層ビル、大型の商業施設に主に用いられています。

10. CB造(コンクリートブロック造)

【メリット】

  • RC造(鉄筋コンクリート造)よりコストが低い
  • 独特な外観・風合いが出せる

【デメリット】

  • 防湿性が低い
  • 増改築が難しい

CB造(コンクリートブロック造)は、「Concrete Block」のこと。

名前のとおり、コンクリートを積み上げて作った建築構造です。日本ではコンクリートを積み上げただけでは、建物としての許可がでないので、鉄筋を1本から数本入れています。

レンガを重ねているような独特の外観ができるので、おしゃれな建物、デザイン重視のコンセプト物件などに用いられています。

しかし、防湿性が低く、増改築が難しいので、小規模の倉庫などの外壁に使用されることが多いです。

11. RS造

【メリット】

  • 設計の自由度が高い
  • 低層階と中層階でデザインが変えられる

【デメリット】

  • 外観からは見分けがつかず、鉄筋コンクリート造として表現されやすい
  • 中層階では防音性が低いことが多い

RS造は、「Reinforced Steel 補強されたスチール」のこと。

建物の上下で建物構造を変更する構成のものをいいます。例えば、建物の下位部分にある柱や壁、床、天井などをRC造(鉄筋コンクリート造)でつくり、上部をS造(軽量鉄筋造)などにするといったものです。

主に低中層マンションの建設の際に、低層階に頑丈で重量のあるもの、中層階以上は自由度が高いものが採用されています。設計に自由度が高く、デザイナーズマンションに用いられます。

他にも2階建ての美術館、野球場、大型集客施設、地下街とつながっている商業ビルも多いです。

混合した建物構造ですが、RC造(鉄筋コンクリート造)と表記していてもRS造のこともあります。なので、防音性があると思って住んでみたら、隣の部屋の音が聞こえやすいといった苦情もあります。

しかし、見た目で判断するのは難しいので、不動産会社によっては価値と性能が高いRC造(鉄筋コンクリート造)と、正確に表現されていないこともあります。

12. WRC造

【メリット】

  • 防音性が優れている
  • 耐久性が高く、耐震性に優れている
  • 柱と梁がないので、部屋が広くとれる
  • 建設コストが低い

【デメリット】

  • ドアや窓など間取りに制限がある
  • 増改築が難しい
  • 3階以下の低層階マンションが適正階数

WRC造とは、「Wall Reinforced Concrete コンクリートを補強した壁」のこと。

柱と梁を使わず、床や天井の面だけで建物を支える壁式鉄筋コンクリート構造のことです。

そのため、壁を厚くするので耐久性、耐震性が優れています。地震や台風での倒壊や、大きな被害は特に少ないです。また、壁が厚いことで防音性が優れているのも特徴です。

比較的低コストで、居室内のデットスペースが生じにくいため、主に低層マンションなど集合住宅、戸建住宅でよく用いられます。

ただし、適正階数は3階(限界は5階)といわれており、壁や床だけで構成される特性上、大きな開口部をとりづらいため設計の自由度は低いです。

建築業界では建物構造に関わる業務経験を求める求人が多くある

一般的な部屋探しには「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート」程度で十分です。建築業界に入ると、もっと詳細な建築構造と関わることになります。

建設業界では、「〇〇造の建築施工管理経験」「〇〇造の建築設計業務ご経験をお持ちの方」といった募集が数多くあります。

今回解説した知識があれば、建物構造の最低限の知識を持っていることを、しっかりアピールすることが可能です。

例えば、建築業界の転職求人サイト「トントン」では、RC造の経験を持つ人の募集が数多くでています。実際にどのような建物構造の経験を求める求人が多いか、見てみてはいかがでしょうか?

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