KYとは?KYT(危険予知訓練)の具体例や基礎となる4ラウンド法の進め方を徹底解説!

職場や現場には、重大な事故や災害につながる危険が潜んでいます。いつもと同じ現場、いつもと同じ作業内容でも、その時の状況や従業員の健康状態などによって予期しない災害が発生することがあります。

このような事態を未然に防ぐためにも、KY(危険予知)活動は非常に重要です。本記事では、KY活動の基礎から具体的な進め方までを徹底解説します。

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KY活動とは

KY活動とは、危険(キケン)の「K」予知(ヨチ)の「Y」から取った略称で、職場や作業現場などで発生しうる事故や災害を未然防止するための活動です。

人間は誰でも、つい「うっかり」や、「ぼんやり」してしまいます。このようなミスが、職場や現場での事故や災害につながることが多々あります。

このような「不安全行動(ヒューマンエラー)」をできる限り減らし、従業員の健康と安全を守るためにKY活動は実施されているのです。

KY活動を実施するにあたっては、作業開始前に起こりうる事故・災害を想定し、どうすればそれを防げるかを考えて対策を立て、実行していくことが肝心です。

KYK(KY活動)と似た言葉にKYTがあります。KYTとは「危険予知訓練」の略称で、事故や災害につながる危険を予知し、解決のための対策を立てる能力を向上させる訓練のことをいいます。

危険予知訓練は危険のK予知のY訓練(トレーニング)のTをとってKYTと呼ばれています。

労働災害の引き金になる2つの不安全行動

労働災害が発生する原因は「不安全行動」にあるとされています。人間は、その特性から、決められた規則を守らないなど、誤った動作や行動を取りがちです。このような行動特性が事故や災害を発生させてしまうのです。

労働災害の発生原因となる不安全行動の要因には2種類あるとされており、それが「ヒューマンエラー」「リスクテイキング」です。

ここでは、ヒューマンエラーとリスクテイキングについて解説します。

ヒューマンエラー

ヒューマンエラーを簡潔に言い表すならば、「人間の行動が原因となるミスや失敗」です。

ヒューマンエラーの代表的な例としては、「うっかりしていた」「ぼんやりしていた」など、確認不足や見落としがあげられます。いわゆる、ポカミス(意図しない不注意な行動)と呼ばれるものですが、発生頻度が高い傾向にあるため注意が必要です。

その他にも、教育や訓練の不足、聞き間違いによる指示の誤解などもヒューマンエラの原因として知られています。

リスクテイキング

リスクテイキングとは、「自らの意志で危険な行動を選択すること」です。

仕事に慣れてきたことにより、「手間を省く」や「時短」など、作業の効率化を図る目的で作業手順を無視し、自己流のやり方で作業を行った結果、労働災害が発生してしまうような場面が例として挙げられます。

面倒だからといった理由や、簡単に終わるからといった理由から保護具なしで作業を行うような場面もリスクテイキングの一例と言えるでしょう。

労働災害の発生数

厚生労働省が公表している労働災害発生状況の「2023年(令和5年)速報値」によれば、労働災害のうち死傷災害発生状況は、8月7日現在で64,213人となっており、前年度より660人(前年と比較して1.0%)増加しています。

労働災害発生状況の中でも、特に発生件数が多い状況にあるのが建設業です。速報値で死傷災害発生状況は、前年と比較して2.4%減の6,911人(第三次産業を除き、業界別で3番目)となっていますが、死亡災害発生状況においては104人と突出している状況です。

建設業においては労働災害対策が急務であるといえるでしょう。

詳細については、陸上貨物運送事業労働災害防止協会の労働災害発生状況のページをご確認ください。

KYT(危険予知訓練)の実施によって目指すもの

作業者自身が労働災害の発生要因に対する感受性を高め、解決していく能力を向上させるトレーニングであるKYT(危険予知訓練)。

KYTの最重要目的は、労働災害発生の防止であることは間違いありませんが、その過程において以下の5点を目指すものとされています。

  1. 感受性を鋭くする
  2. 集中力を高める
  3. 問題解決能力を向上させる
  4. 実践への意欲を強める
  5. 安全先取り職場風土づくり

以下に、それぞれを解説します。

毎日、要所要所でKYTを行うことで、「危険だ」、「何か変だ」などの感覚が研ぎすまされるようになるでしょう。この研ぎすまされた感覚が感受性です。

KYTを通して危険を察知する感受性を鋭く保つことができます。

KYTは限られた時間内に職場や現場の危険を探し出し、その対策を考える訓練です。その過程において注意力を高めることができます。

さらに、KYTでは危険なポイントにおいて指差し確認などを実施するため、集中力が高まり、ぼんやりやうっかりといったミスを防ぐことが可能です。

KTYを実施することで、察知した危険について対策を考え、実行に移していく中で危険に対する問題解決能力の向上が図れます。

KYTは危険に対する話し合いを通じて、実践活動への意欲を強めることが可能です。やらされている活動ではなく、実践への意欲があって初めてKYTは有効なものになります。

KYTを行うことで、事故や災害について本音で話し合い、安全を先取りしたチームワークを生み出します。KTYにおける話し合いを通じて、明るく生き生きとした職場風土を形成することで、KYTが定着するのです。

KYT(危険予知訓練)の具体例

ここからは、KYTの具体例を見ていきましょう。KYTには、危険予知訓練用のシートを使った話し合いなどが行われますが、その中でも、ぜひ職場や現場で取り入れたい手法があります。それが、以下に挙げる3つの手法です。

  • 指差呼称
  • 指差し唱和・タッチ・アンド・コール
  • 健康確認

これらの3つの手法は、特に、ヒューマンエラーを減らす効果がある手法として知られています。それぞれ、どのような手法なのか以下で解説します。

指差呼称

指差呼称とは、KY活動の一環として行われ、確認すべき対象に対して、「〇〇ヨシ!」という掛け声と共に、対象をしっかりと確認しながら指差しを行う手法です。指差呼称は、行動の要所要所で行います。

ここでいう、行動の要所要所とは、危険を感じるポイントという意味で捉えておいてください。「ここは危険が潜んでいるのではないだろうか」と思われるポイントで指差呼称は行われます。

現場においては、一番よく使われている手法ですが、ヒューマンエラーの防止には重要な役割を果たしています。

特に、過去に重大な事故や災害が発生した場所ミスが起こりやすい場所で行うと、緊張感と集中力が高められ、より効果が得られるでしょう。

指差し唱和・タッチ・アンド・コール

作業者全員で行う、スローガンなどを指差して一斉に唱和を行うのが「指差し唱和」です。

一方、「タッチ・アンド・コールは、チーム」はチームを組む全員が、手を重ね合わせたり、組み合わせたりしてスローガンや目標などを唱和する手法です。

これら2つは取り組むべき目標に対して、作業者全員やチームが一丸となることで、気合を一致させ、現場の一体感を高めるために行われます。また、連帯感が強まるなど、チームワークを築くのに最適な方法といえるでしょう。

指差し唱和とタッチ・アンド・コールは、指差呼称のように、安全を確保し誤った作業をしないことを目的とした、単独で行うものではないという点で異なる意図を持って行われる手法です。

健康確認

作業前のKYTとして、作業者全員の健康確認も重要な手法です。体調が悪いまま作業に入ると、作業に集中できず重大なミスや事故を引き起こしかねません。

しかし、作業員が少ないなど、職場環境によっては作業者から体調不良を申告するのが難しい場合もあるでしょう。

そのような場合には、現場のチームリーダーや上司が積極的に声掛けをすることが重要です。

健康管理は、体調面だけでなく、メンタル面についても確認することが必要になります。

「昨日はよく眠れましたか?」

「食欲はありますか?」

「体に痛みはありませんか?」

このように声掛けを行い、話を聞いてあげるのも重要です。

健康確認を行った後に、指差し呼称を取り入れておくことで、より効果は高まるものと考えられます。

KYT基礎4ラウンド法

KYTには、「KYT基礎4ラウンド法」というグループで行う基礎的なトレーニングがあります。

KYTは、1人で実践するやり方(1人KYT)もありますが、職場内で複数のグループに分かれて行う場合にはKYT基礎4ラウンド法を試してみてください。

ここでは、KYT基礎ラウンド法の考え方や進め方について解説します。

KYT基礎4ラウンド法とは

KYT基礎4ラウンド法は、チームで危険の発見・把握や解決方法を話し合う中で危険予知意識や危険予知能力を高めることができる方法です。

KYT基礎4ラウンド法には、以下の事前準備が必要になります。

  • 5〜6人のチームに分かれる
  • リーダーや書記など、役割を決める
  • ボードや紙、筆記用具を準備する

人数が多くなりすぎると、スムーズな進行ができなくなるため注意しましょう。チームメンバーひとり一人の意見を聞けるようにすることが重要です。

KYT基礎4ラウンド法の進め方

KYT基礎4ラウンド法は、「現状把握」「本質追求」「対策立案」「目標設定」4つの段階に分かれており、この流れに沿って進行します。

第1ラウンド「現状把握」です。現状把握では、「どのような危険が潜んでいるか」を話し合います。写真やイラストを見ながら、メンバーで作業に潜んでいる危険を列挙しましょう。

現状把握では、質より量を意識してください。危険がありそうだと感じたものを次々と列挙しましょう。重要かどうかについての確認は、後のラウンドで行います。

第2ラウンド「本質追求」です。本質追求では、問題のポイントとなる本質を捉えるのが目的です。

第1ラウンドで列挙した中から、危険性が高いと思われるものに「◯」をつけ、その中でも最も重要なポイントだと思われるものに「◎」をつけます。選ぶ際には、グループ全員が納得できるように話し合うことが重要です。

第3ラウンド「対策立案」です。対策立案では、第2ラウンドで選択した危険性について「あなたならどうする?」と問いかけ、解決策を議論します。

どのようにすれば危険を回避できるかをメンバー全員が納得するまで話し合いましょう。あくまでも立案段階ですので出てきた意見を否定・批判するのではなく、受け入れることが肝心です。

第4ラウンド「目標設定」です。目標設定では、第3ラウンドで出た案の中から「私たちならこうする」という目標を設定します。

設定する際には、メンバー全員が納得するものを選ぶこと、すぐに実行に移せるものを選ぶことが重要です。実際に取り組めるものを設定することが目標設定のポイントになります。

まとめ

本記事では、KY活動の基礎知識から実施のためのトレーニング方法であるKYTについて解説してきました。

KY活動では、職場や現場における危険性を気軽に話し合える職場風土を作ることが重要です。

KY活動は、1つの現場でも足場や玉掛け、溶接などさまざまな場面で必要となります。現場で確実に実行に移せるように、一人ひとりが心がけるようにしましょう。

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