
建築・建設業においてのVECDは、建設業界の人手不足や長時間労働問題、また利益率の低さを解決するためにも重要です。
しかし、具体的にVECDの定義が分からなかったり、アイデアが浮かばずに困っている方もいるでしょう。この記事では、建築・建設業におけるVECDの意味を深掘りし、提案の流れや具体的なアイデアについて解説します。

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目次
建築・建設業におけるVECD(バリューエンジニアリング・コストダウン)とは?
VECDは簡単にいうと、可能な限り建築費を下げるための考え方のことです。ただしVE(バリューエンジニアリング)とCD(コストダウン)はアプローチが異なります。ここからは、VECDについて、それぞれの意味や違いを解説します。
VE(バリューエンジニアリング)の意味と概要
VE(バリューエンジニアリング)とは、施工の品質を維持しながらコストを下げること、またはコストを維持して機能品質を向上させることです。日本では1960年台からEVの考え方が製造業に導入され、建築業界でも大手ゼネコンを中心としてEVが取り入れられるようになりました。
建築費を下げる方法はコストカットだけではないという考えに基づいて、様々なアプローチで建築費を下げて機能や品質を維持するよう努めます。
VEガイドライン|東京都によると、日本でのEVの基本方針は以下の4つです。
- 機能・品質を維持したままコストを下げる
- 機能・品質を向上させてコストは下げる
- コストを維持したまま機能や品質を向上させる
- コストが上がるが機能や品質も向上させる
引用:VEガイドライン|東京都
VEを取り入れることで企業側は、建築費を下げて公共工事の入札の確率を高めたり、より多くの工事を受注できるようになります。また施主にとっても機能や品質を向上させた成果物が受け取れるメリットがあります。
似た用語で「VA(バリューアナリシス)」という用語がありますが、日本語に訳すと「価値分析」です。VAは既存サービスの価値を再分析して、効率化することでコストを下げる考え方。原材料の発注先を変更したり、施工工程を見直したりして効率化するのが具体的な手段です。
一方でVEはこれから着工する工事に対して、同様または低いコストで今以上の価値を創出するのが目的です。目的はどちらも建築費の削減ではありますが、アプローチに違う点があるので混同しないようにしましょう。
CD(コストダウン)とは
次にCD(コストダウン)について説明します。CDとは「Cost Down」の略称で原則コストを削減するためには、機能や価値の低下もやむを得ないというスタンスで行われます。
VEが価値や機能の向上を目指しているのに対して、CDの趣旨は経費削減です。性能や仕様を下げるのはやむなしという考え方のため、予算を下げるために耐震等級を下げたり、建築基準法に違反しないギリギリまで機能を下げる場合もあります。
VECD活用のメリットと必要性
VECDはコストカットを目標に入れるのが前提な部分は同じですが、機能性や価値についての考え方が違うことがわかりました。次は建築業でVECDを取り入れるメリットや必要性について、詳細を説明します。
品質の保持がしやすい
建設VEを取り入れることで、発注者の負担を減らしつつ品質を維持・または向上させられます。冒頭でも説明した通り、VEの基本は機能や品質を維持または向上させて、なおかつコストを下げることです。
成果物の品質や仕様などを下げることなくコストのみ削減するので、より良いものを安く提供できます。
建設業では人手不足や長時間労働が問題となっていますが、VE提案によって効率的かつ同じ労力で質の高い建設工事を行えるため、成果物の質を保ったまま各種のコストを削減可能です。
建設業において成果物の品質は、企業の評判に直結するものです。安かろう悪かろうではなく、品質の高い成果物を安く提供できるという評判は、企業の価値を上げることにつながるでしょう。
外部コストの抑制ができる
VE提案によって、外部コストを抑制できるのも活用メリットの1つといえます。建設業界はさまざまな規模の工事を請け負っていますが、その際に1事業者が多数の仕入れ先や下請け業者と関わって成果物を完成させます。そのため1つの元請が多数の関連会社へ支払うコストも膨大です。
建設VEを取り入れて、自社独自の技術を活用すれば、外部コストを抑制できます。自社オリジナルの技術を開発して施工に活かすことで、より効率的な作業が実施できるからです。
外部コストを抑制することで建築費を抑え、なおかつ品質を維持した工事ができるので、建設EVは重要といえるでしょう。
顧客満足度が向上する
建設VEの活用により、顧客満足度が向上します。建設業に限らず、顧客が求めているのは「品質が良くて費用が妥当、あるいは安いもの」です。いわゆるコストパフォーマンスが良い成果物を提供できる建設業者は、受注量も増えるでしょう。
建設EVは自社でオリジナルの技術や施工提案を実施して、品質を下げずにコストカットを目指します。つまり建設費が下がるため発注者のコストの負担も下げられ、なおかつ品質も良いため顧客満足度が上がります。
顧客満足度が上がれば口コミでより多くの集客ができる可能性もあり、また既存顧客のリピート率も高くなるため、最終的に事業者側にも建設EVはプラスに働くでしょう。
VE提案、CD提案の仕方

建設EVやCDの提案について、全体の流れや進行するうえでの注意点を紹介します。コストだけに注目しすぎて品質をおざなりにしたり、ステップを間違えないようにVE・CD提案を実施しましょう。
VE提案、CD提案の流れ
VE提案・CD提案の流れを解説します。
- VE対象の選定
- 必要な情報を収集
- 定義の策定・情報の整理
- 実現可否の分析
- 分析結果をもとに提案を実施
- 提案内容のフォロー
- 最終評価
まずはVEの対象を決めてから、提案の内容を考えていきます。対象を決めないと、的確な情報収集や分析ができないからです。
削減対象を決めたら、EV提案のための情報収集を始めましょう。具体的には、選定したEV対象に求められる技術とコストの情報、及び担保したい品質についてです。その際に、発注者からヒアリングした要望の内容、建築基準法などの関連法案の制約についても情報を集めてください。また、よりEVの精度を上げたい場合は、ライバル企業の情報も集めると良いでしょう。
次にVE対象の成果物の構造・機能の定義を実施します。法律による制約によって、実現できない場合もあるので、先ほど集めた情報をもとにして成果物の構造や付帯する機能を整理しましょう。
構造や機能の定義が終わったら、VE提案が現実的かどうか分析します。提案の内容が素晴らしくても、法律的な制約に引っ掛かれば実現できません。機能ごとにかかるコストの算出を行い、かけるコストの上限を決めてください。
コストの上限を決めたら、そのコストに合わせて削れる機能・残すべき機能を分類し、最終的な定義を実施しましょう。
分析結果をもとにして、次は機能を向上させた提案を発注者に対して投げかけます。EV提案書を作成し、集めた情報をもとにしたコストの算出根拠や改善したポイント、また保証できる品質について明確に記載しましょう。文章のみではわかりにくいため、図表を用いて視覚的に発注元に提案内容が伝わるように工夫してください。
最後に、VE提案が採用された後は報告書を作成して、フォローアップを行います。報告書の役割は主にVE提案の振り返りです。工事が想定通りのコストで進んだのか、また工事進捗に遅れが生じなかったかなどを振り返り、書類にまとめましょう。
また目標として建てたコストを達成できたかも数値化し、報告書に記載してください。
その後報告書をもとに工事への全体評価を実施し、改善点を見つけましょう。建設EVはPDCAサイクルが重要であり、一度限りで終わるものではありません。次回の工事に活かせるよう振り返りを実施して、改善点やもっとよくできる点を見つけましょう。
業務効率アップなどの手法として「QCDSE」などの手法も取り入れると、改善点を見つけやすくなります。
建設工事の初期段階で提案を行う
VE・CD提案の流れで説明した通り、提案は建設工事の初期段階で実施しましょう。原則としてVECD提案は平面計画や構造計画の段階で基本設計や機能の定義を実施し、目標コストを決める流れです。
もちろん細かなデザイン変更、設備変更などは着工後に提案できる可能性がありますが、削減できるコストの割合としては小さくなります。建築費を大幅に下げるような提案を考えているなら、初期の構想段階でVE・CD提案を実施してください。
VECD提案の事例
具体的にVECD提案とはどのようなものなのか、実際の事例を紹介します。いきなりVECD提案をしろといわれても、具体案が思い浮かばないというときに参考にしてください。
VE案の事例
施工段階でVE提案をする場合は、以下のようなアイデアが考えられます。
- 施工方法について…他社とは違うオリジナルの工法を提案、コストが低い旨を提案する
- 原材料について…同じメーカーの原材料の仕入れコストがを低くできるため、より低い原価で工事ができることを提案する
上記の提案によってコストを低下させることで、請負契約前なら発注者側のコスト負担が減るメリットを提示して、受注率を高めることが可能です。また請負契約後の提案であれば、コストを下げて建設業者の利益を増やす効果があります。
CD案の事例
次にCD提案の事例を紹介します。CDは建築費を下げることが目的で、そのために機能や品質の低下は免れないという考え方のため、以下のような提案が可能です。
- 計画段階では耐震等級が2だったが、予算の都合上耐震等級を1に変更する
- 計画段階では耐震等級が3であったが、予算の都合上コンクリート強度を下げ、耐震等級は指定無しに変更する
- 効率アップのために施工法を変更する
- 建築基準法の下限ラインにまで、基準を下げる
基本的に機能や品質が低下する提案になるため、発注者に対してCD提案を実施したうえで合意を得る必要があります。
まとめ
建築業界のVECDは、建築業者のコストダウンや利益アップにつながるだけでなく、発注者側に良い品質かつ従来よりも安価に成果物を提供できる点がメリットです。
品質を下げずにより安く工事を請け負えるようになれば、当然受注率もアップするため、将来的に事業者の利益拡大にもつながります。
難しいのが、VEは品質や機能を低下させずにコストカットが必要な点です。自社で実施している従来の工法の見直しや原材料の仕入れ先の検討など、詳細な情報分析をしながらVECD提案を実施しましょう。