
「トランシットとはそもそも何のこと?」
「トランシットの使い方を詳しく知りたい……」
建築業界に入ったばかりでトランシットのことがわからない人もいるでしょう。
トランシットは角度を計測する機械で、建築・土木の仕事において欠かせません。トランシットにはいくつか種類があるため、用途や特徴を把握しておくことも重要です。
本記事では、トランシットの概要から種類、使い方、注意点などを詳しく解説します。
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目次
トランシットとは
トランシットとは、建築や土木現場において、角度を正確に測るための機械のことです。
建築現場では、基準点からの高低差や角度の違いが非常に重要になります。1mmの角度のズレでも、距離の長い建築物にとっては何m・何十mものズレが生じてしまいます。
そのため、トランシットを使って正確な角度を測る作業は、建築や土木現場において非常に重要な役割があるのです。
セオドライトとの違い
トランシットと同じように、角度を測量する機械に「セオドライト」があります。
基本的にどちらも角度を測定するための機械であり、役割に大きな違いはありません。ですが、開発された国に違いがあります。トランシットがアメリカで作られているのに対して、セオドライトはヨーロッパで作られています。
アメリカで開発されたトランシットのほうが、使いやすさを重視しているのがポイントです。どちらも同じ用途から、近年ではセオドライトに統一される傾向にあります。
光波との違い
光波とは、角度ではなく「距離」を測るのに用いられます。
任意で決めた基準点から光を放ち、反射してきた光を計測することで直線的な距離を測ります。しかし、光波では距離を測れても角度が測れないため、建築・土木の現場では、光波とトランシットを組み合わせた「トータルステーション」と呼ばれる機械を使用するのが一般的です。
測量に関しては、以下の記事も参考にしてください。
トランシットの種類
トランシットの種類には、以下の3つがあります。
- レーザートランシット
- デジタルトランシット
- 光学トランシット
それぞれ詳しく解説します。
レーザートランシット
レーザートランシットとは、レーザー光線を発射して角度を計測する機械のことです。
主にトンネル工事で使用され、方向制御や墨出し、通り出しと呼ばれる作業において使用されます。ただレーザーを発射するだけではなく、集光ビームと平行ビームの使い分けができたりレーザー出力の多段階調整ができたりするなどさまざまな機能があります。
高精度な計測によって角度を出せるのがレーザートランシットの特徴です。
デジタルトランシット
デジタルトランシットとは、前後左右の傾きを測る際に用いられる水平儀のことです。
任意で決めた点と点の間の水平角を自動で計測できます。デジタルトランシットには、小口径のレーザーを発射することで長距離の角度を簡単に測れるものから視準軸方向に発射できるものなどがあります。そのため、墨出し作業を一人で行え、効率的な作業を実現可能です。
デジタルトランシットは、薄暗い場所において200mまで照射可能であったり晴天の屋外でも50mまで照射できたりなどの特徴があります。
建築現場で行われる作業の墨出しに関しては、以下の記事を参考にしてください。
光学トランシット
光学トランシットとは、分度盤の角度情報をもとに、光学で拡大し読み取ることで角度を測る機械のことです。
求心望遠鏡を用いた覗きやすいものや、操作つまみ・複軸機構・望遠鏡気泡管・光波距離計搭載があるなど、性能もさまざまです。作業場の状況や人数によって使い分けることで、より効率的な計測作業が可能になります。
トランシットのセンサーの種類

トランシットを使って角度を読み取る方式には、以下の2つがあります。
- アブソリュート方式
- インクリメンタル方式
それぞれ詳しく解説します。
アブソリュート方式
アブソリュート方式とは、センサーを用いて測定して、分度盤に書き込まれたパターンを読み取って角度を算出する方法です。
基準点から確認したい場所までを一気に角度を分析するため、絶対角度検知タイプともいいます。
インクリメンタル方式
インクリメンタル方式とは、細かな角度の変化を一つずつ計測する方法です。分度盤には黒線が等間隔で刻まれ、基準値から線がいくつカウントされたかを確認し、それによって動いた角度を読み取ります。
アブソリュート方式の絶対位置での読み取りとは反対に、インクリメンタル方式は相対位置での読み取りです。
トランシットの使い方
トランシットを使う際には、以下の手順で観測を行います。
- 水平に設置する
- 赤外線レーザーをセットする
- 測定地点を観測する
それぞれの手順を詳しく解説します。
水平に設置する
トランシットの使用手順の1つ目は、水平に設置するです。
最初の設置段階でズレが生じていると、正しい角度を計測できません。トランシットの三脚部分を安定した場所に設置・固定し、機械に取り付けられた水平器の気泡の位置を調整し水平を保ちます。
赤外線レーザーをセットする
トランシットの使用手順の2つ目は、赤外線レーザーをセットするです。
トランシット本体の電源をつけ、角度を計測したい場所に赤外線レーザーを発射します。望遠レンズを覗きながら、正しい位置にレーザーが当たっているかを確認し調整します。ポイントがズレている場合は、トランシットを回転させて正しい位置に当たるようにしましょう。
測定地点を観測する
トランシットの使用手順の3つ目は、測定地点を観測するです。
角度を計測するには、基準となる点をセットする必要があります。基準位置を決めたら、レーザーを当てて0地点としてセットします。その後、観測したい点に向けてレーザーを当てることで、0セットした基準点からの水平角度が計測可能です。
トランシットを使用する際の注意点
トランシットを使用する際の注意点は、以下の3つです。
- 水平と垂直を正確にとる
- 目視できる距離を確認する
- 定期点検する
それぞれ詳しく解説します。
水平と垂直を正確にとる
トランシットで正確な角度や距離を計測するには、安定した場所に設置して水平と垂直を正確に取ることが重要です。
水平や垂直が正しく設置されていなかったり、計測途中でズレたりすると、正確な角度が算出できません。
不安定な場所に設置してしまうと、少しの力や軽く足が当たっただけでも、機械の位置がズレてしまう可能性があります。なるべく平坦で安定した場所を見つけて設置しましょう。
目視できる距離を確認する
トランシットを扱う際は、正観測と反観測という方法を1回ずつ行い計測結果を算出します。
正観測とは、基準地点を決めて2点や3点ほど時計回りに観測をした場合のことで、一方、反観測とは最終地点の観測をした後に反時計回りに基準地点まで観測をすることです。
ここで、観測地点を事前に目視で確認していなければ、機材の移動が発生する場合もあります。そのため、目視できる距離を事前に確認しておくことで、据えつけの回数を減らせて業務効率を上げられます。
定期点検する
精密機械であるトランシットは、使用頻度や時間の経過によって劣化してしまうため、定期的な点検が欠かせません。
定期点検を怠ると、算出結果に影響してしまい正確な計測ができなくなります。日頃から丁寧に扱うようにして、定期的に点検を行うようにしましょう。
トランシットについてよくある質問
トランシットについてよくある質問は、以下の通りです。
- トランシットは何に使用するのか
- トランシットはいつ使うのか
- トランシットは距離を測定できるのか
- トランシットとレベルの違いは何なのか
- トランシットの正式名称は何なのか
それぞれ詳しく解説します。
トランシットは何に使用しますか?
トランシットは、建築や土木現場において角度を正確に測るための機械です。
建築現場では、1mmの角度のズレが後々、何m・何十mという大きなズレにつながるため、非常に重要な作業といえます。
トランシットはいつ使うのですか?
トランシットは、建築・土木の現場において「角度」を測りたい時に活用します。
例えば、トンネル工事を行う際に正しい位置を貫通させるために、方向制御や墨出し作業を行う際にトランシットを利用します。
トランシットは距離を測定できますか?
トランシットは角度を測る機械であり、距離は測れません。
距離を測る場合は、光波測量機やトータルステーションを活用する必要があります。
トランシットとレベルの違いは何ですか?
レベルとは高さや高低差を測ることです。
例えば、道路と土地の高低差を測る際には、レベル測量を行います。
トランシットは角度を測ることで、レベルとは高低差を測るという違いがあります。
トランシットの正式名称は何ですか?
トランシットという言葉が正式名称ですが、セオドライトや経緯儀とも呼ばれています。
また、トランシットには以下の3種類があります。
- レーザートランシット
- デジタルトランシット
- 光学トランシット
レーザートランシットとは、レーザー光線を発射して角度を計測する機械のことです。デジタルトランシットは、前後左右の傾きを測る際に用いられる水平儀を指します。光学トランシットは、分度盤の角度情報をもとに、光学で拡大し読み取ることで角度を測る機械です。
それぞれでメリットがあるので、適切なものを使用しましょう。
まとめ
本記事ではトランシットについて、概要から主なトランシットの種類、使い方、注意点などを詳しく解説しました。
トランシットは角度を計測する機械であり、建築・土木業界で働く際には使用する可能性が高い機材といえます。本記事を参考にトランシットの基本情報を抑えておきましょう。
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