建築における遣り方(やり方)とは?具体的な手順を6つのステップでわかりやすく解説

「遣り方(やり方)とは何をすること?」

「遣り方(やり方)の方法と手順を知りたい!」

今回は建築工事の着工前に欠かせない遣り方(やり方)について詳しく解説します。そもそも、何のために遣り方(やり方)という工程が必要とされるのか、どのような工具や機器を使用して作業するのか、具体的に分かりやすくお伝えします。

・公開 / 非公開求人多数掲載!
・転職後に収入380%の実績アリ!
・アドバイザーによるサポートも充実!

トントンでは様々な方に向けた求人を多数掲載!
初めての就職やキャリアアップのために適した企業に、
全て無料で応募可能です!

お名前

電話番号

メールアドレス

会員限定!
サイト掲載不可の
限定求人をご紹介!

遣り方(やり方)とは

遣り方(やり方)とは、基礎工事を行う前に、敷地内の建物の位置・柱や壁の中心線・高さ・水平といった基準を正確に設定する仮設工作物です。

遣り方(やり方)は、建築図面に表記されている「通り芯」という線を、建設予定地に表す作業でもあります。柱や壁の中心を通って一直線に建物を分断する「通り芯」は、どこに何を作るかの基準となります。

遣り方(やり方)が正確に行われないと、敷地内で建物の位置がずれてしまいます。敷地境界線(隣地境界線や道路境界線)の位置関係もおかしくなるので、建築基準法および民法の違反、あるいは隣家からの損害賠償や建築中止といったトラブルが懸念されます。

また、建物内の柱や壁の位置、地面と建物の水平さもずれてしまいます。図面と一致せず安定しない建物は、災害時に人命に関わるのであってはなりません。こちらも工事のやり直しとなるでしょう。

なお、遣り方は「丁張」「水盛り」とも呼ばれ、その作業は「遣り方を出す」といいます。作業自体は半日ほどで終わり、地鎮祭の日に施主や関係者が位置を確認します。

建築における仮設工事と本設工事の違い

遣り方(やり方)は仮設工事、基礎工事から先は本設工事と呼ばれます。

本設工事は最終的に、完成した建物を施主へ引き渡します。特に施主が希望しない限り、新しい部材と資材を使います。

一方、仮設工事は施主への引き渡しがありません。例えば、遣り方(やり方)を出す際に杭やロープを用いますが、本設工事が始まると解体されて後に残りませんから、部材は再利用されるのが普通です。

遣り方(やり方)と丁張の違い

遣り方(やり方)に似たニュアンスで、水盛り、水盛り遣り方、丁張(ちょうはり)などの言い方があります。

どれも意味合いはほぼ同じですが、建築工事の現場は遣り方(やり方)もしくは水盛り遣り方、土木工事の現場は丁張(ちょうはり)を使うのが一般的です。

遣り方(やり方)と水盛りは、「水盛り遣り方」を短くした言葉と捉えても差し支えないでしょう。計測機器が無かった江戸時代、角材の溝に水を注いで水平を測定していたことが由来とされています。

「丁張」の語源は2つあり、1つは土木工事の盛土や切土、水路などの目印として用いる杭と板の目印が漢字の「丁」に見えるから。2つ目は、番地の「丁」からきているという説です。

遣り方(やり方)に用いられる工具・材料一覧

ここからは、遣り方(やり方)に用いられる主な工具や材料について、用途と使い方、特徴を解説します。見慣れない名称が多いかもしれませんが、どれも遣り方(やり方)に欠かせない工具・材料です。

  • トランシット
  • レベル
  • 大曲(おおがね)
  • ばか定規
  • 下げ掘り

杭は、水平の「水」を加えて水杭とも呼ばれます。杭打ちは、基礎工事のひと回り外側を囲むように打ち込みます。ひとつの隅に、L字型で3本ずつ設置するのがルールです。物がぶつかったり間違って叩いたりした際に、先端の潰れで異常が分かるよう「いすか切り」と呼ばれる斜め切りの加工を行います。

トランシット

トランシットは、角度をセンサーで検知する測量機器です。墨出しに応用できるレーザートランシット、勾配設定や水平出しに使用されることが多いデジタルトランシット、角度を精密に測定できる光学トランシットの3種類に分類されます。トランシットは、経緯儀またはセオドライトとも呼ばれます。

レベル

レベルは、物の高低差や水平基準を測量する測量機器です。望遠鏡と気訪管、整準装置で構成されており、三脚に据え付けて使用します。レーザー光線を出して水平を測るレーザーレベル、基準点になると音で知らせるオートレベルが主流です。レベルを用いる作業を「レベル出し」といいます。

なお、レベルを現場で作る場合は、水を入れた容器(バケツなど)と、透明のホースで水平を測ります(サイホンの原理を使う)。

大曲(おおがね)

大曲(おおがね)は、基礎の位置・高さ・直角を確認できて便利な直角定規。「大矩」と書いても読み方は同じです。ピタゴラスの定理で辺の長さが3:4:5になるため、「三四五」ともいいます。

市販もされていますが、羽目板や貫と呼ばれる厚さ3cm未満、幅12cm未満の小幅板を用いて現場で作るケースが圧倒的に多いでしょう。ただ、微妙な狂いが生じることもあるため、近年は測定器を用いる現場が増えています。

ばか定規

ばか定規は、別名ばか棒とも呼ばれます。伸縮可能なアルミ製のばか定規も市販されていますが、現場にある木材や棒に、印を付けて用いるのが一般的です。遣り方(やり方)では、水杭の基準高さを移すために使います。同じ長さや高さを複数カ所で使用する際に便利です。

下げ振り

下げ振りは、紐の先端に逆円錐形の重りが付いた工具です。錘重(すいじゅう)ともいいます。重りを垂らすことで柱の垂直度を測定できますが、屋外では風の影響を受けやすいのが難点です。地墨を打ったり、測量機器の据え付け位置を決める際にも用いられます。

現場で下げ振りを作る場合は、釘に水糸を縛り付けて逆側に重り(ボルトや墨つぼなど)を縛り付けます。

遣り方(やり方)の手順・方法

遣り方(やり方)の手順は以下の通りです。

  1. 境界線を明確にする
  2. 建物の位置を確定させる
  3.  高さの基準を確定させる
  4. 墨出しを行って水糸を張る
  5. 矩出しを行う
  6. 高さを確認する

6つのステップごとに、それぞれどのような作業を行うのか具体的に解説していきましょう。建物が設計図面通り竣工されるためには、正確な遣り方(やり方)の手順と方法が不可欠です。

境界線を明確にする

遣り方(やり方)の1ステップは、工事を行う敷地とそれ以外の境界線を明確にすることです。境界線は、基礎工事の仕上がりよりひと回り大きい外周が目安となります。

明確な境界線が確認できたら、境界に杭を打込んでいきます。前述したように、道路や隣家へはみ出すと敷地境界線を超えてしまいます。距離と角度を確認し、図面と食い違いがある場合は、中断して原因をはっきりさせなければなりません。

建物の位置を確定させる

敷地の境界線が確定したら、これから建てようとする建物の位置(建設予定地)を、地縄を張ることで確定させます。地縄とは、地面の近くに縄を張ることですが、実際はロープやビニール紐を用いることが多いです。

具体的には、1点の基準点から2点の基準点を出し、その2点を結んで4つ目の基準点を見つけ、建物を囲う角を直角にあらわします。

なお、施主は地縄を見ることで、初めて部屋や窓の位置を具体的にイメージすることが可能となりますから、敷地内の石や異物はこの段階できれいに取り除いておきましょう。

高さの基準を確定させる

建物の位置が確定したら、現場内の杭や近場の固定物を目印にして、GL(グランドライン)と呼ばれる「基準となる地面の高さ」を確定させます。このときに使う目印をBM(ベンチマーク)といいます。マンホールがあればBMに最適です。ちなみに、GLは土地の水はけや周囲の道路状況などによります。

続いて、杭と杭の間に貫(ぬき)、または水貫(みずぬき)と呼ばれる薄板を水平に張り付け、「基準となる基礎工事の高さ」を決めます。基礎工事の仕上がりから10cm程度高めに設置するのがポイントです。

最後に杭と水貫が動いたり横揺れしたりしないよう、斜めに筋交い貫(すじかいぬき)を打ち付けて固定します。

墨出しを行って水糸を張る

水平、平行、角度、高さ、距離などが確定したら、墨出し(墨付けともいう)を行います。職人は墨出しされた表示通りに作業を開始しますから、非常に大切な工程です。線を引くには墨つぼ、チョーク、墨差しなどを使用します。

墨出しは、まず図面上の指示ポイントに印を付け、そこから平行もしくは垂直に、壁や柱の基準点を墨打ちして互いを結んでいきます。順番は、下の階から上の階です。

例えば、通り芯は工事が進むと見えなくなるので、一定の距離を空けて逃げ墨(またはかえり墨)という墨を打ちます。他にも、床は地墨、天井の高さは陸墨(ろくずみ)など、場所によってさまざまな呼称があります。

上記の作業が終わったら、墨で印をつけた対角線上に水糸を張り、縦横が直角に交わることを確認しましょう。

矩出しを行う

矩出し(かねだし)とは、建物のひと回り外周に張った薄板の水糸から、それぞれの交点の対角を測り、直角を出すことです。「矩を確かめる」ともいいます。直角になっていない場合は、トランシット、大曲、矩出し専用巻き尺などの測定機器を用いて、縦墨の位置の微調整を行い、間違いなく直角に定めます。

高さを確認する

いよいよ遣り方(やり方)の最終段階です。張り巡らされた水糸で、建物の位置と高さ、特にBMからGLを再確認します。基礎工事の基準の高さとなりますから、目視ではなく図面を見ながら、測定機器を用いて丁寧に確かめてください。

遣り方(やり方)は確認済証が交付される前に行っても問題ない?

建築工事は、自治体や指定確認検査機関の建築確認を受けて、確認済証の交付を受けなければ着工できません。建築確認とは、各自治体の条例や建築基準法に適合しているかの検査です。

しかし、遣り方(やり方)は確認済証の交付前に設置しても法的な問題はありません。掘削もしくは杭工事をもって着工と見なされますが、遣り方は(やり方)はどちらにもあたらないからです。

また、遣り方(やり方)で打つのは建築物の位置や高さの基準を決める杭ですが、杭工事は地盤の弱さを補強するコンクリート杭や鋼管杭です。ただし、元請け会社によっては「遣り方検査」をする場合があります。

まとめ

遣り方は、建築物の位置・高さ・水平の基準となる仮設物です。木や糸、ビニール紐を組み合わせた簡易的な見た目ですが、実はさまざまな工具や測定機器を駆使した精密な計算の上に成り立っています。また、設計図面の見方が分からない施主にとっては、完成した建物のイメージを最初に思い描ける重要な工程です。

おすすめの記事