建築図面の種類はどれくらい?図面が持つ役割をわかりやすく解説

建築図面は、建築物に必要な情報を、建築主、設計者、施工業者の三者で共有するためにあります。

まず設計者は、建築主が建物に求めるものを広く深くリサーチしながら、その建築物が関連する法令をクリアできるように設計しなければなりません。

建物の耐久性を決める構造や暮らしやすさに直結する設備に関係する図面も重要です。また施工業者が、それを見れば施工を開始できるような図面も必要になります。

この記事では、建築図面の種類と概要を分かりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

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建築図面とは

建築図面とは設計図のことで、建築主が求める建築物について、多様な見地から考察して作製される図面です。

作製された図面は、設計者から建築主や施工業者に共有され、この三者で内容について協議や調整を繰り返しながら「建築物の完成」という共通の目的に向かっていきます。

まず設計者は、建築図面を作製するにあたり、建築主の意向を聞くことから始めます。この意向に沿って建築物の全容を決め、建築図面に描出して建築主と共有します。

そして設計者は、工事に必要なすべての情報を盛り込んだ各種図面を作製し、施工業者と共有しなければなりません。

ですから建築図面には、設計者と建築主や施工業者をつなぐという重要な役割があるのです。

建築図面を作製する目的 

建築図面を作製する目的は、図面を使う人が求めている情報を、一目で分かるように簡潔に記載することです。

「誰に何を伝えようとしているのか」という目的をシンプルに明確にすることが重要になります。

過剰な装飾や表記の乱れは、伝えようとすることを分かりづらくすることがあるので注意が必要です。

建築図面の3つの種類

建築図面は、その使用目的から大きく3つの種類に分けることができます。

・基本設計図
・実施設計図
・施工図

上記の3つは、さらに細分化されるのですが、まずこの3つの違いについて概要を解説します。

基本設計図

基本設計図は、建築主が求める建物の骨組みとなる構造・間取り・設備などを図面化して可視化し、建築主と共有するために作製されます。

同時に、建築基準法や都市計画法など、さまざまな法規制をクリアしたものでなければなりません。

基本設計図は、この後の実施設計図や施工図のベースになります。建築主との十分な協議や調整が必要です。

協議のポイントは、建物の使用目的、規模、仕様、想定する耐用年数、予算、立地条件、原地盤の状況などです。その他に、建築基準法での制約や近隣の状況なども説明します。

以上のようなポイントの調整が完了すると、計画説明書、配置図、平面・立面・断面図、展開図などが作製されます。

実施設計図

実施設計図は、基本設計図に意匠図や設備図、構造図などを付加した、よりテクニカルな内容の設計図となります。

意匠図、構造図、設備図の概要についてまとめました。

・意匠図|建築物の形状、全体構成、間取り、デザインを伝える図面
・構造図|建築物の骨組みとなる柱や梁などに関わる部材を示す図面
・設備図|電気や照明関連の配線、水道・ガス管の配線・配管図

上記の図面は、目的別に、さらに細かく分けられて表記されます。

施工図 

施工図は、実施設計図をもとに作製する工事用の図面であり、専門工事業者や職人などが知るべき施工に関わる情報が網羅されている図面です。

施工図は、平面詳細図、躯体図、総合図などで構成されます。以下に概要をまとめました。

・平面詳細図|平面図をベースとして細かい寸法まで詳細に記載して作製
・躯体図|建物の躯体を明確にするため構造図・平面詳細図の情報を抽出して作製
・総合図|各設備機器を配置するため設備図・平面詳細図から情報を抜粋して作製

施工図があることで、施工業者は実際の施工前に構造物の細部まで検証することができます。

実施設計図の種類

実施設計図とは、実際の施工と見積りのための詳しい内容が分かる図面で、基本設計図をベースに寸法・仕様・構造・設備などを具体的に示している設計図です。

実施設計図の代表的な図面には3種類あり、それぞれはさらに細分化されています。

・意匠図
・構造図
・設備図

上記3種類の内容について詳しく解説します。

意匠図

意匠図とは、建物の外形や色彩、間取りなどを伝えるための図面です。代表的な図面の種類と役割を下記にまとめました。

図面の種類図面の役割
平面図  建物を床から1m程度の高さで切断し、この切断面から見下ろした水平な投影図。柱や壁の位置、家具や建具のレイアウトなど居室をイメージしやすくする図面。  
断面図  建物を垂直に切断した断面図で、主に高さ関係を確認するための図面。床、軒、天井、開口部の高さが示される  
立面図  建物を真正面から見た直立投影図。正面と背面、両側面の四面全てから作成される  
矩計図  断面図と同様のものを1/30や1/50などの拡大した縮尺で描出した図面。  
天井伏図  照明や空調、消防などの各設備機器の位置を表した図面。天井の上部から天井を見下ろした位置で描かれる  
展開図  建物の室内中心から東西南北の四方を見た場合の投影図。各室の天井高、出入り口と家具の位置関係、設備機器の位置などが表される。  
平面詳細図  壁芯の寸法や仕様、建具や窓、壁の厚みなど、平面図には数字で記載されなかった寸法が明示されている。  
配置図  敷地と建物、道路と敷地境界、高低差、配水管の計画、庭や植栽の位置などが示される図面  
求積図  敷地・建物・床の面積を求める際に使用される図面。    
外構図  建築物を除いた構造物を表わす図面。門扉や通路及び駐車場、植栽や排水溝などを示す。  

構造図

構造図は、建物を支える柱や壁などの構造部材の配置や大きさなどの情報を示した図面です。構造とは、建物の骨格や土台となる重要な部分で、躯体とも呼ばれます。

以下に、構造図の代表的な図面の種類と役割を紹介します。

図面の種類図面の役割
伏図  柱や壁、スラブなどの構造部材を平面的に表した図面。寸法を記入した各部材には符号がつけられ、部材リストと対応する。  
軸組図  内容は伏図と同様だが、建物を立体的に見た図面。構造部材の姿図や符号が分かる。  
部材リスト図  伏図、軸組図の符号と対応し、構造部材の大きさや配筋、材質や細かい納まりを描出する。  
詳細図実際の工事で部材同士がどのように納まるかを確認するための図面。詳細図の縮尺は1/30、1/5などになるものもある。  
標準図構造部材同士の標準的な納まりが描かれた図面。全ての納まりを描くのは大変であり、標準的なものを1つ描くことで後はそれに倣うということ。  

設備図

設備図は、電気の配線、水道、ガス、冷暖房などの配管や配線図を描いた図面です。設備図の代表的な図面は以下の通りです。

図面の種類図面の役割
給排水設備図台所の給水、洗面所の流し、トイレ、風呂など水回り設備の配管経路と排水配管の経路が表現された図面。  
ガス設備図  ガスの配管経路、引込経路、配管の口径や接続方法を示す図面。ガス管は現場状況に応じてさまざまな配管経路がある。  
電気設備図配線図とも呼ばれる平面図で、建築物内外の各電気設備の位置と経路を示す図面。  
空調設備図エアコンや室外機、換気扇、ダクトなどの個数や位置、換気能力や配管経路を示す図面。  

施工図の種類

施工図は、建設現場において、施工業者が実際に工事を施工するために必要な図面です。

工事の請負会社は、この施工図に基づいて工事の品質・工程・安全・原価・環境などについて検討を行います。さらに施工図によって、専門工事業者や職人と情報共有をします。

施工図の代表的な図面の種類は以下の通りです。

・平面詳細図
・躯体図
・総合図

これらの図面についてそれぞれ説明します。

平面詳細図

平面詳細図は、平面図の縮尺を拡大して、より詳細な寸法や位置関係を数字や文字で表した図面です。建具の寸法や壁厚寸法などの細かな寸法まで表記されます。

建物の間取りを実際に表現する図面でもあり、断面の状況、屋内の高さ、フローリングの方向、納まりや仕上げなどについても詳細に書かれています。

平面詳細図のもつ情報量は、平面図よりも格段に大きく、施工業者にとって最も重要な図面とされているのです。

躯体図 

躯体図は、建物の骨組みとなる躯体をつくるために、構造図と平面詳細図などをベースにして作製する図面です。

躯体図は、床伏図、見上図、躯体断面図などで構成されます。

躯体とは、建物の柱、壁、床、天井、屋根、階段などのことで、さまざまな施工の基本となる大切なパーツです。

躯体図には、躯体本体の通り芯、壁の芯、コンクリート断面寸法と位置、スラブの厚さと位置、開口部、木れんが、インサート、アンカーボルト、貫通孔などが記載されます。

総合図

施工図の総合図は、設備・平面詳細図から情報を抜粋して作製し、施工のために必要な情報を総合的に盛り込んだ図面です。

総合図の種類を下記にまとめました。

壁・床総合図|スイッチやコンセントなど壁や床につくものの図面
展開総合図|おもに壁につく機器に関しての位置や高さを示す
天井総合図|天井に取り付ける機器の位置や配管の収まりを表わす
総合図には、すべての情報が組み込まれるため、全体的な収まりの検討を行うことが可能です。

建築図面制作のポイント

建築図面制作のポイントは、何を説明しようとしているのかという「目的」と、目的をいかにシンプルに「分かりやすく説明する」かという2点です。

そのためには過剰な装飾は控えてシンプルにまとめることが必要であり、表記ルールなども統一することが求められます。

建築図面は、建築主から現場の職人まで、さまざま立場の人が見るものです。また情報の種類や量も非常に多く、複雑である場合が多いです。

そのため図面の種類ごとに、使う人が求める情報は何なのかを理解し、そこにフォーカスして簡潔に分かりやすく作製しなければなりません。

まとめ

建築図面は、建物をつくるために関わるすべての人に共有される最重要な図面です。

一度完成した建築物を手直ししたり変更したりすることは非常に難しく、結果として時間も費用も予算以上にかかってしまうことになります。このような事態を避けるため、建築図面の段階で十分に協議し検討されなければなりません。

そのためにも、建築図面には、目的とする情報をシンプルに分かりやすく正確に伝えることが求められるのです。

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