【管工事施工管理技士になる】難易度と将来性を徹底解説!試験制度の変更点は?

さまざまな分野のプロフェッショナルが集まる建設工事現場では、施工管理技士の指揮が欠かせません。

ここでは建物の配管全てを取り仕切る「管工事施工管理技士」の難易度と将来性について解説します。

まずは具体的な業務内容とやりがい、令和3年に制度が見直された管工事施工管理技術検定への対応策と、多くの受検者が戸惑う実務経験の定義について説明します。

最後に転職市場における平均年収も地域ごとにまとめました。みなさんのキャリアアップの参考になれば幸いです。

管工事施工管理技士の具体的な仕事内容

「管工事施工管理技士」になるには、国土交通省が管轄する国家資格「管工事施工管理技術検定」の2級もしくは1級の合格が必要です。

2級合格者は下請け発注額が4,000(建築一式工事は6,000)万円未満の一般建設業で営業所の専任技術者となり、中規模建設工事現場の主任技術者としても認められます。

1級合格者は下請け発注額が4,000(建築一式工事は6,000)万円以上の特定建設業で営業所の専任技術者となり、中・大規模建設工事現場で主任技術者・監理技術者(要講習)として認められます。

専任技術者とは建築法で営業所に必ず置かなければならない役職です。

主任技術者と監理技術者の違いは、受け持つ建設工事現場の規模の大きさで仕事内容の差はありません。

管工事施工管理技士はどんな仕事をする?

建設工事現場には電気、板金、土木、管工、造園、塗装といった多種多様な専門業者が出入りします。

そのうち流体の管工事業者をまとめ上げるのが管工事施工管理技士の仕事です。

※流体とは湯水や空気、ガス、蒸気などを指し、電気やケーブルは含まれません。

管工事施工管理技士は、給排水・浄化槽・空調ダクト・冷暖房・冷凍冷蔵・ガス管・厨房設備といった各分野の配管に関わる職人さんたちを統括し、施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、コスト管理に努めます。

規模が大きくなればそれだけ現場の連携が必要となりますが、完成すれば大きな一体感と達成感が得られるでしょう。

コミュニケーションスキルは必須!

多くの人と関わる管工事施工管理技士には、コミュニケーションスキルが必須です。

いくつか具体例を挙げてみましょう。

各分野のまとめ役

職人さんにはまとめ役がいます。

例えば排水設備には下水道排水設備工事責任技術者、給水設備には給水装置工事主任技術者などです。

役所関係

行政手続きのため直接最寄りの役所窓口へ出向くことがあります。

近隣住民

建設工事現場の近隣住民への挨拶も管工事施工管理技士の仕事です。

斫り(はつり)工

斫り工はコンクリートの分野ですが、配管を通すために壁の破壊を依頼することが多々あります。

管工事施工管理技士の難易度と合格率

幅広い知識と応用力が必要とされる管工事施工管理技士は難易度の高い資格といえます。

しかし「独学は絶対に不可能」というレベルではありません。働きながらスキルアップとして資格取得を目指すケースも多いです。

過去問題や講習会、学習コミュニティサイトやアプリを活用して知識の定着に励みましょう。

令和2年令和3年
1級旧学科試験旧実地試験第一次検定第二次検定
受験者数(人)13,5318,21115,8274,540
合格者数(人)4,7385,0183,7923,300
合格率(%)3561.12473.3
参照元:国土交通省
令和2年度 管工事施工管理技術検定(1級・2級)合格者
令和3年度 1級管工事施工管理技術検定「第一次検定」合格者
令和3年度 管工事施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者
令和2年令和3年
2級旧学科試験旧実地試験第一次検定第二次検定
受験者数(人)12,3489,54411,5808,938
合格者数(人)7,6835,5145,7666,054
合格率(%)62.257.849.867.7
参照元:国土交通省
令和2年度 管工事施工管理技術検定(1級・2級)合格者
令和3年度 1級管工事施工管理技術検定「第一次検定」合格者
令和3年度 管工事施工管理技術検定(1級・2級)「第一次検定(2級後期)」及び「第二次検定」合格者

試験制度の変更点は?

施工管理技術検定制度は令和3年に見直しがあり、従来の「学科試験」と「実地試験」が「第一次検定」と「第二次検定」へ変更されました。

※旧制度との違いは後述する「勉強方法と過去問題の必要性」をご覧ください。

第一次検定付与される資格第二次検定付与される資格
1級管工事施工管理技術検定施工技術のうち基礎となる知識及び能力を有するかどうかを判定1級管工事施工管理技士補施工技術のうち実務経験に基づいた技術上の管理及び指導監督に係る知識及び能力を有するかどうかを判定1級管工事施工管理技士
2級管工事施工管理技術検定2級管工事施工管理技士補2級管工事施工管理技士

また、第一次試験に合格すると受験した級の「管工事施工管理技士補」として認められるようになりました。

技師補が得られるメリットは以下の通りです。

1級管工事施工管理技士補

  • 監理技術者の補佐業務を行える
  • 資格は永年有効
  • 再受験時に第一次試験が免除される
  • 経営事項審査の評価項目「技術力(Z)」に4点加点される

2級管工事施工管理技士補

  • 資格は永年有効
  • 再受験時に第一次試験が免除される
  • 経営事項審査の評価項目「社会性(W)」のCPD単位にカウントされる

管工事施工管理技士の受験資格にある実務経験とは?

管工事施工管理技能検定の受験に必要な資格を紹介します。

表中に指定学科とあるのは、土木工学、都市工学、衛生工学、電気工学、電気通信工学、機械工学または建築学に関する学科です。

詳細は一般財団法人全国建設研修センターのこちらの「指定学科について」のページで確認できます。

1級管工事施工管理技術検定
学歴実務経験年数
指定学科の卒業生指定学科以外の卒業生
大学・専門学校(高度専門士に限る)卒業者3年以上4年6ヶ月以上
短期大学・高等専門学校・専門学校(専門士に限る)卒業者5年以上7年6ヶ月以上
高等・専門学校10年以上11年6ヶ月以上
その他15年以上

2級管工事施工管理技術検定(第一次検定のみ17歳以上の在学生も対象)
学歴実務経験年数
指定学科の卒業生指定学科以外の卒業生
大学・専門学校(高度専門士に限る)卒業者卒業後1年以上卒業後1年6ヶ月以上
短期大学・高等専門学校・専門学校(専門士に限る)卒業者卒業後2年以上卒業後3年以上
高等・専門学校卒業後3年以上卒業後4年6ヶ月以上
その他8年以上

受験資格の条件は複雑に分類されています。上記が全てではないので、実際に願書を記入する際は一般財団法人全国建設研修センターをご覧ください。

受験資格にある「実務経験」とは?

管工事施工管理技術検定を受検するためには、指定学科もしくは指定学科以外の卒業後に、1年以上の指導監督的実務経験を含めた規定の実務経験が必要とされています。

実務経験として認められる工事種別工事内容
冷暖房設備冷温熱源機器据付工事、ダクト工事、冷媒配管工事、冷温水配管工事、蒸気配管工事、燃料配管工事、TES機器据付工事、冷暖房機器据付工事、圧縮空気管設備工事、熱供給設備配管工事、ボイラー据付工事、コージェネレーション設備工事
冷凍冷蔵設備冷凍冷蔵機器据付及び冷媒配管工事、冷却水配管工事、エアー配管工事、自動計装工事
空調設備冷温熱源機器据付工事、空気調和機器据付工事、ダクト工事、冷温水配管工事、自動計装工事、クリーンルーム設備工事
換気設備送風機据付工事、ダクト工事、排煙設備工事
給排水・給湯設備給排水ポンプ据付工事、給排水配管工事、給湯器据付工事、給湯配管工事、専用水道工事、ゴルフ場散水配管工事、散水消雪設備工事、プール施設配管工事、噴水施設配管工事、ろ過器設備工事、受水槽又は高置水槽据付工事、さく井工事
厨房設備厨房機器据付及び配管工事
衛生器具設備衛生器具取付工事
浄化槽設備浄化槽設置工事、 農業集落排水設備工事 ※終末処理場等は除く
ガス配管設備都市ガス配管工事、プロパンガス(LPG)配管工事、LNG配管工事、液化ガス供給配管工事、医療ガス設備工事 ※公道下の本管工事を含む
管内更生工事給水管ライニング更生工事、排水管ライニング更生工事 ※公道下等の下水道の管内更生工事は除く
消火設備屋内消火栓設備工事、屋外消火栓設備工事、スプリンクラー設備工事、不活性ガス消火設備工事、泡消火設備工事
上水道配管工事給水装置の分岐を有する配水小管工事、本管からの引込工事(給水装置)
下水道配管工事施設の敷地内の配管工事、本管から公設桝までの接続工事 ※公道下の本管工事は除く
その他の管工事代表的な工事内容を実務経験証明書に記入する。
職業訓練期間や夜間部在学中の実務期間条件により認められるケースがあります。

実務経験とは、管工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理などに直接関わった経験をいいます。

具体的には以下の3つです。

  1. 受注者として指揮監督した経験
  2. 発注者側の現場監督技術者としての経験
  3. 設計者としての工事監理経験

詳細は一般財団法人全国建設研修センターのページ最下部から「受検の手引PDF」をダウンロードして、ご自身の経歴と照らし合わせてご確認ください。

実務経験の注意点

実務経験は管工事の施工に直接関わった業務のみを指します。

したがって、工事現場での事務や営業、アルバイト期間や研修期間は対象外です。

また、工事着工前の設計者としての業務、調査、メンテナンス、保守・維持などもカウントできません。

実務経験証明書の記入例

受検に必要な書類一式A~D票に実務経験を証明する記入箇所があります。

ここでは1級2級共通のA票を例に説明しましょう。

A-3「技術検定実務証明書」

画像引用元:受検の手引【PDF】

証明者欄には、現在の勤務先の代表者などの記名が必要です(証明印は不要)。

勤務先と所属部署、実務経験の内容、在籍期間、実務年数を記入します。Aは在籍期間なので研修期間なども含めます。

Bの実務年数はあくまでも管工事に従事した実際の年数です。

A-4「上記実務経験のうち指導監督的実務経験の内容」

画像引用元:受検の手引【PDF】

A-3で記入した実務経験のうち、1年以上指導監督的な業務を務めた経験を記入します。

1件の工事が1年以内の場合は件数を追加してかまいません。もし書ききれない場合は証明書をコピーして続きを記入してください。

A-5「チェックリスト」

A-5はA-3の裏面にあたります。受検申込者と証明者または代理者(実務経験を証明できる直属の上司など)がチェックしてください。

記載された内容に不備や疑問点がある場合、証明者または代理者あてに確認の電話が入ります。

実務経験の虚偽申告とは?

虚偽の実務経験で不正に施工管理技士の資格を取得する事例が複数発覚したため、国土交通省は令和2年8月に技術検定不正受検防止対策検討会を設置し、同年10月に提言を取りまとめました。

管工事施工管理技術検定の虚偽申告のケースは様々ですが、参考に事例を2つ紹介します。

ケース1.実務経験の重複を知らなかった

土木・管工事・造園・電気通信工事・建築・電気工事の6種目は重複して実務経験の申告ができないのですが、これを知らなかったというケースがあります。

例えば、2月から6月までの5ヶ月間を土木工事、4月から11月までの8ヶ月間を管工事の現場に従事した場合、管工事の実務経験は8カ月ではなく5ヶ月となります。

重複している4月から6月までの3ヶ月を省かなくてはならないからです。

ケース2.勤務先の指示による虚偽申請

社内調査や第三者委員会の調査により、経験していない実務経験を記載するよう指示していた事例があります。

虚偽申告用に独自対策テキストを用意したり、発覚防止に受験番号や回答を調整するなど、非常に悪質なケースといえます。

今後は受検申請書類の電子申請の導入や既存データベースとの連携による重複チェックが検討されています。

知らなかった!では済まされないので、受検の手引きをじっくり読み込むことが大切です。

勉強方法と過去問題の必要性

管工事施工管理技術検定は、働きながら資格取得を目指す人が大半ではないでしょうか? 

朝から晩まで勉強できる環境の人は少ないはずです。したがって、毎日スクールに通うより通信講座や独学が現実的です。

平日、早朝、通勤時間、残業がある日と無い日、休日、それぞれの時間帯に合わせたスケジュールを立てておくとよいでしょう。

令和3年に見直された新制度では、旧制度の学科試験が第一次検定に、実地試験が第二次検定として再編されました。

学科試験は知識が問われていましたが、新制度では能力を問う問題も出題されます。実地試験は能力が問われてきましたが、新制度では基礎内容も出題されます。

新制度になっても旧制度の過去問題は必要!

1級2級ともに、新設の基礎・応用能力問題は旧制度の実地試験における穴埋め問題のアレンジです。

また、施工要領図の判読も過去問題からのパターンが出題されるため、旧制度の過去問題で対策が可能です。

2級の一次検定は24点が合格基準。4択のマークシートで52問中40問を選択して解答します。新設の基礎能力問題4問(1問2解答)は、全て解答しなければなりません。

二次検定は正確な専門用語と数値で簡潔に記述する能力が求められます。あらかじめ記述文をまとめて、時間配分を考慮する必要があります。

1級の一次検定は36点が合格基準。4択のマークシートで73問中60問を選択して解答します。新設の応用能力問題7問(1問2解答)は、全て解答しなければなりません。

二次検定は正確な文章や語句、専門用語や数値などを記述する能力が必要とされ、誤字脱字、崩し文字は減点の対象となるので注意が必要です。

転職市場で管工事施工管理技士の将来性は?

地方都市部に関わらず、人の暮らしがある限り建物の建設と設備管理の求人はなくなりません。

ライフラインの一端を担う管工事施工管理技士は需要の高い職種といえるでしょう。

求人業界はゼネコン、ハウスメーカー、リフォーム会社、プラント、地元の工務店、公務員などです。

なお、企業にとっての管工事施工管理技士の雇用は、経営事項審査の得点アップというメリットがあります。

経営事項審査の得点とは、公共事業の入札に有利にはたらく経営規模の評価です。1級管工事施工管理技士は技術力(Z)の評価が5点(要監理技術者資格証・講習)、2級は2点カウントされます。

転職する側のメリットは、第一に資格手当や給与のベースアップが見込めることです。

次に、年をとっても長く働ける点、同時に高齢化によって若手へのニーズが高まっている点も挙げられます。ちなみに、リフォーム業界では女性の管工事施工管理技士の求人が増えているそうです。

転職後の将来性【その後の資格取得】

管工事施工管理技士は、その他の資格を取得する際にメリットがあります。

以下はその一例です。転職先でさらなるキャリアアップを検討してはいかがでしょう。

条件目指す資格メリット
実務経験2年以上の1級管工事施工管理技士建築設備士受験資格が得られる
1級もしくは2級管工事施工管理技士給水装置主任技術者2つの試験科目が免除される
浄化槽設備士講習と効果評定を受けられる

管工事施工管理技士の平均年収

管工事施工管理技士の平均年収は、2級が300万円台から、1級は500万円台からで700万円台が目安です。

多くの場合20代から徐々に上がって50代がピークとなります。

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地域
年収(円)工事案件例年収(円)工事案件例
北海道400~650医療福祉施設、大学、学校施設500~700工場、プラント、研究施設
東京400~699学校法人常勤教員(教員免許不要)500~780文化施設、オフィスビル、プラント
福岡450~650オフィス、商業施設、公共施設、工場300~600ホテル、病院、介護施設、高層マンション
名古屋400~450分譲マンション修繕工事400~600通信用建物、社宅
大阪450~800オフィスビル、マンション、商業設備480~700マンション大規模修繕
参照:求人ボックスSAT株式会社セコカンプラス

まとめ

実務経験が必要な管工事施工管理技士は、誰でもすぐになれる職業ではありません。

しかし大きな現場で多くの人を束ねるのはやりがいのある仕事です。関連資格でキャリアアップする道筋がつけやすく、将来をよく見通せるでしょう。

また、60代以降もマイペースで働き続けられるシニア枠が定番化しているのもうれしいポイントといえます。

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