
「建築におけるKBMって何?」
「設計GLや孔内標高との関係って何?」
「KBMの設置手順が知りたい」
こういった疑問お悩みにお答えします。
KBM(仮ベンチマーク)とは、水準測量において一時的に設置する基準点です。
そのため、初期段階で設置ミスや測量方法を誤ってしまうと、測量を一からやり直しになるだけではなく、最悪施工不良を引き起こしてしまう可能性があります。
そのような事態を避けるためにも、本記事では建築・施工管理におけるKBMとは何か、KBMの決める手順について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、KBMの役割を知ったうえで、現場にて活用してみましょう。

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目次
建築・施工管理におけるKBMとは?
建築・施工管理におけるKBMとは、工事現場で高さを測量する際に一時的に設置する仮の水準点(ベンチマーク)のことを指します。
KBMは日本語で「仮ベンチマーク」と呼ばれ、略して「かりべん」とも呼ばれます。
KBMを設置する理由は、遠方の水準点から測量すると手間がかかったり測定不可であったりするため、近場のわかりやすい地点に仮の水準点を設けた方が測りやすいためです。
設置する際は、将来的に変動の可能性が低い地点をKBMとしましょう。
たとえば以下の地点が良いとされています。
- 構造物基礎の端
- マンホール蓋の天端
- 道路の縁石
- 側溝
それでも近場に適した地点が無い場合は、測量鋲を打って基準とするケースもあります。
またKBMを解説するうえで欠かせない要素として、以下が挙げられます。
- KBMと設計GLの関係
- KBMと孔内標高との関係
- 水準測量とKBM設置測量の違い
これらについても詳しく解説します。

KBMと設計GLの関係
設計GL(グランドレベル)とは、設計する際に、構造物を建てる際の基準となる地盤面の高さを言います。
KBMを基準に設計GLを設定し、高い地点ならプラスの値、低い地点ならマイナスの表記で表します。
たとえばKBMを基準値0とし、KBMから100mm上がった(プラス側)ところを設計GLとして決めるといった形です。
KBMが変動しない地点に設けたことを前提に設計GLが決まってくるため、構造物を建てるうえで選定は非常に重要になってきます。
設計GLが高すぎる場合には、以下の弊害が考えられるでしょう。
- 露出する基礎が多くなるため、土の埋め戻し量が多くなる
- アプローチで段差が多くなる
- 見栄えが悪い
- スロープの勾配が急になる
また低すぎても以下の弊害が考えられます。
- 適正な勾配が取れず雨水処理が難しくなる
- 余剰土の敷き均しや搬出作業が増える
- 基礎継目からの浸水が考えられる
これらの問題が起きると、無駄な手間が増え時間や費用が増大してしまうだけではなく、最悪の場合、施工のやり直しが考えられます。
それだけ設計GLの設定は重大なのです。
KBMと孔内標高との関係
孔内標高(ボーリングGL)とは、地盤調査においてボーリングを実施した際の地盤レベルのことです。
正確な杭長や基礎底を決定する際に、KBMと孔内標高との位置関係が重要になってきます。
なぜかというと、設計GLと孔内標高にはレベル差があり、基礎を支持層まで届かせるためにはこの2つを理解していないと設計できないからです。
表現方法としては、ボーリング地点の孔内標高はKBM+(-)〇mmといった形で設定されます。
KBMと孔内標高との関係性を理解したうえで、設計を行いましょう。
水準測量とKBM設置測量の違い
水準測量とKBM設置測量の違いですが、結論からいうと測量方法に違いはありません。
水準測量とは、測量機器を設置した箇所の各地点相互の高低差を測量する方法です。
既知点の種類や路線長、精度に応じて1級~4級および簡易水準測量に区分されます。
またKBM設置測量とは、水準点となるKBMを設置するために標高を測る測量です。
KBMは縦断測量や横断測量に必要です。
平地においては3級水準測量が基準となり、山地の場合は4級水準測量を用います。
基本的には起点側と終点側の2点にKBMを設置しますが、起点から終点までの距離が0.5km以上離れている場合は中間にも設けます。
画像引用元:国土地理院
違いとして水準測量は地点間の高低差を測る「測量全般」を指し、KBM設置測量は「KBMを設置するために実施する」水準測量のことです。
そのため、水準測量にKBM設置測量が含まれているといったイメージです。
KBMを決める手順

KBMを決める手順は、以下の方法があります。
- KBMの設置する場所を決める
- 動かない場所にレベルを設置
- ロッドを立て、KBMを計算する
これらの手順を守り、やり直しや失敗の無い測量を行いましょう。
KBMの設置する場所を決める
まずはKBMを設置する場所の選定です。
選定場所としてのポイントは2点あり「将来変動する可能性が低い地点」かつ「測量機器で見通しやすい範囲」としましょう。
将来変動する可能性が低い箇所には、以下があります。
- 構造物基礎の端
- マンホール蓋の天端
- 道路の縁石
- 側溝
もしこれらの地点が無い場合は、測量鋲を地面に打ち込むことも有効です。
動かない場所にレベルを設置
KBMの場所の選定が完了したら、次はレベルの設置です。
以下に流れを解説します。
- 三脚にレベルを取り付けて、KBMが見通せる位置に設置
- このときレベルが動かないようにしっかりと三脚の足を踏み、地面に固定(固定が甘いと正しい数値が取得できず、やり直しなるため注意)
- 設置が完了したら、円形気泡管を真ん中の枠に入るように調整
レベルを据え付ける場所のコツとしては、斜面や地面に固定しにくい場所は選ばないことです。
とくに斜面に設置する場合は、据え付けに時間がかかるだけではなく、調整の難易度が格段に上がります。
ロッドを立て、KBMを計算する
次にKBMの場所にロッドを立てて、測定したら計算しましょう。
流れは以下のとおりです。
- 測定者はレンズから覗き込み数字が読み取れるようにピントを合わせる
- ロッドを持っている人は、目盛りを読み取るために前後に振る(ロッドは垂直に立てること)
- レンズ内に見える横線が、読み取るべき位置で振ったときの最小値を採用する
忘れないためにも、測定者は必ず数値を記録しましょう。
次にKBMの計算です。
KBMの計算では、高さを測って基準を決めます。
測り方の具体例は以下のとおりです。
- KBMの高さが「500.00mm」の場合、この数値が基準となる
- 次に高さを知りたい地点へロッドを移動し、同じように測定
- このときロッドの目盛りが「502.00mm」であれば、始めに測った数値と次に測った数値の誤差を計算
ここでは、KBMの地点から次の地点まで「-2.0mm」つまり2.0mmKBMより低いことがわかる
- 同様に測定箇所分、繰り返す
大幅な誤差が出た場合は、再測定となってしまうので、測定者もロッドを振る作業者も気を引き締めて取り組みましょう。

KBMについてのよくある質問
KBMに関するよくある質問については、以下のとおりです。
- TBMとKBMの違いはなに?
- KBMに誤差が出たときの調整方法は?
これらの質問について詳しく解説します。
TBMとKBMの違いはなに?
TBMとは「Temporary Bench Mark」の略で、日本語では「テンポラリーベンチマーク」と言います。
意味は、KBMと同様で仮ベンチマークのことを指します。
しかし建設業界にはもう一つTBMと略される言葉があり、それが「Tool Box Meeting(ツールボックスミーティング)」です。
ツールボックスミーティングとは、作業前に5~10分程行われるミーティングを言い、作業手順や方法、作業中におけるさまざまな危険事項を挙げ、対策といった労働災害を未然に防ぐ打合せのことです。
現場作業前に必ず実施し、作業者の危険予知能力を高め労災防止に努める役割があります。
KBMに誤差が出たときの調整方法は?
KBMに誤差が出たときの調整方法は以下の公式を使用します。
各KBMの調整量=-閉合誤差×(出発点からの距離÷総距離)
閉合誤差を各距離に分配して割り振ります。
たとえば、以下の測定箇所だった場合の計算方法は以下です。
- 閉合誤差:3mm
- 総距離:156.0m
- BMからKBM1までの距離:50.0m
この場合の計算方法は、以下となります。
KBM1の調整量=-(-0.003×50.0m÷156.0m)=+0.0009≒+0.001
最終的には閉合誤差の数値(この場合3mm)と最後に算出した数字が同じになるはずです。
異なる場合は計算をし直しましょう。
調整したうえで、起点のBMと終点のBMが同じ数値となれば、調整した標高が決定標高となります。
まとめ
本記事では、以下を解説しました。
- 建築・施工管理におけるKBMとは?
- KBMと設計GLの関係
- KBMを決める手順
- KBMについて、よくある質問
KBMは建物を設計する際には重要な役割を果たします。
測量は土木の基礎となるので避けては通れない道ともいえるでしょう。
現場で計算もしないといけないので大変ですが、慣れてくると流れ作業なので迅速に測定できます。
KBM設置測量は、測量士補や測量士といった国家資格取得に役立ちます。
企業によっては資格手当制度があり、収入アップも期待できるため、ぜひ取得して一人前の施工管理者を目指しましょう。
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