振動工具取扱作業者とは?講習の内容・必要性を解説

振動工具取扱作業者安全衛生教育とは、現場で振動工具を扱う人の健康を守る目的で作られた法定教育です。労災事故が特に多い建設現場で振動工具を扱うための必須資格といえます。

この記事では、振動工具取扱作業者安全教育の概要や必要とされている理由、起こり得る振動障害の概要、カリキュラムや受講方法、受講のメリットについて解説します。

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振動工具取扱作業者はどんな教育?

振動工具取扱作業者とは、労働安全衛生法に基づいた安全衛生教育を修了したものを意味します。そもそも「振動工具」とは何か、安全教育が必要な理由を理解したうえで、受講を検討しましょう。

そもそも「振動工具」とは?

振動工具とは名前のとおり、建設や解体業などで使われる工具で、使用時に大きな振動を使用者及び周囲に起こすものです。

具体的には、電動ドリルやハンマー、インパクトレンチなどが挙げられます。

振動工具取扱作業者の安全衛生教育が必要な理由

振動工具取扱作業者の安全衛生教育が必要とされる理由は、振動障害が起きる可能性があるためです。人は強い振動を受けると、血流や神経の働きが悪くなりさまざまな症状を引き起こします。

具体的には、以下のような振動工具障害が起きる可能性があります。

  • 運動器障害
  • 末梢循環障害
  • 末梢神経障害

運動器障害とは骨や関節に起きる障害で、指や手、ひじなど工具に近い場所に痛みを発生させます。また、振動工具の長期的な使用により骨や関節が変形し、神経麻痺を引き起こしたり、手が変形することもあります。

末梢循環障害とは、末端に血液が流れなくなる血流障害です。寒い冬に爪が真っ白になった経験があると思いますが、これが常時発生するようになります。振動によって血流が悪くなり、手の指が真っ青になったり、冷えや痺れ、痛みを引き起こす障害です。

末梢神経障害とは、振動が原因で末梢神経に異常をきたす障害の1つです。手足が痺れたり、感覚が鈍って細かな動きができなくなったり、麻痺を引き起こすこともあります。

末梢神経は人の繊細な手の動きを司る神経で、この神経に異常が起きると日常生活に支障をきたしかねません。

実際に振動障害による労災者の数は非常に多く、厚生労働省のデータによると以下の業種で毎年新規で振動障害による労災が認定されています。

業種平成29年度平成30年度令和元年令和2年度令和3年
林業3524242722
鉱業 (採石 業以外 ) 4631342415
採石業68444
建設業(土木を含む)139137150146121
製造業3230333230
その他3351403629
合計291281285269221

引用:令和3年度業務上疾病の労災補償状況調査結果|厚生労働省

振動障害で労災認定を受けたのち、1年以上療養を続けている人は5,000名以上と言われています。

以上のように、振動工具が引き起こす障害は作業者の日常生活に影響を及ぼすものです。また建設現場では、振動工具による事故も起こり得る環境です。作業者や周囲の安全のためにも、振動工具取扱作業者の安全衛生教育が必要です。

振動工具取扱作業者安全衛生教育のカリキュラム

振動工具取扱作業者安全衛生教育の修了者になるには、一定のカリキュラムをこなす必要があります。対象者や教育の内容、受講方法を紹介します。

振動工具取扱作業者安全衛生教育の対象者

振動工具取扱作業者安全衛生教育の対象者は、振動工具を扱う人が対象です。しかし、一部対象外になる工具がある点に注意しましょう。

工具の種類工具の例
内燃機関を内蔵する工具
(可搬式のもの)
エンジンカッター
ブッシュクリーナー
ピストンによる打撃機構を有する工具コンクリートブレーカー
リベッティングハンマー
コーキングハンマー
ハンドハンマー
ベビーハンマー
スケーリングハンマー
ピックハンマー
チッピングハンマー
電動ハンマー
さく岩機
多針タガネ
携帯用皮はぎ機等の回転工具携帯用皮はぎ機
サンダーバイブレーションドリル
携帯用タイタンパー等の振動体内蔵工具携帯用タイタンパー
コンクリートバイブレーター
締付工具インパクトレンチ
往復動工具バイブレーションシャー
ジグソー
その他携帯用研削盤、スイング研削盤その他手で保持し、又は支えて操作する型式の研削盤
(使用する研削といしの直径が150㎜を超えるものに限る。)
卓上用研削盤又は床上用研削盤
(使用するといしの直径が150㎜を超えるものに限る。)

引用:チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針について

なお、チェーンソーや芝刈り機については、本教育の対象外となります。チェーンソーや芝刈り機については、「チェーンソーによる伐木等特別教育」、「刈払機取扱作業者安全衛生教育」という別のカリキュラムがあります。(参考:伐木作業等の安全対策の規制が変わります!|厚生労働省

振動工具取扱作業者安全衛生教育の内容

振動工具取扱作業者安全衛生教育の内容は学科のみで、全部で4時間の講習を受講します。テーマは3つに分かれており、振動工具の基礎知識や振動障害についての知識、および関係法令を学ぶカリキュラムです。

科目内容所要時間
振動工具に関する知識振動工具の種類と構造振動工具の選び方振動工具の改善方法1時間
振動障害及びその予防に関する知識振動障害の原因と症状振動障害の予防方法(※日振動ばく露量A(8)等に基づく振動障害予防対策)2時間半
関係法令等労働安全衛生法労働安全衛生法施行令等中の関係条項及び関係通達中の関係条項等30分

※日振動ばく露量A(8)等に基づく振動障害予防対策とは、1日あたりどの程度振動にさらされているかを計測する指標。ばく露量が多いほど振動障害が発生しやすくなります。

振動工具を扱うにあたり、振動工具の種類や構造などの基本的な知識から、振動障害についても深く学びます。実際の障害の写真事例なども用いて学習し、予防方法などの知識をつけて、安全に振動工具を扱えるようにするのが目的です。

また、付随して安全衛生法などの関連法令についても30分受講しなければなりません。

カリキュラムの受講方法

振動工具取扱作業者安全衛生教育の受講方法は、講習会への参加もしくはオンライン講習の受講です。講習会は労働局登録教習機関や民間企業が実施しています。

たとえば東京で受講する場合は『一般財団法人 中小建設業特別教育協会』や『コベルコ教習所』などで、振動工具取扱作業者安全衛生教育が受けられます。『一般財団法人 中小建設業特別教育協会』では出張講習も可能で、会社に講師を呼んで講義を受けることも可能です。

オンライン講習の場合は、インターネットを介して自由に動画教材を視聴する形式のため、近くで講習がない方や忙しい方でも受けやすいでしょう。

また、振動工具取扱作業者安全衛生教育は年齢や職業に関係なく誰でも受講可能です。

振動工具取扱作業者安全衛生教育を受講するメリット

振動工具取扱作業者安全衛生教育は「チェーンソー以外の振動工具取扱作業者」に対して義務つけられた法定教育であり、振動工具を使用する場合は必ず受講しなければなりません。しかし、義務だからと受けるのではなく、自分自身にメリットがあると理解して受講すればより一層知識が身につくでしょう。ここからは、振動工具取扱作業安全衛生教育の受講メリットを紹介します。

作業員の健康を守るために重要な知識が身に付く

振動工具取扱作業者安全衛生教育は、作業員の健康を守るために必要です。カリキュラムでは振動工具の基礎知識から、振動障害の症状と原因、対策まで学べます。振動が人体にどのような影響を及ぼすかを習得できるため、日頃の作業で作業員の健康に害がないように気をつけながら作業できます。たとえば、振動ばく露時間を短縮する工夫や、取扱いにより障害が発生するのを予防し、万が一症状が出た時の対処法を知っていれば、取り返しがつかないほど障害がひどくなる前に対処できる可能性があるでしょう。

難易度が低く取得しやすい資格である

振動工具取扱作業者安全衛生教育は、4時間の学科を受講するだけで修了者として認定されます。試験や実技などもないため、資格の取得難易度は低いです。振動工具取扱作業者安全衛生教育を持っていれば、振動工具を扱う職種につく際のアピールポイントにもなるため、キャリア形成においても有利です。学科を受けるだけで受講できる難易度の低さも、振動工具取扱作業者安全衛生教育を修了するメリットです。

現場や仕事が増えるチャンスになる

振動工具取扱作業者安全衛生教育の資格を取得しておけば、対応できる現場や仕事が増えます。ひとり親方として活動する場合にも、振動工具取扱作業者安全衛生教育を持っていることは有利に働くでしょう。また転職の際にも、資格欄に振動工具取扱作業者安全衛生教育取得者であると記載できるため、仕事のうえで役に立ちます。

振動工具取扱作業者になって正しい知識をつけよう

建設業を含む振動工具を扱う現場では、振動障害による労災認定者が毎年出ている状態です。全体として労災者は減少傾向ではありますが、重い障害で長期的な療養を強いられている人が5,000名以上出ています。

労災事故を防止し、作業員の安全を守るために振動工具取扱作業者安全教育は重要です。正しい振動工具や振動障害の知識を身につけましょう。

まとめ

振動工具取扱作業者安全衛生教育は、法定教育の1つであり振動工具を扱う場合は必ず終了しなければなりません。振動障害はさまざまな障害を引き起こし、ひどい場合は日常生活に支障をきたすものです。

振動工具取扱作業者安全衛生教育は4時間程度の学科の受講のみで取得できるため、早期に受講しておきましょう。正しい振動工具や振動障害の知識を身につけ、健康被害を防ぎながら建設業に従事してください。

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