設計事務所に就職しても生活できないのは本当?8つの理由を解説

「設計事務所に就職したら生活できないのは本当なのか?」

設計事務所への就職を検討している人のなかには、このように生活するのが大変と耳にした人も多いのではないでしょうか。

実際に複数の求人サイトを確認したところ、設計事務所の平均年収は540万円ほどです。国税庁が公表している日本の平均給与が461万円ですので、日本平均と比較しても決して低いわけではありません。

ただし、平均年収ですので、一部の高年収が釣り上げている可能性がありますし、年収以外にも「生活できない」と感じる面があるのも事実です。

そこでこの記事では、設計事務所に就職しても生活できないと言われる理由や設計事務所の種類と忙しさ、有意義に働く方法などを解説します。

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設計事務所に就職しても生活できないと言われる8つの理由

設計事務所に就職しても生活できないと言われる理由は、以下の8つです。

  • 競合が多く顧客獲得へのハードルが高い
  • 申請作業に時間がかかる
  • 激務の割に給料が低い傾向にある
  • 設計以外の仕事も兼務することがある
  • 高収入を得られるのは一部の大手建築事務所
  • 持ち帰り仕事が多い
  • 顧客対応に追われる
  • 長期間泊まり込みになることも少なくない

それぞれ詳しく解説します。

競合が多く顧客獲得へのハードルが高い

設計事務所に就職しても生活が厳しい理由の一つは、競合の多さです。

新規の顧客を獲得するためには、実績やデザイン力だけでなく、営業力も必要です。しかし、多くの設計事務所がひしめくなかで、他社と差別化を図ることは難しく、安定した収入を得るための顧客基盤を築くのは容易ではありません。

短期間で何度も利用するサービスではないため、とにかく新規顧客を獲得することに注力する必要があります。

申請作業に時間がかかる

設計業務には、建築確認申請や許認可取得などの行政手続きが必要不可欠です。

これらの申請作業は時間がかかり、煩雑な書類作成や提出に多くの時間を費やさなければなりません。設計自体に集中できる時間が減少し、効率的な働き方が難しくなるため、結果として生活が厳しくなることがあるでしょう。

激務の割に給料が低い傾向にある

設計事務所の仕事は、クライアントとのやり取りから設計図の作成など、たくさんの業務をこなす必要があります。

そのため、業務量の割に、給料が低いと感じる傾向にあります。

特に中小の設計事務所では、人件費を抑えるために新人設計士の給料を抑えられるケースも珍しくありません。結果的に、長時間労働に見合った報酬が得られないことが多々あります。役職が上がり管理職として高給をもらえるようになっても、部下育成や会社として抱える案件の全体管理を任されるなど、業務量と給料のバランスが取れていないと感じるでしょう。

また、激務のあまりほぼ毎日終電で帰るような生活を送っていると、食生活が乱れてきて、まともな生活ができていないと感じる可能性もあります。

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設計以外の仕事も兼務することがある

設計事務所では、設計業務以外にも雑務や事務作業を兼務することが少なくありません。

例えば、営業活動やクライアント対応、プロジェクト管理など、設計とは直接関係のない業務もこなす必要があります。これにより、専門業務に集中できず、効率が落ちることが収入の不安定さにつながります。

さらに、自分のやりたい仕事ができていないと感じ、心身ともに疲弊する可能性もあるでしょう。

高収入を得られるのは一部の大手建築事務所]

高収入を得られる設計事務所は、主に一部の大手企業に限られます。

中小規模の設計事務所では、案件数やプロジェクト規模に限界があるため、収入が安定しないことが多くあります。

また、大手企業に就職するためには高いスキルや実績が求められる狭き門であるため、誰もが簡単に高収入を得られるわけではありません。

持ち帰り仕事が多い

設計事務所では、仕事の量が多く、オフィスでの作業時間だけでは終わらないことが頻繁にあります。また、自宅でも仕事ができてしまうがゆえに、持ち帰って作業するルーティーンになりがちです。

仕事を自宅でもするのが当たり前になれば、プライベートの時間が削られ、精神的な負担も増すため、生活が厳しく感じられることがあります。

顧客対応に追われる

設計事務所の仕事では、顧客対応に追われることで、しんどいと感じる人も少なくありません。

設計の仕事は、設計図を作成したら終わりではなく、建築物が完成し引き渡した際に一区切りつきます。事務所が休みのときでも現場は動き続けるため、建築中はさまざまな理由で顧客から要望が届くことがあります。

顧客からの要望や連絡にはなるべく早く対応する必要があるため、休暇中であっても対応に追われる可能性があります。

長期間泊まり込みになることも少なくない

繁忙期には、担当棟数が多くなり、場合によっては事務所に泊まり込みで仕事することもあります。

なぜなら、土日は顧客対応が中心となり、平日は役所への申請作業になるので、納期内で案件を進めるためには平日も土日も仕事をしないといけないのです。そのため、1ヶ月会社に泊まり込んで帰れないなんてこともあります。

このような過酷な労働環境は、体力的にも精神的にも大きな負担となり、長期間続くと生活の質が大きく低下します。

設計事務所の種類と忙しさ

設計事務所には、以下の2種類があります。

  • アトリエ系事務所
  • 組織系事務所

それぞれで忙しさも異なるため、概要と合わせて解説します。

アトリエ系事務所

アトリエ系事務所は、デザイン性の高い意匠設計を得意とする設計事務所です。

基本的に少数精鋭の組織が多く、個々のデザイナーの創造性や技術力が重視され、クライアントの要望に応じたカスタムメイドの建築設計が行われます。そのため、設計の自由度が高く、ユニークなプロジェクトに関われたり、自身のオリジナリティにこだわれたりします。しかし、各プロジェクトに対して深く関与することで、一人ひとりの負担が大きく、特に締め切り前や重要なプレゼンテーションの前には徹夜作業が続くこともあるでしょう。

また、アトリエ系事務所は規模が小さい傾向にあり、デザイナーは営業や一部の事務作業も兼務することもあります。これにより、忙しさが増すことになりますが、その分、デザインに対する情熱を直接的に反映させることができるため、やりがいを感じるデザイナーも少なくありません。

一般的に建築家と言われる人の多くは、アトリエ系事務所に所属しています。

組織系事務所

組織系事務所は、意匠設計・構造設計・設備設計・積算など、施工前の一連の流れを一社で完結できる設計事務所です。

社員数は多く、組織的かつ効率的に運営される大規模な設計事務所です。デザイン性よりも、シンプルで機能性の高い堅実な設計を手がけることが多く、プロジェクトや業務内容ごとにデザイナー、プロジェクトマネージャー、CADオペレーターなどと業務分けされます。

そのため、アトリエ系事務所に比べて個々の業務負担は分散されるものの、チーム全体の進捗管理やクライアントとの調整が求められるため、依然として忙しい日々が続きます。

また、組織系事務所では、多くのプロジェクトが同時進行することが一般的であり、急な変更や追加の要求にも迅速に対応しなければなりません。特に、プロジェクトの締め切り前や大型案件のピーク時には、残業や休日出勤が常態化することもあります。しかし、組織的な支援体制が整っているため、キャリアアップの機会や福利厚生が充実している点は、従業員にとって魅力的です。

設計事務所で有意義な働き方をする方法

設計事務所で有意義な働き方をする方法は、以下の3つです。

  • 事前に業務内容と最低賃金を調べる
  • キャリアプランを明確にする
  • スキルを磨き続ける

それぞれ詳しく解説します。

事前に業務内容と最低賃金を調べる

設計事務所で有意義に働くためには、就職前に業務内容と最低賃金をしっかり調べることが重要です。

事前に具体的な業務内容や一日のスケジュール、期待される役割を確認することで、自分のスキルや志向に合った職場かどうかを判断できます。また、最低賃金や平均的な給与水準を調査し、給与面でも納得のいく条件かどうかを確認することが大切です。

労働環境や給与が自分の希望と大きく異なる場合、長期的なモチベーション維持が難しくなる可能性があります。さらに、口コミや社員のレビューを参考にすることで、職場の雰囲気や働きやすさを把握し、自分に最適な設計事務所を見つける手助けとなるでしょう。

キャリアプランを明確にする

設計事務所で有意義に働くためには、自分のキャリアプランを明確にすることが不可欠です。

なぜなら、下積み時代は、どうしても給料が低いなかで頑張る必要があるからです。キャリアプランを明確にして将来を見据えることで、給料の低い時期を乗り切る気持ちを作れます。

まず、短期的な目標として、どのようなスキルや経験を積みたいかを考えましょう。そして、長期的にはどのポジションに就きたいか、どのようなプロジェクトに関わりたいかを描くことが重要です。これにより、日々の業務に対するモチベーションが向上し、自己成長につながる行動を意識的に取れます。さらに、定期的にキャリアプランを見直し、目標の進捗状況をチェックすることで、必要なスキルアップや経験の積み方を調整できます。

明確なビジョンを持つことで、日々の業務が単なる仕事以上の意味を持ち、自己実現へとつながるでしょう。

スキルを磨き続ける

常にスキルを磨き続けるのも、設計事務所で有意義に働き続ける上で大切です。

なぜなら、報酬を上げるには、自身のスキルを磨き、経験を積み続けることが欠かせないからです。また、建築設計の分野は技術やトレンドが日々進化しているため、最新の情報や技術にキャッチアップすることが重要です。

建築やデザインの知識・技術だけではなく、人脈を構築したり、ヒアリングスキルを身につけたりするのも必要でしょう。スキルの向上は、仕事の質を高めてプロジェクトの成功に直結するため、毎日コツコツ続けることが大切です。

まとめ

設計事務所に就職しても生活できないと言われる理由として、以下の8つを紹介しました。

  • 競合が多く顧客獲得へのハードルが高い
  • 申請作業に時間がかかる
  • 激務の割に給料が低い傾向にある
  • 設計以外の仕事も兼務することがある
  • 高収入を得られるのは一部の大手建築事務所
  • 持ち帰り仕事が多い
  • 顧客対応に追われる
  • 長期間泊まり込みになることも少なくない

平均年収は決して低いわけではありませんが、業務量の多さや顧客対応の大変さから「生活できない」と感じるようです。

大変な仕事ではありますが、キャリアプランを明確にしてスキルを磨き続けることで、有意義な仕事を実現できます。デザインや建築関係、設計関係の仕事に携わりたい人は、さまざまな設計事務所を比較しながら、就職・転職活動を進めてみてください。

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