建築物の中でも特定建築物に指定される建物の調査を専門におこなう、「特定建築物調査員」。
世間的な認知度の高い仕事というわけではありませんが、非常にやりがいのある仕事なので、「特定建築物調査員になりたい」「特定建築物調査の仕事がしたい」と考えている方も少なくないかと思います。
この記事では、特定建築物調査員を目指す上で知っておきたい仕事の内容や年収相場、資格を取得するための講習の概要などについて解説していきます。
・公開 / 非公開求人多数掲載!
・転職後に収入380%の実績アリ!
・アドバイザーによるサポートも充実!
トントンでは様々な方に向けた求人を多数掲載!
初めての就職やキャリアアップのために適した企業に、
全て無料で応募可能です!
サイト掲載不可の
限定求人をご紹介!
転職サポートに30秒で無料登録!
お持ちのアカウントで登録
※個人情報保護方針をご確認の上、お進みください。
目次
特定建築物調査員とは
特定建築物調査員は、数ある建物の中でも特に重要な建物として政令によって指定されている建築物の検査や調査を行う仕事です。
学校や病院、デパートなどに備わっている防火設備や電気設備、換気設備、敷地構造などを細かくチェックして自治体に報告するのが、特定建築物調査員に求められる主な役割となっています。
特定建築物と混同されがちなものに特殊建築物がありますが、これらに違いはありません。
特定建築物にはもともと特殊建築物という名称が定められていましたが、2016年の法改正にともなって特定建築物に名称が変更されました。
特定建築物調査員の主な仕事内容
特定建築物調査員の仕事は多岐にわたりますが、主な仕事としてあげられるのが以下の5つの業務です。
- 敷地や地盤の調査・検査
- 建築物の外部の調査・検査
- 屋根や屋上の調査・検査
- 建築物の内部の調査・検査
- 避難施設の調査・検査
それぞれの業務について詳しく解説していきます。
敷地や地盤の調査・検査
「特定建築物調査員」と聞くと調査の対象が建築物のみとイメージしてしまいがちですが、実はそうではありません。
建築物以外の敷地や地盤も調査の対象となっています。
この項目で調査の対象になるものとしてあげられるのは、以下の6点です。
- 敷地
- 地盤
- 敷地内に設けられている通路
- 堀
- 擁壁
- 排水管などの配管
目視での調査が基本となっており、地盤沈下や傾斜など、敷地内の地盤に異常が見られないかをチェックしていきます。
地盤沈下などの異常が発生してしまっている場合、建築物の安全性が保てなくなってしまうため、調査結果を報告して工事を要請します。
また、敷地内の排水管のつまりなどについてもチェックし、衛生状態を適切な状態に保てているかどうかについて確認するのも特定建築物調査員の役割の一つです。
建築物の外部の調査・検査
建築物の外部の調査や検査も、特定建築物調査員が担う重要な仕事の一つです。
この項目では、以下の3点を重点的にチェックしていきます。
- 建物の躯体などの基礎部分
- 外壁
- サッシなどの窓まわり
建築物の外装部分が劣化し始めると、クラックと呼ばれる細かなひび割れが見られるようになったり、外壁材の剥がれ、破損などの劣化症状が発生するようになります。
木造の建築物の場合は木の腐食が進んでいることもありますし、サッシの変形や窓ガラスの劣化などについてもチェックしなくてはいけません。
建築物の外部の調査・検査は、目視やハンマーによる打診で行っていきます。
屋根や屋上の調査・検査
屋根や屋上の劣化は雨漏りなどの重大なトラブルにつながるため、特定建築物の調査では、屋根や屋上の調査や検査も行います。
チェックの対象となるのは、以下の5点です。
- 屋上
- 屋根材
- 屋根の基礎部分
- 板金などの鉄製の素材
- 釘など屋根材の固定に使用されているもの
屋上が設けられている建築物の場合、外壁と同様にクラックが発生することがあります。
そのクラックが雨漏りの原因となることも少なくないため、クラックが発生していないかどうかや、屋上の防水性能が衰えていないかどうかなどを確認します。
また、屋根材の剥がれや損傷も重要なチェックポイントの一つです。
棟板金など鉄製の素材が使用されている屋根は、屋根材の固定に使用されている釘などと合わせて腐食具合のチェックも行います。
建築物の内部の調査・検査
建築物の内部における調査・検査の対象としては、以下の6点があげられます。
- 内部の躯体
- 天井
- 壁
- 床
- 電気設備
- 空調設備
建物の内装に使用されている天井材や壁材、床材に剥がれや腐食、破損などの劣化症状があらわれていないかチェックし、必要があれば交換を要請します。
また、電気設備や空調設備などの設備まわりも重要なチェックポイントの一つです。
ここでも目視やテストハンマーによる打診で状態をチェックしていきます。
避難施設の調査・検査
学校や病院などの大きな建築物には非常口や避難施設などが設けられていますが、それらのチェックも特定建築物調査員の重要な仕事の一つになります。
避難経路が荷物などによって塞がれていないかどうかや幅員がしっかり確保されているかをチェックし、火災の発生につながりやすいものが置かれたままになっていないかなどについても確認していきます。
特定建築物調査員の主な勤務先
特定建築物調査員は、建築設備会社やビルメンテナンスなど建物のメンテナンスを行っている会社が主な勤務先となります。
建築設備会社やビルメンテナンスの会社は、建物の点検や整備などのサービスを提供している会社です。
営巣管理や衛生管理、保管管理などさまざまな業務を行っていますが、特定建築物調査員は、それらの会社に入社し、特定建築物の設備管理をメインに行うことになります。
特定建築物調査員の年収相場
特定建築物調査員の年収相場は350〜450万円程度となっています。
国税庁が公表しているデータによると、国内の給与所得者全体の平均年収が458万円となっているため、特定建築物調査員の年収相場は全体の平均と同じ水準か、全体の平均値よりも若干低いと言えます。
ただ、実際の給与水準は入社する会社によって異なるため、特定建築物調査員の年収が一概に全体の平均よりも低いと言い切ることはできません。
実際、求人サイトをチェックしてみると年収500万円以上の求人も掲載されていますし、年収700万円以上など高収入が見込める求人もあります。
特定建築物調査員の年収は企業や役職によって異なるので、高収入を目指すのであれば待遇面に注目しながら求人をリサーチするようにしましょう。
参考:
特定建築物調査員の取得方法
特定建築物調査員の資格を取得するには、登録特定建築物調査員講習を受けて、その後に実施される修了試験に合格する必要があります。
登録特定建築物調査員講習を受講する際の申込みの流れは以下のとおりです。
- 申込書類を準備する
- 受講資格証明書を作成する
- サイトにて申し込み情報を入力する
- 案内メールが届く
- 受講料の支払いを済ませる
- 受付完了
申し込む際は、52,800円の受講料が必要になるので注意してください。
登録特定建築物調査員講習の概要
登録特定建築物調査員講習は、特定建築物調査員の資格を取得する上で必ず受講する必要がある講習です。
講習では、特定建築物調査員として活動する上で必要な知識とされる以下のような内容について学ぶことになります。
- 建築学や建築計画、建築施工について
- 建築構造や建築材料について
- 建築設備や防火設備について
- 建築基準法について
- 防火や避難、火災現象について
WEBでの受講を選択した場合は、これらの講習をタブレットやPCで受講することになります。
一方、会場での講習を選んだ場合は、修了考査も合わせて4日ですべての内容を受講しなくてはいけません。
そのため、会場で受講する場合はスケジュール調整が必須になります。
登録特定建築物調査員講習の受講資格
登録特定建築物調査員講習は誰でも受けられるわけではありません。
受講するには、受講資格を満たしている必要があります。
最終学歴にともなう受験資格は以下のとおりです。
それぞれの資格でおこなえる工事の範囲の違いについては以下のとおりとなっています。
最終学歴 | 学科 | 実務経験 |
大学 | 建築学や土木工学、機械工学、電気工学に相当する学科 | 2年以上 |
夜間部を除く3年生の短大 | 3年以上 | |
2年生の短大 高専 | 4年以上 | |
高校 中等教育学校 | 7年以上 |
また、最終学歴に関わらず、規定の実務経験を満たすことで受験資格を得ることもできます。
実務経験に関連する受験資格について以下のとおりです。
それぞれの資格でおこなえる工事の範囲の違いについては以下のとおりとなっています。
建築に関する実務経験 | 11年以上 |
建築行政に関する実務経験 | 2年以上 |
消防吏員としての実務経験 | 5年以上 |
防火対象物点検資格者の実務経験 | 5年以上 |
甲種消防設備士としての実務経験 | 5年以上 |
登録特定建築物調査員講習の受講方法
講習の受講方法としては、「WEB受講」と「会場受講」の2種類が用意されています。
WEB受講は、PCやタブレットなどで講義を受けるタイプの受講方法です。
PCやタブレットに備わっているカメラで本人による視聴履歴の確認を行うという性質上、WEBカメラが備わっている端末を用意する必要があります。
また、講義はWEBで受講できますが、修了考査は会場で受ける必要があります。
会場受講は、各地の開催地で講義から終了考査までを通して受けるタイプの受講方法です。
どちらの方法で受講するかは人それぞれですが、より効率的に進められるWEB受講が推奨されています。
登録特定建築物調査員講習の修了考査
特定建築物調査員の資格を取得するには、講習終了後に行われる修了考査に合格しなくてはいけません。
講習で学んだ内容に関連する問題が30問出題され、20問以上正解することで合格となります。
不合格となってしまった場合は、次年度に限り修了考査のみを受けることも可能です。
登録特定建築物調査員講習の合格率と難易度
特定建築物調査員になるには登録特定建築物調査員講習を受け、修了考査に合格しなくてはいけません。
その際に気になるのが合格率と修了考査の難易度についてですが、直近5年間の修了考査の合格率は以下のとおりとなっています。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2018年 | 752人 | 566人 | 75.3% |
2019年 | 659人 | 536人 | 81.3% |
2020年 | 532人 | 363人 | 68.2% |
2021年 | 587人 | 457人 | 77.9% |
2022年 | 606人 | 428人 | 70.6% |
合格率の平均値は約74%と非常に高いため、難易度は高くはありません。
講習をしっかり受けていれば合格できるレベルだと考えられます。
ただ、毎年2〜3割の受講者が試験に落ちているのも事実なので、講習を受けながら重要だと思われる内容はメモを取るなどして、修了考査にきちんと合格できるようにしましょう。
まとめ
特定建築物調査員は、学校や病院、デパートなど、国が指定した特定建築物の調査を行う上で必要になる国家資格です。
国家資格と言っても、講習を受けて修了考査に合格することで資格を取得できるタイプの資格で、平均合格率も74%ほどとなっているため、決して取得するのが難しい資格というわけではありません。
講習を受講するのに50,000円程度の受講料こそ必要になりますが、講習をしっかりと受けていれば高い確率で合格できる資格なので、特定建築物調査員に興味がある方は、ぜひ講習を受講して資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか?