
施工管理技士に関する資格のなかに「技士補」と呼ばれる資格があります。
技士補とは、1級施工管理技士または2級施工管理技士の第一次検定に合格した人が取得できる資格のことです。
2021年4月に施工管理技術検定制度が改訂され、創設された資格であるため、まだ知らない人も多い資格です。(※国土交通省が提供する資料を参考)企業にとっても有資格者にとっても、メリットの大きい資格と言えます。
そこで本記事では、技士補の概要から資格取得するメリット、試験概要まで詳しく解説します。
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目次
そもそも技士補とは?
「そもそも技士補とは何のこと?」と疑問に思っている人もいるでしょう。
技士補とは、2021年4月に施工管理技術検定制度が改訂され新設された資格のことです。正式名称を「施工管理技士補」と呼びます。本資格を取得することで、1級施工管理技士補を監理技術者補佐としての配置が可能です。
監理技術者補佐とは、監理技術者の代わりに配置する技術者のことです。監理技術者の専任が必要な工事現場において、監理技術者補佐がいれば、監理技術者が2ヵ所までの現場を兼務できるようになります。
そのため、人手不足の解決策として期待されているのです。
次項で、技士補資格が創設された背景や1級施工管理技士補と2級施工管理技士補の違いを詳しく解説します。
技士補が創設された背景
建築業界の人手不足と技術者の高齢化が深刻化していることへの打開策として、技士補の資格が新設されました。
少子高齢化の影響もあり、建設業界に進む若手の数が減っており、権利技術者が高齢化していることで人手不足に更なる拍車がかかっている状態です。高度なスキルをもった技術者が減ることで、住宅やビルの建築だけではなく、道路や河川などのインフラ整備もままならなくなります。
また技術者不足は受注競争の激化につながり、そのしわ寄せが下請け業者にいくことも予想されます。
このような建設業界の現状と日本の未来という背景があり、1級建築施工管理技能士補の資格が創設されました。
1級施工管理技士補と2級施工管理技士補の違い
1級施工管理技士補と2級施工管理技士補の違いとして、以下の2つが挙げられます。
- 担当可能な業務
- 経営事項審査の加点の条件
まずは1級と2級の業務範囲の違いがあります。1級施工管理技士補の場合は、監理技術者補佐になることが可能です。
監理技術者補佐であれば、大規模工事において以下のような業務を担当できます。
- 施工計画の立案・作成
- 工程・品質・予算の管理
- 下請け業者への指導と監督
一方、2級施工管理技士補は管理技術者補佐になれないため、1級のように業務範囲が増えることはありません。
また、建設業者が公共工事を受注する際に重要な、経営事項審査への加点も関係します。1級施工管理技士補は経営事項審査の加点対象になります。ただし、技士補だけではなく主任技術者要件も必要です。
2級施工管理技士補の場合、施工管理技士・施工管理技士補対象の継続教育制度であるCPDで取得した単位数に応じて加算される仕組みです。
施工管理の仕事内容を詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
技士補の試験について

前提として、施工管理技士補そのもの試験はありません。1級と2級どちらかの施工管理技術検定のうち第一次検定に合格することで、施工管理技士補の資格が自動的に取得できる仕組みです。
例えば、1級建築施工管理技士の第一次検定に合格すると「1級建築施工管理技士補」が取得でき、2級建築施工管理技士の第一次検定への合格であれば「2級建築施工管理技士補」が取得できます。
検定は、第一次検定合格後に第二次検定を受ける流れになっており、第二次検定に不合格の場合でも技士補の資格は取得可能です。
施工管理技士の試験に関して、受験資格や試験内容、合格率の詳細を解説します。
2024年の受験を検討している人は、しっかり確認しておきましょう。
受験資格
施工管理技士の受験資格は、令和6年度から変更されています。令和6年度から令和10年度までは旧受験資格と新受験資格の選択が可能です。
本記事では、新受験資格に関して解説しています。
【1級施工管理技士】
第一次検定 | 第二次検定 |
19歳以上(受験年度末時点において) | 1.1級第一次検定に合格し、以下の要件のどれかを満たしている ・実務経験5年以上 ・特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 ・監理技術者補佐としての実務経験1年以上 2.2級第一次検定に合格し、以下の要件のどれかを満たしている ・実務経験5年以上(1級第一次検定の合格者に限られる) ・特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上(1級第一次検定の合格者に限られる) |
【2級施工管理技士】
第一次検定 | 第二次検定 |
17歳以上(受験年度末時点において) | 1.2級第一次検定に合格し、以下の要件を満たしている ・実務経験3年以上(建設機械種目については2年以上) 2.1級第一次検定に合格し、以下の要件を満たしている ・実務経験1年以上 |
旧受験資格に比べると、1級施工管理技士の受験資格が大幅に緩和されており、受験しやすくなっています。
旧受験資格の内容や関連資格による受験資格の概要は、国土交通省が提供している「令和6年度より施工管理技術検定の受験資格が変わります」をご覧ください。
試験内容
1級施工管理技士と2級施工管理技士それぞれの試験内容に関して、詳しくまとめました。
【1級施工管理技士】
第一次検定 | 第二次検定 | |
試験時間 | 午前の部:2時間30分 午後の部:2時間 | 3時間 |
解答形式 | 四肢択一式・五肢択一式(マークシート方式) | 記述式・五肢択一式(マークシート方式) |
出題数 | 全72問のうち60問を選択して解答 | 6問(全問必須) |
配点 | 1問1点、60点満点 | – |
出題内容 | ・建築学 ・設備その他 ・躯体施工 ・仕上施工 ・施工管理法 ・応用能力問題 ・法規 | ・施工経験記述 ・仮設計画 ・施工管理 ・躯体施工 ・仕上施工 ・法規 |
【2級施工管理技士】
第一次検定 | 第二次検定 | |
試験時間 | 2時間30分 | 2時間 |
解答形式 | 四肢択一式・四肢択二式 | 記述式・四肢択一式 |
出題数 | 全50問のうち40問を選択して解答 | 5問(全問必須) |
出題内容 | ・建築学等 ・設備その他 ・施工 ・施工管理法 ・施工管理法(応用能力問題) ・法規 | ・施工経験記述 ・施工管理 ・工程管理 ・法規 ・施工 |
1級も2級も出題範囲が大きく異なるわけではありませんが、「躯体施工」や「仕上施工」など、1級のほうがより専門的な内容を問われます。
また受験時間が比較的長いため、集中力を切らさないようにしたり、効率よく問題を解いたりするためのテクニックも必要になるでしょう。
難易度・合格率
施工管理技士試験の合格率をまとめました。
第一次検定の合格率を確認すると、1級と2級のどちらも40〜50%程度の合格率があるとわかります。
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | |
1級施工管理技士 | 42.7% | 51.1% | 36.0% | 46.8% |
2級施工管理技士 | 34.7% | 34.5% | 49.1% | 42.1% |
施工管理技士補を取得する4つのメリット
施工管理技士補を取得するメリットは、以下の4つです。
- 技術者として責任のある仕事を任せてもらえる
- 自分のタイミングで二次検定を受けられる
- 未経験でも資格を取得できる
- 転職に有利になる
それぞれ詳しく解説します。
技術者として責任のある仕事を任せてもらえる
技士補の資格を取得すると、社内で責任ある仕事を任せてもらいやすくなります。
資格を保有することで知識があると認められますし、1級施工管理技士補であれば監理技術者補佐として現場の監督業務も可能です。つまり、会社からもより責任のあるポジションを任せてもらいやすいということです。
責任ある仕事でプレッシャーも感じるかもしれませんが、より多くの経験を積めますしやりがいも感じられるでしょう。
自分のタイミングで二次検定を受けられる
施工管理技士の一時検定に合格すると、施工管理技士補になれます。たとえ二次検定が不合格でも、技士補の資格は取得できます。
また、資格に期限はないため、その後、二次検定を受験しなくても資格を剥奪される心配はありません。
自分のペースでしっかり勉強と対策をして、二次検定を受ける準備が整ったら受験をしたらいいのです。自らのベストなタイミングで受験できるのは、大きなメリットでしょう。
未経験でも資格を取得できる
令和6年度からは、1級施工管理技士でも第一次検定は実務経験がなくても受験可能になりました。
つまり、知識が身についていれば未経験者でも建築に関する資格を取得できます。他業界からの転職においても、施工管理技士第一次検定に合格しているだけで、有利に働く可能性もあります。
すでに建設業界で働いていて、管理技術者を目指したいと考えている人にとっても、受験資格の緩和は大きなメリットでしょう。
転職に有利になる
施工管理技士補の資格は国家資格であるため、履歴書にも記載できますし、転職時には大きなアピールになるでしょう。
人材不足の解消や働き方改革を求められる建設業界にとって有資格者の存在は大きく、建設会社でも管理技術者補佐を確保したいと考えている企業は少なくありません。
1級・2級問わず、深い知識と高いスキルの証明になる施工管理技士補の資格は、転職時に大いに役立つでしょう。
技士補の資格を活かしたキャリアとは?
施工管理技士補の資格を活かしたキャリアとしては、建設会社や施工会社において、監理技術者補佐としての活躍が期待できます。
監理技術者補佐になることで、監理技術者の配置義務の手助けになるため、企業にとって人材不足の解消になります。また、自身にとっては専門的な知識とスキルを活かして、責任あるポジションを経験しながらキャリアの構築が可能です。
将来的に補佐ではなく1級施工管理技士を目指したい人は、実務をこなしながらスキルアップできるため、補佐として業務に従事するのがおすすめです。
まとめ
本記事では、施工管理技士補の概要から資格取得するメリット、資格試験の概要を詳しく解説しました。
施工管理技士補は、人手不足や高齢化という建設業界で深刻化する問題の解消に向けて導入された新しい資格です。資格取得者にとっても、以下のようなメリットがあります。
- 技術者として責任のある仕事を任せてもらえる
- 自分のタイミングで二次検定を受けられる
- 未経験でも資格を取得できる
- 転職に有利になる
建設業界への転職を視野に入れている人にとっても、非常に魅力的な資格と言えるでしょう。
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