
土木技術者とは、土木に関わる知識や技術を習得し、設計や施工などで指導的立場に立って働く人のことを言います。
発注者の要望に合わせた土木構造物をつくるための計画・設計・施工から、築造された構造物の修繕・維持まで幅広い分野で活躍しています。
土木技術者は、ゼネコンやデベロッパー、建設コンサルタントなどさまざまな就職先で評価される存在です。資格と経験を活かし、土木設計や施工管理だけでなく、営業や公的機関の技術職を目指す方も多いです。
この記事では、土木技術者の仕事内容や将来性から年収の相場まで、リアルな現状を紹介します。
土木技術者になるために

土木技術者として認められるためには、土木に関する知識や経験があるという公的な証明が必要です。その証明となるのが、土木関連の資格です。
土木関連の資格として代表的な「土木施工管理技士」と「技術士(建設部門)」、資格取得に役立つ大学・短大・専門学校について紹介します。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は、工事全体を品質、工程、安全、原価、環境の5つのポイントで管理します。
土木施工管理技士には1級と2級があり、1級は主任技術者及び監理技術者として、すべての土木工事の施工管理を担うことが可能です。2級は主任技術者のみとなり、施工管理できる工事の請負金額に制限があります。
土木工事は、発注者が公共か民間か、所属する会社の立場が元請か下請かで施工管理の方法に違いがあります。
また工事の現場を動かす中心的存在のため、土木の知識や経験だけでなく、コミュニケーション能力や不測の事態に対する適応能力も求められます。
技術士(建設部門)
技術士とは、科学技術に関する豊富な実務経験と、技術者としての高い応用能力と倫理観を兼ね備えていると認められる国家資格です。
技術士には21の部門があり、土木を含む建設業に関連する建設部門には11の専門分野があります。
就職先は国や自治体の技術職、建設コンサルタントなどが一般的ですが、専任技術者として土木の現場で活躍する方も多いです。
技術士(建設部門)には第一次と第二次の2つ試験があります。第一次試験の合格者か、認定教育機関の修了者は技術士補になることができ、その後第二次試験を受験して合格すると技術士となることができます。
大学・短大・専門学校
土木関連の資格取得に役立つのは土木工学です。一般的に土木工学は、構造工学、水工学、地盤工学、土木計画学の4つの分野で構成されています。
この土木工学の知識をベースに、社会基盤の建設や維持と自然環境の保全を両立するのが土木技術者の仕事だと言えるでしょう。
土木工学で有名な大学としては、日本大学工学部や東京理科大学理工学部が挙げられます。 土木系の資格取得に強い短大・専門学校には、日本工学院(八王子)や中央工学校などがあります。
土木技術者の仕事内容

土木技術者の仕事内容を調査・計画・設計、工事の施工管理、構造物の維持修繕の3つのポイントで紹介します。
1. 調査・計画・設計
事業内容を決める調査・計画・設計は、土木工事の発注者側の業務です。発注後、入札や契約が行われ受注会社による施工や維持業務が実施されます。
一番身近な土木工事である道路工事を例に概要を紹介しましょう。
調査では、交通状況の現況を調査・整理し、将来の交通量の推計を行います。
計画では、現況調査とともに対象地域の土地利用や環境保全計画などとの関連性も精査して、道路整備計画を立案します。
この調査と計画を基に、地形図や各路線との比較表を作成して行われるのが道路設計です。
道路設計は、道路概略設計、道路予備設計、道路詳細設計の3つの段階を経て、工事発注に必要な図面・設計書を完成させます。
2. 工事の施工管理
土木工事業を含む建設業の許可を受けた建設業者が建設工事を施工する場合、適正な施工を確保するため一定の資格を有する技術者を現場に配置しなければなりません。
請負金額や元請・下請に関係なく配置しなければならないのが主任技術者です。4,000万円(建築一式は6,000万円)以上の下請契約を締結した工事では、主任技術者にかえて監理技術者を配置する必要があります。
建設工事を受注した業者は、工事全体の施工計画を発注者に提出し、それに基づいて施工管理をします。施工管理のポイントは、品質、工程、安全、原価、環境の5つです。
ただし下請業者は、専門業者として請負った範囲の施工管理となります。
3. 構造物の維持・修繕
社会基盤である道路や橋梁、ダムなどは、人々の暮らしを支える重要な土木構造物です。
これらが経年劣化や自然災害などで、利用に支障を起こさないように維持・修繕するのも土木の重要な仕事です。
わが国の社会基盤は高度経済成長期以降に整備され、50年以上経過しているものが多くありますから、特に老朽化対策は喫緊の課題となっています。
維持・修繕工事は新設工事と違い現在使用中のものを取り扱うため、調整の難しさや特別な技能を必要とする場合も多いです。土木技術者の手腕が試されやすい工事であると言えます。
土木技術者の将来性は?

土木技術者は安全で豊かな国づくりにとって欠かせない存在です。
土木技術者を中心とした土木工事業がなければ国土はあっという間に荒廃してしまうでしょう。土木技術者の将来性がいかに豊かであるかを紹介します。
土木工事はなくならない
土木技術者は社会のさまざまシーンで必要とされています。
道路整備・港湾・空港・鉄道などの交通網や発電・電気・ガスなどのエネルギー関連はもちろん、土地の造成や改良、あらゆる建築物の基礎などにも土木技術者は欠かせません。
自然災害の防止や復旧の最前線に立つのも土木技術者です。
つまり社会が存在する限り土木工事はなくなることがなく、土木技術者の仕事はあり続けることになります。
また土木技術者は、これらの工事の現場だけではなく、国や自治体、建設コンサルタント、研究機関などでも働いています。わが国の土木技術は海外でも高く評価されているため、海外プロジェクトで働く土木技術者も増えています。
土木技術者の将来性には不安のかけらもないと言えるでしょう。
土木技術者は不足している
土木技術者は、社会基盤の整備・更新という一定のニーズがあるにもかかわらず、建設業を中心に不足しているのが現状です。
少子高齢化による人口減少や、土木技術者として職務を担ってきたベテランの引退が加速していることなどが原因とされています。
また土木は3Kの代表格であるかのようなイメージが根深くあるため、特に若い層が入職を避けているようです。
しかし現在の土木の現場は先進技術やIT化で大きく様変わりし、休日や福利厚生は向上し、新入社員のための研修制度導入も進んでいます。
違う見方をすれば、土木技術者として真摯にキャリアアップを目指す方であれば、売り手市場である今が転職や就職のチャンスであるとも言えます。
土木技術者の年収と転職

土木技術者として資格を取得しキャリアを積むことでどれくらいの年収が期待できるのか、転職するにはどのような心構えが必要なのかを紹介します。
土木技術者の年収相場
複数の大手求人サイトで土木技術者の求人を調査しました。
業種別では建設コンサルタントの土木技術者の年収が高く、なかでも公的機関を取引先とする企業では、600万円〜800万円となっています。幹部候補の場合は700万円〜1,000万円です。
ただ建設コンサルタントでは技術士の資格取得と実務経験が条件となっていました。
これに対してゼネコンでは、550万円〜650万円が中心となっています。
1級土木施工管理技士の資格取得者で、施工管理の実務経験年数によっては1,000万円まで上限が上がっているケースがあります。
資格の種類や実務経験年数が、即戦力としての貢献度の判断に大きく影響するようです。
土木技術者とキャリアアップ
土木技術者のキャリアアップの方法は、諸官庁、建設コンサルタント、ゼネコンなど所属する組織で違ってきます。
共通するのは、土木工学などをベースとした知識を更新していく意欲と、常に職務上の実務能力を向上させるという心構えではないでしょうか。
かつてのような、一つの会社や組織に縛られる社会風潮はすたれつつあります。
「土木を一生の仕事にする」と決めたのであれば、目標とする年収や待遇に到達するまで土木に関わる仕事で転職してキャリアアップを目指すという選択肢もあるはずです。
まとめ
ここまで、土木技術者について、以下のことについて紹介してきました。
- 土木技術者になるために
- 土木技術者の仕事内容
- 土木技術者の将来性
- 土木技術者の年収と転職
土木は、世の中がどう変わっても、生活や経済の基盤を支えるために無くなることはない仕事です。
時代の変遷とともに、ハードやソフトは変貌するでしょうが人と自然が中心であることに変わりはないでしょう。このような土木を支える土木技術者を目指す方が増えていくことを強く期待しています。