
建築・建設業界で働いている方の中で、「工事請負契約書」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ただ。工事請負契約書が、具体的にどういったものなのか、そしてどのように書けばいいのか、明確にはわからない方もいるでしょう。
そこで、今回は、工事請負契約書の書き方や作成時の注意点を解説します。さらに、そもそも工事請負契約書とはどういうものなのかについても、併せて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
工事請負契約書とは?
工事請負契約書は、文字通り、工事を請け負うために必要な契約書のことです。日本の法律において、工事は請負契約となることから、受注者は工事が完了することを約束し、発注者は工事の完了を確認して報酬を支払います。
請負契約では、あくまでも完成品が納品されたときに報酬が発生することを受発注者双方で合意していることが前提となっているので、工事の進行状況やプロセスは報酬額に影響しないものとなっています。
たとえば、契約時に工事が10日間かかると伝えていたにもかかわらず、実際は7日で工事が完了したとしても、契約上はとくに問題はなく、当初の契約通り、報酬が発生します。工事請負契約書では、こういった受発注者の双方の取り決めを文章で記したものであり、建築・建設業界においては、なくてはならない存在といえるでしょう。
工事請負契約締結に義務化されている
一般的に、「契約」というのは、書面ではなく口頭でも成立します。受発注の会話の中で、「契約します」といった文言があれば、法律上、契約が成立するのです。
しかし、建築・建設業界では、口頭での契約だけでは不十分となります。工事請負契約は、建設業法で定められており、事業者は工事請負締結を義務付けられています。
その背景には、建築・建設業が特殊な業態であることが挙げられます。というのも、注文者は、必ずしも建築や建設に関する知識があるとはいえず、口頭だけでは、受注者(事業者)が有利となって契約を進められるのです。
残念ながら、一部の事業者の中には、一般の顧客を騙して口だけで契約を進めようとする業者もあるのです。そういった悪徳な商法を抑えるためにも、建築・建設業界においては、建設業法において、工事請負契約の締結が義務付けられています。
工事請負契約書があれば、しっかりと内容を吟味することができ、精査したうえで契約を進めることが可能です。
工事請負契約締結の方法
工事請負契約書の作成および工事請負契約の締結は、事業者の義務であり、適切に工事をおこなうためにも必要なプロセスといえるでしょう。しかし、そもそも、どのようにして工事請負契約を締結させればいいのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、工事請負契約締結の具体的な方法について詳しく解説します。
工事請負契約締結には、主に以下の3つの方法があります。
- 工事請負契約を交わす方法
- 基本契約書を取り交わして、注文書を交換する方法
- 注文書および請書を交換する方法
いずれの場合も、法的に認められた方法であることから、事業者が扱いやすいものを選ぶといいでしょう。ただし、それぞれの書類には、法律で定められた記載事項が書かれていることが前提となっています。
さらに、署名や捺印がない場合は法的な工事請負の締結とはならないので注意が必要です。そのほか、「注文書および請書の交換」においては、両方の取り交わしが必要であり、注文書のみの受け渡しだけだと、工事請負契約の締結にはなりません。
工事請負契約書の書き方見本
工事請負契約締結の方法は理解できたものの、そもそも工事請負契約書をどのようにして書けばいいのかわからない方もいるでしょう。
ここでは、工事請負契約書の書き方について、「工事請負契約書の法定記載事項」「必須項目以外にも定められる条項例」「工事請負契約書の記入例」「工事請負契約書に必要な収入印紙の金額」にわけて解説します。
工事請負契約書の法定記載事項
法律で、工事請負契約書に記載しなければならない事項が定められています。万一、必要事事項が書かれていない場合は、法的に契約が締結されたとはいえず、場合によっては建設業法違反となるので注意しましょう。
以下、工事請負契約書の法的記載事項です。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事の着手の時期及び工事完成の時期
- 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
- 前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
- 設計変更・工事着手の延期・工事の中止の申出があった場合における、工期の変更・請負代金額の変更・損害の負担及びそれらの額の算定方法
- 天災その他不可抗力による、工期の変更・損害の負担及びその額の算定方法
- 価格等の変動若しくは変動に基づく、請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施工により、第三者に対して支払う損害賠償金の負担
- 注文者が資材を提供したとき・機械を貸与するときは、その内容・方法
- 注文者による完成検査の時期・方法、引渡しの時期
- 工事完成後における、請負代金の支払の時期・方法
- 契約不適合責任、又は契約不適合責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 債務不履行の場合における遅延利息・違約金その他の損害金
- 工事請負契約に関する紛争の解決方法
- その他国土交通省令で定める事項
必須項目以外にも定められる条項例
工事請負契約書では、法律で定められた記載事項のほかにも、書かなければならない可能性がある項目がいくつかあります。
- ローン特約
- 反社会的勢力の排除
- 管轄裁判所の合意
ローン特約とは、住宅ローンを利用して家を建てる際、万一住宅ローンが通らずに資金調達ができない場合、買主側からの契約解除を無条件で認める特約のことです。消費者保護の観点から、住宅ローン審査に通らなかった場合、新築工事にかかる費用を自己資金で全額支払うのは難しいことから、工事請負契約においては、ローン特約を規定することが一般的です。
そのほか、反社会的勢力の排除については、買主側および売主側の双方が暴力団関係者ではないことを契約書をもって明示したものであり、コンプライアンスの観点から工事請負契約書に記載されています。
なお、管轄裁判所の合意とは、工事請負契約に関してトラブルが発生し、訴訟提起が必要になった場合に、契約書内で規定した裁判所で訴訟の提起を可能とすることを合意するための規定です。
工事請負契約書の記入例
ここでは、工事請負契約書の記入例を紹介します。
第1条(工事の内容、時期等)
甲は乙に対し下記内容の工事を注文し、乙はこれを 完成させることを約定した。
記
1 工事の目的物は、別紙の設計仕様のとおり。
2 工事場所:_____________________
3 工期:令和 年 月 日から令和 年 月 日まで
4 工事を施工しない日・時間帯:_______________
5 請負代金額:金〇〇〇〇〇円
工事請負契約では、最初に、工事の内容や工期を示す必要があります。具体的な工事の内容に加え、工事をおこなう場所や工期のほか、請負代金についても記載しなければなりません。
工事請負契約書に必要な収入印紙の金額
工事請負契約書を作成するときは、定められた額の収入印紙を貼り付ける必要があります。ただし、契約書に記載の金額が100万円を超えており、平成26年4月1日から令和6年3月31日までに作成された工事請負契約書については、軽減措置の対象となります。
以下、本則税率および軽減税率をまとめたものです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
※国税庁「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」より
工事請負契約書作成、締結の注意点

該当の工事をおこなうときは、工事請負契約書の作成および締結が義務付けられています。しかし、誤った方法で契約書を作成すると、建設業法違反になる恐れがあるため、細心の注意が必要です。
ここでは、工事請負契約書を作成するときや、締結するときの注意点について詳しく見ていきましょう。
工事遅延の場合の違約金・追加工事代金について記載
工事請負契約書には法定記載事項が定められていますが、中でも「違約金」「追加工事代金」についてはトラブルになりやすいので、しっかりと確認したうえで適切に記載しておく必要があります。
工事が遅延した場合、受注者側が発注者側に対して、「違約金」を支払うことがありますが、どれくらいの金額を支払うかを明記しておかなければなりません。なお、標準約款第23条では、年14.6%の違約金を請求できると定められています。しかし、法律上では、年5%や6%をもとに違約金を算出するのが一般的です。
そのほか、工事中に追加工事が必要になった場合、請負工事金額の追加や変更ができる旨も工事請負契約書に書いておく必要があります。
工期を延長する場合について記載
大雨や台風などの自然災害の影響で、工事を中止せざるを得なくなり、工期を延長しなければならないことがあるでしょう。さらに、追加工事が必要になり、工期が長引く可能性もゼロではありません。
そのため、工事請負契約書では、工期延長に関する事項を明記しておく必要があります。ただし、標準約款第21条では、「不可抗力によるとき」「正当な理由があるとき」のみ、工期の延長が認められるとされているので、工期を延長せざる理由がない場合は、原則工期の延長は認められません。
また、実際に工期を延長するときは、発注者と受注者の双方がしっかりと協議して、延長するかどうかや、どれくらい延長するかを決める必要があります。
工事請負契約書では、例として、「工事事業者からの仕様の問い合わせに対して、施主が1週間以内に仕様を決定していなかった場合、発注者が同意をしなくても工事事業者から工期を延長できる」と記載しておくといいでしょう。
下請業者を活用する場合
実際の工事をおこなうときは、下請業者に委託することも珍しくありません。しかし、建設業法第22条では、請負人が下請業者に完全委託する「一括下請負」が禁止されています。
とはいえ、建築および建設業界では、下請業者に完全委託することも少なくないでしょう。そのため、注文者(発注者)の承諾を得ている場合のみ、例外的に一括下請負が認められるケースもあります。
発注者と受注者間におけるトラブルを未然に防ぐためにも、実際に下請業者に委託する場合は、あらかじめ工事請負契約書内で注文者に対して説明をおこない、下請業者に外注する旨の承諾を得ておきましょう。
現場代理人選任の通知について記載
建築・建設工事をおこなうときは、工事現場に現場代理人を置くことが一般的です。現場代理人は主に、工事を管理する役割を担っており、建設業界ではなくてはならない存在といえるでしょう。
ただ、受注者側が、現場代理人を置く場合は、以下の内容を文章で示さなければならないと建設業法で定められています。
- 現場代理人の権限に関する事項
- 現場代理人の行為についての、注文者の請負人に対する意見の申出の方法
「文章で示さなければならない」と建設業法で定められていますが、基本的には工事請負契約書内に記載しておけば問題ないでしょう。
まとめ
工事請負契約書は、工事を請け負うために必要な契約書であり、建築・建設業界ではなくてはならない存在です。しかし、工事請負契約書には、法定記載事項というものが定められており、必ず書かなければならない内容があります。
法定記載事項が漏れている場合は、契約書として成立しないことに加え、建設業法違反となってしまう可能性があるので注意が必要です。
トラブルを未然に防ぐためにも、工事請負契約書は適切に取り扱う必要があります。ぜひ、今回紹介した書き方や注意点を参考にしてください。