【住宅業界の今後】リアルな現状と課題・将来の見通しを徹底解説!

全国的な人材不足と世界的な資材不足に加えて、コロナ禍の住宅業界のリアルな現状と課題・将来の見通しについて徹底解説します。

これから住宅業界への就職・転職を検討している人のために、本当に役に立つ資格の種類も紹介しているので参考にしていただければ幸いです。

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住宅業界と不動産業界との違い

住宅業界と不動産業界の違い

住宅業界の今後について解説する前に、混同しがちな不動産業界との違いを明確にしておきましょう。不動産業界の仕事は主に開発・管理・仲介の3つに分類されます。

不動産業界

1.開発

デベロッパー(開発事業者)と呼ばれる。マンション、ビル、商業施設、リゾート施設、駅、道路やインフラ整備を含めた都市再生や街づくりを企画する。工事を行うのはゼネコンと呼ばれる大手建設会社。

大手デベロッパー:三井不動産・飯田グループホールディングス・三菱地所など。

2.管理

マンション、ビル、商業施設、施設内の各テナントの維持管理業務。

大手管理会社:三井不動産レジデンシャルサービス・大東建託・東急コミュニティーなど。

3.仲介

土地や建物の売買、賃貸物件の契約を仲介する。

大手仲介会社:三井不動産リアルティグループ(三井のリハウス)・住友不動産販売・東急リバブルなど。

不動産業界では道路やインフラ整備を含めた大規模な建設工事が行われます。

住宅業界

一方、住宅業界は主に「個人が暮らす建物を作る」建築工事を行います。住宅業界の仕事は、主にハウスメーカー・工務店・設計事務所・ハウスビルダーの4業種に分類できます。

1.ハウスメーカー

建築資材を自社で開発製造して、建築工法を規格化している。幅広い地域で安定した品質の住宅を提供できるのが特徴。モデルルームやパンフレットから好きなデザインの住宅を選ぶスタイル。

大手ハウスメーカー:旭化成ホームズのへーベルハウス・積水ハウス・住友林業など。

2.工務店

比較的対象エリアが狭く、地域に密着しているのが特徴。自社および外部から職人を集めて、オーダーメイドの家づくりをする。その土地の湿気や寒暖といった環境に配慮した工法を用いることが多い。

3.設計事務所

対象エリアは事務所の規模による。オーダーメイドかつ個性的でデザイン性の高い住宅設計が可能。細部のこだわりにも応じてくれる。

4.ハウスビルダー

規模はハウスメーカーと工務店の中間くらい。規模が大きい場合はパワービルダーと呼ばれる。設計と施工が設計事務所寄りの場合はアーキテクトビルダーという。

なお、上記の業種には明確な定義がありません。工務店と名乗っていても竹中工務店はゼネコンですし、一条工務店は大手ハウスメーカーといえます。

住宅業界の動向と課題・問題点

住宅業界の動向を把握する指標のひとつに政府の統計「新設住宅着工戸数」があります。年間で新たに建設された住宅棟数のことです。

【2022年9月までの新設住宅着工戸数】

住宅業界の課題・問題点

2017年2018年2019年2020年2021年2022年9月時点
946,396戸952,936戸883,687戸812,164戸865,909戸643,120戸
コロナの流行参考:2021年の9月は636,673戸

参照資料:政府統計 e-Stat

2020年のコロナ・ショックで81万戸台に落ち込んだ新設住宅着工戸数は、ステイホームの呼びかけやテレワークの定着によって翌2021年には盛り返しました。生活スタイルの変化から、都市部から郊外へと拠点を移す人が増えたからと考えられます。

ただ、日本の少子化が回復して人口が増加する兆しはいまだ見られないのが現状。拠点移動を目的とした住宅の需要はそろそろ頭打ちになったとも考えられます。

次に、住宅業界が直面している問題点と課題を整理していきます。

人材不足の問題

少子高齢化による人材不足は、住宅業界だけなく日本の慢性的な問題となっています。

工務店の経営者やひとり親方の多くは高齢で、後継者がいないという理由で金融機関の融資を受けられないケースが増えています。ベテラン職人の技術を受け継ぐ若手を確保できないことは、住宅業界にとって大きな不安材料といえるでしょう。

また、数年以内の引退や廃業を考えている職人はインボイス制度やキャリアアップシステムへの関心が薄いため、元請け側のルール変更を負担に感じています。結果的に、国が施行するDX(業務のデジタル化)の普及は大幅に遅れています。

資材不足の問題

住宅業界は木材と半導体の不足によるダメージを受けています。

日本が消費する木材の7割は輸入木材に頼っていますが、2021年春頃からウッド・ショックと呼ばれる木材価格のインフレが起きています。ウッド・ショックの引き金となった主な原因は、新型コロナウイルスの世界的流行です。

  • アメリカが新型コロナウイルス対策としてリモートワークを推進する政策を取ったため、建築木材の需要が増えた
  • 新型コロナウイルスの影響で伐採業者や製材工場の稼働率が下がり、木材の生産量が低下した
  • ステイホームで通販の利用者が激増し、流通用のコンテナが不足した

直接新型コロナウイルスに関連はありませんが、タイミング悪く追い打ちをかけたのが以下の3点。

  1. 急激に経済成長する中国が産業用の丸太を国内で補えなくなった
  2. 2021年3月にスエズ運河で大型コンテナ船が座礁事故を起こした
  3. ロシアが非友好国への木材輸出を禁止した(ウクライナ侵攻に起因する)

また、半導体不足によるエアコン・シャワートイレ・給湯器・照明など住宅設備の品薄も完全には回復していません。半導体不足の原因はさまざまです。

  • リモートワークでパソコン・タブレット・スマート家電など半導体を使用するデジタル機器の需要が増えた
  • クラウドシステムやサーバーの需要が高まった
  • 暗号通貨のマイニングに使う半導体の需要が増えた
  • 半導体シェア率トップの台湾で大規模な干ばつが起きた(水不足だと生産できない)
  • アメリカ政府が中国の半導体関連企業に禁輸制裁をかけた
  • アメリカテキサス州の半導体工場が大寒波の影響で閉鎖した

住宅業界で目立つM&A

住宅業界では人材不足や後継者不在、資材不足による経営難といった課題を解消する方法として、М&A(合併・買収)に踏み切る企業が目立っています。

1990年代から2000年頃までは、相手の同意を得ない敵対的買収や乗っ取りといったネガティブなイメージが強かったM&Aですが、昨今は友好的な事業継承として広く認知されています。

住宅業界のM&Aの事例

【2019年10月】
AVANTIA(旧サンヨーハウジング名古屋)が、株式会社プラスワン(リフォーム・不動産業)を完全子会社化。

【2020年3月】
株式会社三栄建築設計が、マックホーム株式会社(ハウスビルダー)を連結子会社化。マックホームが株式を保有する株式会社村田工務店も三栄建築設備の傘下に入った。

【2020年5月】
株式会社オープンハウスグループと株式会社プレサンスコーポレーション(デベロッパー)が資本業務提携した。

【2021年1月】
飯田グループHDが、株式会社オリエント(内装建材の製造販売)を完全子会社化。

これからの住宅業界はどうなる?

住宅業界のこれから

コロナ禍で自分の住環境を見直す人が増えているため、住まいに対するニーズはまだまだ続くと思われます。住宅業界はこれから、顧客に新しい生活スタイルを提案するとともに、自分たちの労働環境を改善する必要があります。

時間外労働と建設DX

2024年4月以降、働き方改革の一環として建設業の時間外労働の上限が規制されます。企業は1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を守らなければなりません。

もし残業する場合は36協定によって月に45時間、年360時間まで、それでも足りない場合は特別条項付き36協定により年720時間が上限となります。

労働環境の改善は働きたい人を増やしますが、残業する人がいなければ繁忙期の仕事は回っていきません。企業は人材と時間のコストを下げるため、建設DXへの取り組みを進めるべきでしょう。すでに各企業で行われている建設DXの例を紹介します。

構造エクスプレス

住友林業の子会社ホームエクスプレス構造設計によるAI構造設計のプラットフォーム。従来は別々の会社が作成していた意匠図、構造計算書、プレカット加工図などをCADから自動生成することで人手と時間のコストを大幅に軽減します。

VR展示場

多くの企業が単独もしくは複数で、VR住宅展示場のポータルサイトを提供しています。顧客が自宅でVRゴーグルを装着すれば、360°自由に内覧できるため、モデルルームに営業・接客担当者を常駐させなくても集客できます。

木造大型パネル

ウッドステーション株式会社では、軸組みからサッシ貼り付けまでを工場で施工して、あらかじめ作業工程を減らした木造大型パネルを全国展開しています。大工や職人の人数削減、工期の短縮が可能となります。

省エネ基準適合の義務化

2025年度以降、住宅を含む新築の建物すべてに省エネ基準適合が義務化されます。省エネ住宅にはいくつか種類がありますが、ここではZEHとスマートハウスについて解説します。

ZEH(ゼッチ)

ZEH(ゼッチ)は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称。2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた経済産業省、国土交通省、環境省の3省連携の取り組みです。「ZEB・ZEH-M委員会」が普及を推進しています。

政府は2016年より、「受注する住宅のうち50%以上のZEH化率(ZEHが占める割合)」という目標を宣言・公表したハウスメーカー・工務店・建築設計事務所・リフォーム業者・建売住宅販売者を「ZEHビルダー」として公募し登録したうえで、屋号や目標値を公表しています。

例えば、一般社団法人住宅生産団体連合会のZEHビルダー一覧はこちら、一般社団法人JBN・全国工務店協会のZEHビルダーはこちらのページからご覧いただけます。

※2022年3月時点のZEHビルダーは全部で4,722社です。

2020年にハウスメーカーが新築した注文住宅の約56%がZEHとなりました。2021年度からは実績に応じて、ZEH化率50%以上は75%以上を、50%未満の場合は50%以上を2025年度の目標に設定する新たな制度が開始しています。

スマートハウス

スマートハウスとは、IoT機能を持った照明や空調、家電などをHEMSというシステムを導入して一元管理する住宅です。

IoTはモノのインターネット機能。スマートフォンで外出先から自宅のエアコンをつけたり、帰宅途中にお風呂のお湯を張ることが可能となります。

HEMSは、IoTと通信してエネルギーの消費をモニタリングして制御するシステムです。また、エネルギーの利用状況をパソコンやスマホの画面で「見える化」することで住人に節電を促すというメリットもあります。

【スマートハウスの例】

エアコンを「強」に設定した部屋でロボット掃除機が稼働しているときに、うっかり電子レンジを使っても、HEMSシステムが電力を制御するのでブレーカーが落ちずに済む。

住宅業界の年収は? 就職・転職別データ

住宅業界の年収

住宅業界で比較的メジャーな大手企業の平均年収は以下の通りです。

【大手企業の平均年収】

積水化学工業897万円
大和ハウス工業884万円
住友林業872万円
積水ハウス799万円
タマホーム742万円
アグレ都市デザイン693万円
フジ住宅556万円
三栄建築設計524万円
ヒノキヤグループ466万円
ファースト住建453万円

※上場企業のみ

国税庁の2021年度「民間給与実態統計調査」によれば、日本人の平均年収は443万円(男性545万、女性302万円)と発表されています。

平均年収の内訳は、給与・手当が377万円(男性460万、女性262万円)と、賞与が67万円(男性86万、女性41万円)です。

また、同調査の業種別データでは、電気・ガス・熱供給・水道業の平均年収が766万円なのに対し、不動産業・物品賃貸業は426万円、建設業は511万円と少し低めです。

一方、転職サイトのデータでは、住宅業界の平均年収は427万円となっています。

【住宅業界の平均年収】

すべての年代427万円
20代375万円
30代487万円
40代523万円
50代578万円

参照:転職サイトdoda

住宅業界の仕事は主に設計・施工管理・営業に分類されます。

新卒や業界未経験者が就職する場合は、設計・施工管理なら建築、機械、電機系学部の出身者が有利です。経理事務は他の業種と同様、簿記など一般的な会計資格が評価されます。

住宅業界への転職・就職で有利な資格は?

住宅業界で有利な資格

ここからは住宅業界に転職・就職する際に有利な資格を紹介します。

建築士(1級・2級・木造建築)
設計から工事監理までを行う国家資格。大手企業は2級建築士を採用条件としていることが多い。

建築施工管理技士(1級・2級)
工事現場の工程・品質・安全を管理する責任者。国家資格。

電気工事士(1種・2種)
配線図通りに電気設備の工事を行う国家資格。

宅地建物取引士
不動産取引だけでなく、建築基準法の知識も身に着くため、営業でも技術職でも役に立つ国家資格。

・FP技能士(ファイナンシャルプランナー)
顧客に住宅ローンや税金のトータルアドバイスができる。国家資格のFP技能士(1〜3級)と民間資格のAFP・CFPがある。

・住宅ローンアドバイザー
住宅ローンに特化して税金も含めてアドバイスできる民間資格。営業職であれば、肩書き自体が顧客へのアピール材料になる。

・福祉住環境コーディネーター(1級・2級・3級)
高齢者や障がい者が暮らしやすい環境を提案する民間資格。顧客のケアマネージャーと自社の建築士の間に入り、設計や住設設備のアドバイスを行う。

・インテリアコーディネーター
顧客に住宅のインテリアテーマ、家具や壁紙、住宅設備などのアドバイスができる民間資格。

今後役に立つ新しい資格

・DX検定
DXのビジネストレンドやITトレンドの最先端知識を認定する資格。スコアによってスタンダード、エキスパート、プロフェッショナルの認定証が発行される。

・デジタルトランスフォーメーション検定
DXのスキルを認定する資格。クラウド、セキュリティ、AI、IoT、ビッグデータへの理解を証明する。

・+DX認定資格
DXの基本的な知識を認定する資格。

・スマートマスター
IoT、ZEH、HEMSの知識を有し、顧客に合わせたスマートハウスの構築を、行政手続きを含めてアドバイスする資格。

・SDGsハウジング・プランナー(旧ZEHアドバイザー)
ZEH住宅の基準、施工ポイント、法律、補助金や税金についてアドバイスする資格。

住宅業界の今後についてのまとめ

日本の人口は減り続けているため、劇的に住宅への需要が増えることは考えられません。しかし、新型コロナウイルスの影響で「今の暮らし」に対する関心はむしろ高まっています。

今後の住宅業界は、快適なテレワーク環境と高齢者や障がい者に優しいスマートハウスが定番となっていくでしょう。

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