
アスファルト工事では、舗装道路の工法としてオーバーレイ工法と呼ばれるものがあります。オーバーレイ工法にはさまざまなメリットがあり、定期メンテナンスが必要なアスファルトにはなくてはならない存在でしょう。
今回は、オーバーレイ工法の特徴やメリットについて解説します。さらに、オーバーレイで舗装する手順についても併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
オーバーレイ工法とは
オーバーレイ工法とは、損傷したコンクリートや、劣化した舗装道路の表面に上から重ねて舗装しなおす補修方法です。表面だけを舗装する工法であることから、一から施工するよりも工期や費用を抑えられるのが特徴です。
また、一般的なアスファルトの場合、古いアスファルトと新しいアスファルトの間に「乳剤」と呼ばれる接着剤を詰め込む作業をおこないます。そのため、新旧のアスファルトの間に空間ができてしまうことも少なくありません。
しかし、オーバーレイ工法であれば、上から重ねて舗装することから、溝が発生するといったリスクがほとんどないのも特徴といえるでしょう。
オーバーレイ工法を活用できる場所
オーバーレイ工法は、主に路面の劣化が進行しているところでおこなうのが一般的です。そのほか、地盤沈下が発生している道でもオーバーレイ工法を活用するケースがあります。
そのほか、路面に凹凸があるところだけでなく、平坦ではない道などでも、オーバーレイ工法を活用し、舗装をおこなうことも少なくありません。
オーバーレイ工法を活用すれば、凸凹をならすことができるほか、路面自体の劣化を抑えられるといった効果も期待できます。そのため、大きな損傷があるところだけでなく、軽微な劣化が進行しているようなところでも施工することが多いでしょう。
オーバーレイ工法で使用する材料
オーバーレイ工法では、原油を精製して作られたストレートアスファルトを使った混合物を使用することが一般的です。しかし、路面状況や場所、目的などによって、材料を使い分けることも珍しくありません。
ここでは、7つの舗装の種類を詳しく見ていきましょう。
材料 | 特徴 | 目的・使用場所 |
改質アスファルト舗装 | 石油アスファルトにポリマーや天然アスファルトを加えた混合アスファルト耐久性に優れている | 交通量が多い場所気候の影響を受けやすい場所 |
排水性舗装 | 表層に空げき率が高いアスファルト混合物を設けた構造水が路盤以下に浸透しない | 騒音を低減したい場所雨天時の影響を受けやすい場所 |
砕石マスチックアスファルト舗装 | フィラーと粗骨材が多く、ギャップ型粒度のアスファルト混合物を用いた舗装水密性に優れている | 寒冷地幹線道路 |
半たわみ性舗装 | たわみ性と剛性を複合的に活用した舗装浸透用セメントミルクを注入して作る | 景観に合わせた着色が可能 |
大粒径アスファルト舗装 | 最大粒径が25mm以上の骨材を使用耐流動性、耐摩耗性に優れている | 幹線道路重交通路線 |
熱硬化性アスファルト舗装 | エポキシアスファルトを使用コンクリートと同程度の耐久性 | トンネル内の舗装修繕景観に合わせた着色が可能 |
ロールドアスファルト舗装 | プレコートした骨材を散布してローラで圧入する舗装すべり抵抗性、耐久性、美観性に優れている | バスレーントンネル内の舗装山岳道路橋面舗装 |
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オーバーレイ工法の7つのメリット
オーバーレイ工法は、既存の舗装道路の上から重ねておこなう工法であることから、さまざまな利点があります。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
【オーバーレイ工法の7つのメリット】
- 舗装が頑丈になる
- 破損した道が平坦になる
- 舗装構成が不明の場合も対応できる
- 舗装層が増える
- 騒音・振動が起こりにくい
- 施工期間が短い
- コストを抑えられる
舗装が頑丈になる
オーバーレイ工法は既存の道路の上から重ねる工法であり、3~5cm程度の厚さで舗装していきます。舗装の厚さを十分に確保できることから、舗装構造自体を強化することができ、耐久性を期待できるでしょう。
ただし、路面の高さが上がってしまうことに留意しておかなければなりません。
破損した道が平坦になる
連続的に凹凸がある道路や、平坦ではない道をオーバーレイ工法によって舗装することで、道が平坦になるメリットがあります。
道路が平坦になることで、スリップしにくくなるだけでなく、走行しやすい道路環境を作れるのがオーバーレイ工法の利点といえるでしょう。
舗装構成が不明の場合も対応できる
通常の舗装工事の場合、既存の道路を切削したうえで、新しい道路を作っていくのが一般的です。そのため、道路の下に何が埋まっているのか、過去の工事ではどのような工法がおこなわれていたのかなどを、事前に調査する必要があります。
しかし、オーバーレイ工法では、切削工事が必要ないので、過去の工事記録を確認する必要がなく、舗装構成が不明な場合も舗装対応ができるのがメリットです。
舗装層が増える
オーバーレイ工法は、既存の道のうえから工事をおこなうため、舗装層を増すことが可能です。舗装層が増えることで、耐久性が高くなり、舗装面が摩耗しやすい場所にも活用できるのがメリットといえるでしょう。
騒音・振動が起こりにくい
オーバーレイ工法は、通常の舗装工事と異なり、切削機などを使用しないことから、騒音や振動が発生しにくいのが特徴です。そのため、住宅街などで作業する場合であっても、近隣に配慮した工事が可能となります。
施工期間が短い
オーバーレイ工法は、既存の道路のうえに新たな舗装を重ねる工法であることから、切削作業などが必要なく、施工期間が短く済むのがメリットです。
コストを抑えられる
一般的な道路工事のように、重機を使用しないのがオーバーレイ工法の特徴です。そのほか、材料や機材も少なく済み、工期が短いので人件費も抑えられるといったメリットがあります。
オーバーレイ工法は、通常の工事よりも工程が少ないことから、さまざまな項目で費用を節約でき、総合的にコストを抑えられるのがメリットといえるでしょう。
オーバーレイで舗装する手順
ここでは、オーバーレイ工法で舗装する手順について、詳しく解説します。
【オーバーレイ工法で舗装する手順】
- 準備工
- タックコート
- 混合物の敷きならし
- 転圧
- 養生
準備工
実際にオーバーレイ工法をはじめる前に、下準備を進めていきます。「準備工」の工程では、主に以下の作業をおこないます。
- 路面の清掃
ゴミやホコリ、泥などをしっかりと取り除きましょう。
- 局部打ち替え・レベリング作業
既存の道路が破損している場合は状況に応じて補修をおこないます。
タックコート
タックコートはアスファルト層の間に注入する乳剤のことであり、層同士を接着するために使用します。主に以下の流れで作業をおこないます。
- アスファルト乳剤をデストリビューターなどで散布
※スプレーノズルから乳剤が漏れる可能性があるので、シートなどで養生しておくことをおすすめします。
- 付帯構造物に養生用ビニールを撒いて保護
※石粉を水で溶いたものを塗布します。
混合物の敷きならし
「混合物の敷きならし」の工程では、通常アスファルトフィニッシャーを使います。なお、通常アスファルトフィニッシャーが使えない場所では、人力でおこなう必要があります。
- 混合物を締め固めたあと、所定の厚さになるように混合物を敷きならす
※あらかじめ所定の厚さを決めておき、確認しながら作業します。
- 敷きならし作業中に天候が変わり、雨が降った場合は、作業を中止する
※すでに敷きならした混合物は早急に締め固める
転圧
「転圧」の工程は、「初転圧」「二次転圧」「仕上げ転圧」の3段階にわけておこなうのが一般的です。
【初転圧】
初転圧の作業では、10~12トンのロードローラを用いて、1往復程度転圧するのが一般的です。また、ヘアクラックを発生させないためにも、可能な限り高温の状態でおこなうことが大切です。※110~140℃が目安
【二次転圧】
初転圧が終わったら、次に二次転圧をおこないます。二次転圧では、8~20トンのタイヤローラ、もしくは6~10トンの振動ローラを使うことが一般的です。
タイヤローラを使うことで、骨材の噛み合わせがよくなるほか、深さの方向に均一な密度を得やすくなるといったメリットがあります。
【仕上げ転圧】
そして、最後に仕上げ転圧をおこないます。仕上げ転圧では、タイヤローラ、もしくはロードローラで一往復します。仕上げ転圧では、主に不陸の修正に加え、ローラマークを消すことを意識して作業しましょう。
なお、仕上げ転圧直後は、舗装上にローラを停止させないように注意が必要です。転圧直後にローラを長時間停止させると、ローラの跡が残ってしまう可能性があります。
養生
「養生」の工程では、締め固め作業が終わったあと、ゴミの付着を防ぐことに加え、機械や人が入って跡が付かないようにするために、舗装表面の温度が50℃以下になるまで養生をおこないます。
オーバーレイできない場合の対処法

道路状況や舗装状態などによっては、オーバーレイできないことも少なくありません。ここでは、オーバーレイできない場合の4つの対処法を詳しく見ていきましょう。
切削オーバーレイ
切削オーバーレイとは、切削法とオーバーレイ工法を組み合わせたものです。まず、対象の路面を切削します。そして、切削が終わった路面のうえから、オーバーレイ工法によって舗装していきます。
通常のオーバーレイ工法の場合、厚みができてしまいますが、切削オーバーレイであれば、路面を高さを変えずに舗装することが可能です。ただし、切削作業が必要になるので、通常のオーバーレイでは使用しない大型機械が必要となることから、道路状況によっては施工できない可能性があります。
打ち替え工法
打ち替え工法とは、道路の舗装面の劣化や損傷が激しく、一般的なオーバーレイ工法では補修しきれないときに実施する工法のひとつです。
工事規模が大きいので、工期がかかるほか、騒音や振動が発生してしまうことも少なくありません。ただ、新しい道路のような仕上がりになるので、しっかりと綺麗に直したい場合に最適な工法といえるでしょう。
パッチング工法
パッチング工法とは、舗装面に発生した凹みやクラックなどを補修するときにおこなう工法です。補修が必要なクラックなどに、アスファルト混合物を埋め込んで、転圧することで補修していきます。
ただ、あくまでも応急措置に過ぎないので、ほかの工法よりも耐久性が劣ってしまいます。
路上表層再生工法
路上表層再生工法は、既存の舗装に新しい材料を混ぜ込んで、舗装面を平面に再生させるといった工法です。既存の舗装を使用することから、材料が少なく済み、材料費を抑えられるといった特徴があります。
ただ、古い舗装材を使用することから、耐久性や品質面が向上するわけではないことを留意しておきましょう。
まとめ
舗装にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や費用、工期などに違いがあります。今回紹介したオーバーレイ工法は、既存の舗装から重ねて新しい舗装をおこなうため、工期が短く済み、コストを抑えられるといったメリットがあります。
また、重機が必要ないので、騒音や振動が発生しにくいといった特徴もあります。ただ、道路状況や舗装面によっては、オーバーレイ工法ができない可能性もあるので、現場調査をおこない、最適な方法で補修しましょう。