
「支保工はどんな仕事?」
「支保工と足場工と違いは?」
建設現場で目にする大きな骨組みは、支保工もしくは足場工です。今回の記事では支保工と足場工の違いがスッキリわかるように、それぞれの役割と特徴を解説します。必要な資格についても説明しているので、興味のある人はぜひ参考にしてください。
支保工とは?支保工と足場工の違い
最初に支保工と足場工の違いについて解説していきましょう。どちらも骨組みで見た目も似ているので同一視されやすいですが、役割はまったく違うものです。
支保工は構造物や土壁といった対象物が崩れないように支える仮設設備、足場工は高所作業員の安全を支える仮設設備です。
支保工とは
橋やトンネル、ビルといった構造物、山や岩といった自然の対象物は、全体で荷重を分散して形を維持しています。建設工事はそのバランスを崩す作業ですから、ともすると一気にすべてを崩壊させてしまう恐れがあります。
しかし、支保工が対象物の一部を支えることで、全体のバランスが維持され、事故や災害を防いで建設工事の続行を可能にします。対象物にはコンクリートや土壁、岩などがあげられます。
足場工とは
建設現場では、大工、溶接、塗装など多くの職人が高所作業を行います。よじ登って作業はできないので、安定した体勢で作業・移動できる足場を設置するのが足場工です。なお、足場工は足場鳶、足場屋とも呼ばれます。
また、足場工には作業員の転落防止だけでなく、工具・材料の落下防止という役割も担っています。特に、木材や鉄骨が落下すると下にいる人が大ケガをするため、周囲は飛散防止ネットで覆われることが多いです。
足場の基礎知識
2023年3月に労働安全衛生規則が改正されました。改正された内容は以下の通りです。
規則 | 改正内容 | 施行時期 |
---|---|---|
一側足場の使用範囲の明確化 | 原則、幅が1m以上ある場所は本足場を組まなければならない | 2024年4月施行 |
足場の点検者の指名 | 足場の点検者をあらかじめ指名しなければならない | 2023年10月施行 |
点検記録項目の追加 | 点検実施後は点検者の名前を記入して記録を残さなければならない | 2023年10月施行 |
足場は全部で4種類
足場にはさまざまな種類があり、工事の規模や建物や対象物の状況に応じて使い分けられます。次からは代表的な4つの足場の仕組みを説明します。
- 単管足場
- 枠組足場
- くさび緊結式足場
- 吊り足場
単管足場
鋼管のパイプに、クランプやボルトなどの止め金具を組み上げて作る足場です。組み立ての自由度が高く、形状を変化させられるのがメリットです。住宅街のような狭い場所にも設置できることから、建設現場だけでなく、一般のDIYで使われるケースもあります。
枠組足場
枠組足場は、ジャッキ・筋交(すじかい)・鋼製布板・アームロックなどの部材を組み込んで作る足場です。強度が高いため、高層建築の工事にも使えるのがメリットです。ちなみに、枠組み足場の下部に車輪を付けたものをローリングタワー、または移動式足場と呼びます。
くさび緊結式足場
くさび緊結式足場は、一定間隔に設置した銅管の支柱に手すりや踏み板などをくさびで緊結して組み立てる足場です。ハンマー1本で短時間の組立・解体が可能ですが、強度の問題で高層建築物の足場には用いられません。ビケ足場とも呼ばれます。
吊り足場
建造物の上部から吊り下げる足場です。下から足場を組み上げるのが難しい狭い場所、不安定な場所、橋梁や工場の工事などで使用されます。設置の難易度が高く、転落のリスクもあるのがデメリット。慎重な作業と入念な計画が必要となります。
支保工の種類

支保工は型枠支保工と土止め支保工(土留め支保工ともいう)に分類されます。
「支える」という意味では同じですが、建設現場での役割の違いを見ていきましょう。仕事内容、工法の種類についても説明します。
型枠支保工
建設現場でコンクリートを使用する際は、支保工と呼ばれる型枠(仮設設備)にコンクリートを流し入れて型崩れを防止します。型枠にコンクリートを流し入れて、固まったら型枠を取り外すまでが型枠支保工(または型枠大工)の主な仕事です。
型枠支保工の種類
軽量支保ばり式・パイプサポート式・枠組式・組立鋼柱式・くさび結合式・四角塔式(STシステム)など ※事業者によって呼称が違います。 |
構造物によって型枠の大きさや形が違うため、型枠支保工には高度な技術が必要です。特に大量のコンクリートが使用される大規模な建設現場では、型枠支保工に不備があると大きな事故につながります。
土止め支保工
採掘や掘削作業で対象物の断面が剥がれ落ちると、土壁の倒壊や土砂崩れが起こり、作業員が巻き込まれたり災害を引き起こす可能性があります。土止め支保工は、鉄板や木の板、鉄骨などで対象物を押さえつけ、建設現場の安全を守り災害を防止します。
土止め支保工の種類
建込み矢板工法・打込み矢板工法・スライドレール方式・縦ばりプレート方式など多数 ※事業者によって呼称が違います。 |
なお、土止め支保工作業主任者の資格は「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習」を受講する必要があります。
支保工の組み立てに必要な資格
ここからは、型枠支保工の組立てに必要な資格の受験・受講資格と試験・受講内容について解説します。開催日程が地域、または年度によって異なる場合が多いので、それぞれの実施機関でご確認ください。
- 型枠支保工の組立て等作業主任者
- 1級型枠施工技能士
- 登録型枠基幹技能者
型枠支保工の組立て等作業主任者
型枠支保工の組立て等作業主任者は、コンクリートの型枠を支える仮設設備の組立てや解体を監督する国家資格です。
事業者は、建設現場で型枠支保工の組立てや解体作業を行う際、労働災害を防止するために、型枠支保工の組立て等作業主任者を主任者として選任して配置することが定められています。
型枠支保工の組立て等作業主任者のできること・すること
主任者として現場の作業を直接指導・指揮する。
工具等の点検、安全帯や保護具の使用状況を監視・指導する。
材料の有無を確認し、器具工具の点検不良品を取り除く。
受講資格 | 受講内容 | 日程 |
---|---|---|
次のいずれかを満たす者 ・型枠支保工の組立てまたは解体に関する作業に3年以上従事した者 ・大学、高専、高校の土木または建築に関する学科を卒業後、2年以上の経験を有する者 ・技能講習規程第1条に定める者 | ・型枠及び型枠支保工の組立て、解体等に関する知識 ・工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 ・作業者に対する教育等に関する知識 ・関係法令 | 2日間(13時間) 各都道府県、開催会場により異なる |
1級型枠施工技能士
1級型枠施工技能士は、型枠を組み立てるための組立図を作成し、型枠を組み立てる技能を認定する国家資格です。
型枠施工技能士は、とび・土工工事業の一般建設業の専任技術者になることができます。建設業許可には、許可を取得する業種ごとに一定以上の技術知識がある人を営業所に常勤させなければならないという要件があり、この技術者を専任技術者といいます。
1級建築士型枠施工技能士のできること・すること
営業所の専任技術者として請負契約の締結や人員配置、工程管理等を行う。
現場の主任技術者として作業を直接指導・指揮する。
※原則的に専任技術者は現場で主任技術者として配置することが認められていませんが、それでは建設工事が回らないため、多くの場合は緩和措置が適用されます。
7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験 ※学歴により必要な実務経験年数が異なる | 学科試験 ・施工法 ・材料 ・建築構造および土木構造 ・製図 ・関係法規 ・安全衛生 実技試験 ・型枠工事作業 | 各都道府県、年度により異なる |
登録型枠基幹技能者
登録型枠基幹技能者(基幹技能士とも呼ばれる)は、型枠工事の上級職長となる人に与えられる公共性の高い資格です。国家資格ではありませんが、国土交通省の登録資格となります。平成30年の改正により、主任・専任技術者になるための受検資格に、登録型枠基幹技能者の受講が加わりました。
1級または2級建築士型枠施工技能士のできること・すること
主任・専任技術者の受検資格になる。
通常職長が行う一連の業務。
一般の技能者の適切な配置、作業方法、手順の構成、指導。
受講資格 | 受講内容 | 日程 |
---|---|---|
次のすべてを満たす者 ①建設現場において型枠工事の施工実務経験が10年以上 ②型枠工事の職長経験3年以上の経歴 ③次のいずれかの資格を有する ・1級型枠施工技能士 ・1級または2級建築施工管理技士 ・1級または2級土木施工管理技士 | ・基幹技能士共通 ・関連法規 ・日本型枠 | 2日間 各都道府県、年度、開催会場により異なる |
足場の組み立てに必要な資格
足場の組立てに必要な資格として、足場の組立て等作業主任者技能講習を紹介します。足場の組み立て作業の指揮監督者を養成するための講習です。
事業者は、つり足場や張出し足場、高さ5メートル以上の足場の組み立て、解体、変更の現場に主任技術者を専任して配置することが定められています。
足場の組立て等作業主任者のできること・すること
主任者として現場の作業を直接指導・指揮する。
工具等の点検、安全帯や保護具の使用状況を監視・指導する。
材料の有無を確認し、器具工具の点検不良品を取り除く。
受講資格 | 受講内容 | 日程 |
---|---|---|
次のいずれかを満たす者 ①足場の組立、解体又は変更の作業に3年以上従事した経験 ➁大学、高等学校等において、土木、建築又は造船に関する学科を専攻して卒業した者。その後2年以上足場の組立て、解体又は変更の作業に従事した経験を有する者。 【注】年少則の関連で満18歳以上からの経験年数 | ・作業の方法に関する知識 ・工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 ・作業者に対する教育等に関する知識 ・関係法令 | 2日間 各都道府県、開催会場により異なる |
まとめ
支保工と足場工は、どちらも見た目は大きな骨組みですが、役割も必要な資格も異なります。支保工は、構造物・岩や山・コンクリートといった対象物が崩れないように支える仮設設備またはその工事を指します。一方、足場工は高所作業をする作業員の足場を支える仮設設備またはその工事です。