建設業界では、しばしば「コンストラクションマネジメント(CM)」という言葉が使われます。とくに、ビルや商業施設、学校などの大規模な建設プロジェクトを進行させるには、コンストラクションマネジメントは必要不可欠な存在といえるでしょう。
とはいえ、具体的にどういったものなのか、いまいちわからない方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、コンストラクションマネジメントとはどういうものかに加え、コンストラクションマネジメントが導入された背景について解説します。
さらに、コンストラクションマネジメントのメリットについても併せて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
コンストラクションマネジメント(CM)とは?
コンストラクションマネジメントとは、アメリカ合衆国で用いられている生産管理システムのひとつであり、主に大規模な建設プロジェクトにおいて、専門的な知見を持った責任者が発注者の立場となり、企画設計や発注、施工や生産管理などのマネジメントをおこなうことです。
わかりやすくいえば、現場監督のようなポジションであり、建設プロジェクトが問題なく、スムーズに進行するために、企画や設計、部材発注、施工などの各段階で管理するといったイメージです。
さまざまな段階において、確認および管理をしなければならないことから、幅広い知識を兼ね備えておかなければなりません。また、全体のスケジュール管理を滞りなくおこなわなければならないことから、優れたマネジメント力が必要となるでしょう。
コンストラクションマネジメントが導入された背景
そもそも、コンストラクションマネジメントが導入されたのはなぜでしょうか。ここでは、コンストラクションマネジメントが導入された背景や歴史について、紹介します。
先述の通り、コンストラクションマネジメントは、アメリカ合衆国で採用されている生産管理システムです。アメリカ合衆国では、1940年代頃に誕生したといわれており、もともとは製造業におけるマネジメントシステムでした。
そこから、建設業界にも同じ方式のマネジメントシステムが採用されて、1960年代に入ってから、コンストラクションマネジメントシステムが幅広く浸透していったのです。その背景には、産業発展に伴い、プロジェクトが増加したことに加え、複雑化したことが挙げられます。
複雑化したプロジェクトをまとめるには、並大抵の努力では太刀打ちできず、発注者の負担がどんどんと膨れ上がっていったのです。そういった背景の中、コンストラクションマネジメントが幅広く浸透し、今日に至ります。
プロジェクトマネジメント(PM)との違い
コンストラクションマネジメントのほかに、プロジェクトマネジメントという言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ここでは、コンストラクションマネジメントとプロジェクトマネジメントの違いを見ていきましょう。
コンストラクションマネジメントとプロジェクトマネジメントの大きな違いは業務範囲にあります。コンストラクションマネジメントでは、主に設計、発注、施工といった工事完成までの管理をおこないます。
一方、プロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの構想や企画に加え、工事完了後のプロジェクトの計画など、長期的な目線で携わるのが一般的です。なお、欧米では以下のように区別されることも少なくありません。
- コンストラクションマネジメント:受注者側のマネジメントシステム
- プロジェクトマネジメント:発注者側のマネジメントシステム
コンストラクションマネジメントの仕事内容
コンストラクションマネジメントの概要は理解できたものの、具体的にどういった仕事内容なのか、いまいちイメージがつかない方もいるでしょう。
ここでは、コンストラクションマネジメントの仕事内容について詳しく解説します。
①設計フェーズ
コンストラクションマネジメントは、設計から工事完了までのプロセスを管理することが目的です。そのため、具体的な仕事として、まずは設計の打ち合わせに参加することが大切です。
そして、プロジェクトの妥当性などをチェックしながら、進行状況なども確認する必要があります。また、建築や建設に関する知識に乏しい発注者にも、わかりやすいような説明をおこなうのもコンストラクションマネジメントの仕事といえるでしょう。
そのほか、設計フェーズでは、おおよその見積もりを検討し、コストカットできる箇所などもシミュレーションしながら考えていかなければなりません。
②発注フェーズ
設計フェーズの次は、発注フェーズへと移ります。発注フェースでは、設計フェーズで決定した事業者に対して発注作業をおこないますが、どのようなプロセスで事業者が選定されたかが重要となります。
金額だけで判断するのではなく、工期や技術、品質など、さまざまな観点から総合的に検討をおこない、しっかりとした理由を持って事業者を選定しなければなりません。
また、癒着や汚職を疑われないためにも、透明性のある事業者選定が必要になることから、コンストラクションマネジメントの担当者は、しっかりと理由を説明できるようになっておく必要があるでしょう。
③工事フェーズ
最後は工事フェーズです。工事フェーズでは、発注者側の立場となり、施工計画に問題がないかを確認していきます。また、工事が進行している間も、さらなるコストカットができないかも検討しなければなりません。
そのほか、工期遅延などのトラブルの対処もコンストラクションマネジメントの担当者がおこないます。
なお、プロジェクトによっては、引き渡し後のメンテナンスもコンストラクションマネジメント担当者がおこなうことも少なくありません。あくまでも発注者側の立場となり、プロジェクトの進行をサポートするのがコンストラクションマネジメントなのです。
コンストラクションマネジメント(CM)のメリット
コンストラクションマネジメントの仕事の役割を理解できたものの、具体的にどのようなメリットがあるのかわからない方も多いでしょう。
ここでは、コンストラクションマネジメントのメリットとして、以下の3つを解説します。
- 工事工程の見直しが可能
- 発注者の業務が軽減される
- 総工費の最適化が図れる
工事工程の見直しが可能
プロジェクトの企画から完了までの管理をおこなうコンストラクションマネジメントには、「工事行程の見直しが可能」といったメリットがあります。
コンストラクションマネジメントでは、全体のスケジュールを管理しており、スムーズにプロジェクトが進むように調整しています。
通常の工事の場合、発注者と受注者の知識量に差があることから、上手く説明が伝わらなかったり、説明を伝えるのに時間を要したりするケースがあります。そういった、小さな時間のロスが、スケジュールに影響することも少なくないのです。
しかし、コンストラクションマネジメントでは、発注者側の立場となって、受注者との間に入ることから、知識量に差がある内容であったとしても、スムーズなコミュニケーションを取ることが可能です。
そして、結果的に工期の短縮につながったり、工程の見直しが可能になったりします。
発注者の業務が軽減される
コンストラクションマネジメントの基本は、発注者側の立場になることです。コンストラクションマネジメントの担当者は、発注者の代わりにプロジェクトを進行させるので、受注者との打ち合わせに代わりに参加したり、特別な裁量を持って、方針を決定したりすることがあります。
プロジェクトの全体を理解しており、豊富な知識と経験があるコンストラクションマネージャーであれば、発注者側の業務負担が大幅に減るため、双方にとって大きなメリットとなるでしょう。
さらに、発注者側の業務負担が軽減されるだけでなく、手間と時間を抑えられることから、通常業務に専念できるといったメリットもあります。
総工費の最適化が図れる
コンストラクションマネジメントの担当者は、過去にさまざまなプロジェクトを経験していることから、施工コストの妥当性を判断することが可能です。
施工コストが適正かどうかを判断すれば、総工費の最適化が図れるので、結果的にコストダウンにつながるといった魅力があります。
コンストラクションマネジメント(CM)の将来性は?
コンストラクションマネジメントは、さまざまなプロジェクトにおいて重要なシステムといえます。とくに大規模な工事の場合は、コンストラクションマネジメントの担当者がプロジェクト成功の鍵を握っているといえるでしょう。
もともと、アメリカ合衆国で広まったマネジメントシステムであることから、日本ではまだまだ浸透しきれていません。ただ、コンストラクションマネジメントによるメリットが幅広く知れ渡れば、将来的にもどんどん拡大していくことが予想されるでしょう。
しかも、コンストラクションマネジメントには、数多くの経験と豊富な知識が必要であることから、どこの企業からも重宝される存在になる可能性が高いです。
コンストラクションマネジメントに役立つ資格
コンストラクションマネジメントに関する専門的な資格は今現在ありません。しかし、コンストラクションマネジメントには、建築や建設に関する幅広い知識が必要であることから、建築士や施工管理技士といった資格を取得しておいたほうがいいでしょう。
もちろん、資格がないからといって、コンストラクションマネジメントに携われないというわけではありませんが、一級建築士などの資格を保有しているほうが、専門家としてさまざまな角度からサポートしやすくなるでしょう。
まとめ
建築・建設業界で働いている方の中で、コンストラクションマネジメントという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。とくに大規模なプロジェクトにおいては、全体の進行を管理する役割を担う、コンストラクションマネジメントが必要不可欠です。
コンストラクションマネジメントをおこなうには、専門的な知識と豊富な経験が必要になることから、建築士や施工管理技士などの資格を取得することをおすすめします。