
「水道関係の配管工をする上で、転職に有利となる資格はあるのか?」
人が生きていくうえで必要なインフラの一つが、水道です。
上水道を各施設などに供給するための設備が給水設備であり、工事を請け負うには「給水設備工事主任技術者」の資格所持が必須となります。
この記事では、給水設備工事主任技術者の仕事内容や年収、取得の難易度などについて詳しく説明します。
専門性が高く転職に役立てられる資格取得を考えている方は、ぜひ最後までご一読いただき参考にしてみてください。
給水装置工事主任技術者とは?

給水装置工事主任技術者は、給水装置の工事をするために必要な国家資格です。
給水装置とは、水道事業者が敷設した配水管から建築物内や受水槽まで給水する配管や装置を指します。
給水装置にかかわる工事には、給水装置工事主任技術者の監督が必要です。
また給水装置工事事業者が水道事業者(主に市町村)から水道法に基づく指定を受けるために必要となるため、事業所には資格取得者が必須となります。
給水装置工事主任技術者は上水道のインフラ整備には欠かせない資格であり、業界内でも存在価値は高いといえるでしょう。
給水装置工事主任技術者の仕事内容
給水装置工事主任技術者のおもな仕事は、給水装置における工事の現場監督と施工管理です。
給水装置工事主任技術者は、給水装置工事における施工前の計画から現場の指導、水道メーターの交換や工事後のメンテナンスに至るまで、すべての工程に関与します。
給水装置の配管やメンテナンスに関しては、実際の作業をするよりも現場の施工管理に従事することが大半です。
現場によっては自分でも作業することもあるため、知識だけではなく一定以上の技術も持っていれば、働く上でさらに有利となります。
また1年以上の実務経験を積むと、管工事現場においての専任技術者・主任技術者として従事することも可能です。
給水装置工事主任技術者の年収相場は?

給水装置工事主任技術者の年収相場は、おおむね400万~700万程度となっています。
年収については地域差や企業の規模、経験などの要因で上下差が大きく、一概にいくらくらいというのは言いきれません。
しかし無資格の方と同条件で比較すると、資格があるとより上位の職務が発生するため、年収で100万くらいの差がでるのは事実です。
給水装置工事主任責任者には、現場作業以外に他の業者や元請けとの商談や折衝の仕事が発生するため、その仕事の分だけ年収に差が出ます。
資格手当のある企業もあり、資格を持っているのといないのとでは収入面で差が出るのは否めないといえるでしょう。
給水装置工事主任技術者に将来性はある?

給水装置工事主任技術者の資格を持っていれば、転職市場でも有利であると同時に、将来的な安定も見込める資格だといえるでしょう。
給水装置工事は、水道といった生活に欠かせないインフラを支える事業です。
また新規工事だけではなくメンテナンスもあるため、将来的に事業そのものがなくなるというのは、非常に考えにくいといえます。
資格については水道事業者から工事を請け負う際に必須のため、転職市場での求人は一定数見込めます。
また資格取得後に経験を積めば、その分さらに年収のアップが見込め、将来独立して開業することも可能です。
取得して5年で研修を受ける制度があり、常に新しい知識を更新する必要はありますが、資格取得によって転職市場での需要も将来性も比較的安定しているといえるでしょう。
求人数は企業の多さと比例して都市部に多く、本部が東京でも大阪・名古屋・福岡・北海道など、各地域に支店のあるような大企業も数多く見られます。
大企業と同様に、地域密着型企業の求人もかなりありますので、自分自身の考える条件に合ったところを検索してみるとよいでしょう。
給水装置工事主任技術者に向いている人は?

次のような特徴を持つ方は、給水装置工事主任技術者に向いているといえます。
向上心のある人
向上心のある方は、給水装置主任技術者に向いているといえるでしょう。給水装置主任技術者は取得してから経験を積み上げることで、さらに生かされる資格です。
また新たな技術や法律に対応するため、5年ごとに研修を受け、技術者証を更新することが推奨されています。
経験や知識を積極的に得てレベルアップしたいと常に考えている方にとっては、給水装置主任技術者はうってつけの資格となります。
マネジメント能力が高い人
マネジメント能力も、給水装置主任技術者にとっては重要なスキルです。
給水装置主任技術者は、現場の施工管理がおもな仕事となります。
技術上の指導や管理、計画に基づいた工程や品質の管理、安全管理など、多方面に目を行き渡らせて全体の把握をしなければなりません。
そういったマネジメント面が得意だという方にとって、給水装置主任技術者は向いている資格だといえます。
責任感のある人
給水装置主任技術者には、責任感も求められます。
給水装置主任技術者は、いわば現場の指揮監督といった立場での業務が中心です。
作業員の事故や工程の停滞など、不測の事態が起きた際にも責任をもって対処できる性格が必要です。
工事現場で発生したことの責任をすべて自分で負う必要はありませんが、責任を負う覚悟が一定以上求められます。逆にいえば、他責思考の方は給水装置主任技術者には向いていないと考えられます。
体力のある人
給水装置主任技術者には体力も必要です。
現場作業は比較的少ないため、体力は必要ないと考えられがちです。しかし他の業者との折衝や現場の調整・管理など、仕事量は現場作業よりも多くなるため体力を使います。
多忙な環境に耐えられる程度の体力は、給水装置主任技術者にとって必須となるでしょう。
給水装置工事主任技術者の資格を取得するメリット

給水装置主任技術者を取得するメリットとして、主に次の項目があげられます。
1.水道工事業者に欠かせない国家資格である
給水装置工事主任技術者は、市町村などの水道事業者から水道法に基づく指定(指定給水装置工事事業者)を受けるために必須の資格です。
水道工事をする企業においては事業所ごとに1名の専任が必要なため、資格を持っている方は働く上で非常に有利となるでしょう。
2.管工事の専任技術者になれる
資格取得後に管工事に関して1年以上の実務経験を経ると、一般建設業のうち「管工事」の専任技術者として従事できます。
管工事の専任技術者になると、水道工事以外の管工事の責任者にも就けるため、さらに仕事の幅を広げることが可能です。
建設業法では営業所ごとに専任技術者の配置が義務付けられており、配置されないと建設業として業務できません。
管工事をする企業には無くてはならない資格となりますので、転職時に持っていると役立ちます。また専任技術者は営業所への常駐が基本のため、体力的に衰えてきても業務に就けるという一面もあります。
3.専門性が高く実務能力の認められる資格である
給水装置工事主任技術者は水道工事に必須の資格であり、他の資格で置き換えることができません。
建設系の資格の中でも、給水装置工事主任技術者の資格で仕事を受注できる、専門性と難易度の高い資格です。
資格の所持によって自身の知識や技術の証明となり、収入アップの武器としても大いに利用できます。
4.転職時に役立つ資格である
給水装置工事主任技術者は、水道工事業者には欠かせない人材です。
そのため水道業界では好条件の求人が多く、転職時は他の方よりも有利に進められるでしょう。
また資格を持つことで公共のインフラ事業をはじめ、リフォーム業者やビル管理業者など、幅広い転職先が考えられます。
資格取得後に1年以上の実務経験があると、管工事の専任技術者としても転職できるため、さらに就職先の選択肢が広げられるでしょう
給水装置工事主任技術者の資格試験について

資格試験は基本的に年1回となっており、令和4年度は10月に実施されました。
試験の概要
給水装置工事主任技術者を受験するには「給水設備工事に関して3年以上の実務経験」の資格が必要となります。
職務経験は技術的な実務のみを指し、給水設備工事をする企業に勤務していても経理などの事務職の経験や、水道メーターの検針のみの業務は実務経験とみなされないので注意が必要です。
受験料は、令和4年度より全国一律で21,300円(非課税)となります。
試験は全国を「北海道、東北、関東、中部、関西、中四国、九州、沖縄」の8地区に分け、すべての会場で同一日程での実施となります。
試験内容
試験内容は、筆記試験のみとなります。
試験は全60問からなり、試験科目については次の通りです。
- 公衆衛生概論
- 水道行政
- 給水装置の概要
- 給水装置の構造及び性能
- 給水装置工事法
- 給水装置施工管理法
- 給水装置計画論
- 給水装置工事事務論
なお、管工事施工管理技士1級・2級を所持している方は「給水設備の概要」「給水設備施工管理法」の試験科目が免除されます。
試験の難易度
国家資格となった平成9年以降の全体の合格率は、36.8%となっています。なお、過去5年間の受験者数と合格者数、合格率は次の表の通りです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率% |
---|---|---|---|
令和3年 | 11,829 | 4,209 | 36.8 |
令和2年 | 11,238 | 4,889 | 35.6 |
令和元年 | 13,001 | 5,960 | 43.5 |
平成30年 | 13,434 | 5,066 | 45.8 |
平成29年 | 14,650 | 6,406 | 37.7 |
上記のとおり、合格率は例年35~45%程度と難易度は高めです。試験の合格基準は例年少しずつ異なっており、すべての条件を満たさなければ合格となりません。
令和3年度の基準は次の通りでした。
- 「給水設備の概要」「給水設備施工管理法」を除く6科目の合計が27点(40点満点)以上であること
- 全科目の総得点が40点以上(60点満点)であること(科目一部免除の受験者を除く)
- 次の各科目の得点が、それぞれに示された点数以上であること
公衆衛生概論 | 1点 |
水道行政 | 2点 |
給水装置の概要 | 5点 |
給水装置の構造及び性能 | 4点 |
給水装置工事法 | 4点 |
給水装置施工管理法 | 2点 |
給水装置計画論 | 2点 |
給水装置工事事務論 | 2点 |
上記の通り科目ごとに合格最低点が設定されているため、まんべんなく知識が必要となります。
「公益財団法人 給水工事技術振興財団」のページに過去5年間の試験問題が掲載されているので、受験前に確認して対策するとよいでしょう。
試験合格後の注意点

給水装置工事主任技術者試験に合格しても、免状を交付されないと給水装置工事主任技術者とは認められません。
「公益財団法人 給水工事技術振興財団 免状について」のページより申請用紙をダウンロードし、A4用紙に印刷して必要事項を記載して送付することで免状が得られます。
申請から手元に届くまでには2か月程度かかりますので、合格がわかった時点で早急に手配するようにしましょう。
また、令和元年より給水装置工事事業者の5年更新制度が導入されたことに伴い、資格の証明を求められた際に提示できる「技術者証」が発行されるようになりました。
技術者証の有効期限は5年となっており、現地研修もしくはeラーニング研修を受けて更新する必要があります。更新しなくても給水装置工事主任技術者の資格は剥奪されず、あくまで技術者証の有効期限が切れるという扱いとなります。
しかしながら給水装置工事事業者は5年ごとの更新が必要であり、有効期限の切れた技術者証は使えないことから、技術者証の更新は怠らずに実行するのが賢明だといえるでしょう。
まとめ
給水装置工事主任技術者の資格は、水道工事をする企業にとっては無くてはならない資格です。そのため水道工事の業界で転職を考える上では、非常に有効なカードとなるでしょう。
経験を積めば独立開業も視野に入れられ、取得によるメリットはかなり大きな資格だといえます。
受験には3年以上の実務経験が必要となり、取得の難易度も低くはありません。
もし受験資格を持っており、将来的に待遇のアップや独立を考えている方は、取得にチャレンジしてみるのもよいのではないでしょうか。