アーク溶接はビルなどのスチールを扱う現場であれば作業をよく見かけます。
さて、アーク溶接は電気を使う仕事なので、感電などのリスクを伴う仕事です。しかも、扱う電流は生命にも関わる危険なレベルです。
そのため、専門的な知識も必要で、素人が簡単に手を出せるものではありません。
実際、アーク溶接には資格があります。
では、アーク溶接の業務には資格が必要なのでしょうか。更に言えば、アーク溶接は免許なしでは罰則があるのでしょうか。
そこで、ここではアーク溶接について、業務内容や資格、そして資格なしでも作業は可能なのかについて解説します。
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目次
アーク溶接とは
溶接は金属を高温に熱して溶かし、溶けた部分を溶かしながら接合する手段です。
さて、アーク溶接の原理は、金属を溶かす熱源として「アーク」と呼ばれる放電現象を利用するもの。2つの金属をピッタリと合わせ、その部分をアークで溶かして接合させるイメージです。
さて、金属は溶かせば勝手に接合してくれるかと言うと、必ずしもそうではありません。例えば、溶けた状態の金属であれば、そこに空気があると酸化や窒化が起こり、溶接不良を起こす場合があるのです。
当然ながら、そのような溶接では接合部分の強度が確保できないため、危険です。
そのため、アーク溶接にはシールドガスというガスを使います。ガスで溶接部を覆い、空気に触れさせないようにして溶接を確実にするのです。
アーク溶接のメリット
アーク溶接は次の点が主なメリットです。
- 効率よく作業ができる
- 野外での作業に向いている
- 安価でコンパクトな溶接機が多い
このメリットは他の溶接方法と比較するとハッキリと分かります。
例えば、ガス溶接は炎で金属を接合する手段ですが、アーク溶接と比べて溶接の速度が遅いです。また、薄い材料の接合には向きません。また、屋外では風の影響を受けることもあります。
その点、アーク溶接であれば作業効率が良く、屋外でも問題ありません。しかも、薄い鋼板も使えます。そして、溶接機そのものがコンパクトで扱いやすく、しかも安価なので導入がしやすいのです。
アーク溶接のデメリット
アーク溶接の主なデメリットは次の2点です。
- きれいに仕上げることが難しい
- 高い技術力が必要
溶接は「溶かして接合する」方法なので、形状をきれいにすることが困難です。特に、アーク溶接は溶接棒を使うので玉になる場合や、形状が荒れる場合があります。
また、作業者に技術力が要求されることもデメリットと言えるでしょう。
アーク溶接は接合部分に溶接棒でアークを発生させて接合させるのですが、その時に溶接棒も接合部分に溶け込みます。しかし、技術力に欠けた人が作業を行うと、溶接棒がくっついてしまったり、穴が開いてしまいます。
また、電流値を材料に合わせて適切にしなければいけません。電流管理も簡単ではないのです。
アーク溶接の種類
アーク溶接には次の2種類があります。
- 消耗電極式溶接
- 非消耗電極式溶接
両者の違いは電極の構造です。
消耗電極式溶接は溶接棒やワイヤーなどを電極にして、その電極自体が溶接されながら消耗されます。
その一方で、非消耗電極式溶接は主にタングステン製の電極を用いる方法。電極自体は消耗されません。そのため溶加材という溶接棒を別に使います。
ただし、それぞれの方法は更に細分化されるので、ここでは両者の詳細を解説しましょう。
消耗電極式溶接
まずは消耗電極式溶接です。
主な溶接方法としては次の3種類が挙げられます。
- 被覆アーク溶接
- マグ溶接・ミグ溶接
- エレクトロガスアーク溶接
各溶接方法の特徴は次の表の通りです。
種類 | 特徴 |
被覆アーク溶接 | フラックスと呼ばれる被覆材で覆った溶接棒を電極として使うのが大きな特徴です。溶接の際には被覆材がシールドガスになって溶接部を保護します。そのため、他の溶接のように別にガスを供給する必要はありません。 |
マグ溶接・ミグ溶接・CO2溶接 | マグ溶接とミグ溶接は溶接にワイヤーを使い、溶接部にシールドガスを別に供給する溶接方法です。ワイヤーを使用するため、溶接棒を交換する手間が必要ありません。そのため、効率よく溶接ができます。尚、溶接方法はマグ溶接・ミグ溶接・CO2溶接がありますが、違うのがシールドガス。マグ溶接はアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスと炭酸ガスの混合気体、ミグ溶接は不活性ガス、CO2溶接には炭酸ガスを用います。 |
エレクトロガスアーク溶接 | エレクトロガスアーク溶接は船舶をはじめとする大型構造物に使われる溶接です。方法としてはワイヤーと別供給のシールドガスを使用します。尚、厚板の溶接をメインとするため、大電流が使える電源が必要です。 |
非消耗電極式溶接
次は非消耗電極式溶接です。
溶接方法としては次の2種類が挙げられます。
- ティグ溶接
- プラズマ溶接
溶接方法の特徴は次の表の通りです。
種類 | 特徴 |
ティグ溶接 | ティグ溶接はタングステンの電極でアークを発生させ、その熱で母材を溶かして接合する溶接です。溶接棒やワイヤーなどを電極に用いないのが特徴で、別に溶加材を使います。また、シールドガスとして使うのはアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスです。尚、ティグ溶接はアークも安定しています。そのため、スパッタはほとんど発生しません。 |
プラズマ溶接 | プラズマアーク溶接はプラズマアークによる溶接です。電極にはタングステンが使われます。大きな特徴はアークを広げずに溶接が可能な点、そして不活性ガスをイオン化してアーク電流の導体となる点です。そのため、他よりもエネルギーの高いアークができます。また、その分アークの広がりは絞られ、ビード幅が狭く、ゆがみも少なくて済みます。しかもスパッタが発生しないのもメリットです。 |
尚、溶接部分はきれいに仕上がることが望ましいのですが、スパッタの飛ぶ溶接では困難です。
その点、ティグ溶接はスパッタが少なく、プラズマ溶接はスパッタの発生がありません。大きなメリットと言えるでしょう。
アーク溶接は資格なしでもできる?
冒頭に挙げたように、アーク溶接は電気を使う仕事なので危険です。そのため、アーク溶接には資格があります。
それでは業務を行うにあたっては資格がなければいけないのでしょうか。
実は、資格そのものが無くてもアーク溶接の作業は可能で、法的にも問題はありません。
ただし、将来的に溶接の仕事を増やそうとする人の場合は資格を取っておいた方がベターです。資格があれば技術力のアピールにもなりますし、仕事を取る面でもプラスの要因になるからです。
アーク溶接作業資格の取得方法と難易度
アーク溶接の資格は国家資格です。しかし、講習の受講で取れる資格のために敷居は低く、ほぼ100%取れます。
また、資格には更新が必要なものが多いのですが、アーク溶接の場合は更新の制度がありません。そのため、1回取っておけば長く務めることが可能です。
そして、特別教育には学科と実技がありますが、3日ほどで終わります。講習となる会場は商工会議所などの一般施設が多く、受講の費用も安いです。
取るのがやさしく、長く使える点は魅力的と言えるでしょう。
溶接に関するその他の資格
ここまでアーク溶接の種類とアーク溶接作業者について述べましたが、それ以外にも資格はあります。
そのため、将来的に溶接の仕事に携わろうとするならば、やはり資格があった方がベターでしょう。対外的な技術力のアピールとなり、仕事を取る上で有利になるからです。
そこで、ここでは溶接に関係する代表的な次の資格を取り上げます。
- 溶接技能者
- 溶接作業指導者
- 溶接管理技術者
- ガス溶接技能者
それぞれの資格について解説しましょう。
溶接技能者
溶接技能者の資格は、JISをはじめとする検定試験規格にもとづいた試験によって認証されるものです。
単なる溶接工程だけでなく、品質管理や溶接機器のメンテナンスも含まれます。
資格は対象とする材料や溶接方法によって区分があり、取得の難易度も変わります。
溶接作業指導者
溶接作業指導者は溶接と溶接に関係する作業を監督し、助言するための資格です。
作業工程や設計に関する指導を行いますので、現場のリーダーとなる上で役立つ資格とも言えるでしょう。
資格取得のためには講習を筆記試験がありますが、合格率はほぼ100%です。
溶接管理技術者
溶接管理技術者は溶接の資格の中でもトップレベルに位置する資格です。取得は難しいです。
資格には「特別級」「1級」「2級」があり、有効期限は5年。期限内に再認証審査を受けることで資格の更新ができます。
尚、官公庁が発注する工事には溶接管理技術者の常駐が必要です。それだけに需要のある資格と言え、将来性があります。
ガス溶接技能者
ガス溶接技能者はガス溶接に関係する国家資格です。
ガス溶接は、ガスを扱うための容器や吹管、圧力調整期や安全装置などの扱いまで要求されます。可燃性ガスを扱わなければいけないため、独自の技術が必要なのです。
資格の取得には講習と実技、そして試験を受けなければいけません。
ただ、取得の難易度は高くないと言われています。
アルミニウム溶接技能者
アルミニウム溶接技能者はアルミニウム合金の溶接に関する資格です。
アルミは鉄鋼とは性質が異なるので、違った技術が必要です。
資格には基本級と専門級の2種類があります。取得は比較的簡単と言われています。
ボイラー溶接士
ボイラー溶接士はボイラーの製造や修理に関係する資格です。普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士の2種類があります。
試験の合格率は概ね60~70%。難易度は比較的高いです。
溶接の資格が活かせる業種や業界は?
溶接は金属を扱う現場であれば活躍する場面は多いです。
活かせる業種としては製造現場や工事現場がメインです。業界としては、建築をはじめ、自動車や造船、土木などがあります。
就職先としては小規模の加工場から大手メーカーまで、実に幅は広いです。
今後も金属を扱う現場は全国にあるため、溶接の仕事は無くなりません。資格は将来的にも活きることでしょう。
まとめ
アーク溶接の業務内容・資格の種類などを取り上げて解説しました。アーク溶接の仕組み、そして溶接作業について把握できたことでしょう。
また、資格の取り易さや有用性に注目した人もいるのではないでしょうか。
アーク溶接は鉄鋼を扱う現場が多いので、今後も引き続き使われます。専門の技術者の活躍の場はこれからも多いと思われます。溶接免許の需要においても有望と言えるでしょう。