
施工管理単体の離職率は公表されていませんが、建設業全体の離職率は10.0%で、全産業平均(14.2%)よりも低い水準にあります。一方で新規学卒者の3年以内離職率は40%前後と高く、若手の早期離職と業界の高齢化が深刻な課題となっています。
本記事では公的データに基づく建設業の離職率の実態、施工管理の離職率が高いと言われる理由、そして離職を回避するための具体的な対策まで詳しく解説します。今の職場で辞めるか迷っている方や、施工管理への転職を検討している方は、ぜひ判断材料としてお役立てください。
目次
建設業の離職率は10.0%で全産業平均より低い
まずは公的データをもとに、建設業の離職率の全体像を把握しましょう。
- 令和6年の建設業の離職率は10.0%
- 全産業平均との比較で見える「意外な事実」
- ただし「早期離職率」と「高齢化」は深刻な課題
令和6年の建設業の離職率は10.0%
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、建設業の離職率は10.0%、入職率は11.7%となっています。入職率が離職率を1.7ポイント上回っており、3年ぶりに入職者数が離職者数を上回る結果となりました。これは新規採用や中途採用の動きが活発化し、業界全体として人材の流入が回復しつつあることを示しています。(参照:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」)
なお施工管理職単体での離職率は公的に集計されていないため、業界全体の数値で判断するしかないのが現状です。施工管理は建設業のなかでも管理職寄りのポジションであり、現場作業員と比べて長期勤続する傾向もあるため、業界平均よりも離職率が極端に高いとは考えにくいでしょう。
全産業平均との比較で見える「意外な事実」
建設業の離職率10.0%という数値は、全産業平均と比べてどうなのでしょうか。同じ令和6年雇用動向調査によれば、全産業の離職率は14.2%、入職率は14.8%で、産業計と比較すると建設業のほうが4.2ポイントも低い水準にあります。
「建設業=離職率が高い」というイメージを持つ人は少なくありませんが、業界全体の年間離職率という数値で見る限り、決して飛び抜けて高い業界ではありません。離職率がとくに高い業界としては、宿泊業・飲食サービス業の25.1%、生活関連サービス業・娯楽業の19.0%などが挙げられ、建設業はむしろ離職率の低い側に位置しています。
ただし「早期離職率」と「高齢化」は深刻な課題
業界全体の年間離職率は低くても、新規学卒者の早期離職率は依然として高い水準にあります。建設業における新規高卒就職者の3年以内離職率は42.4%、新規大卒就職者は30.1%と、全産業平均(高卒38.4%・大卒34.9%)と比べても高卒は4ポイント高い結果です。せっかく入社した若手が3年以内に半数近く辞めていく現状は、業界の持続性を脅かす大きな問題となっています。(参照:厚生労働省「建設労働をめぐる情勢について」)
加えて、業界の高齢化も看過できません。建設業就業者の平均年齢は45.3歳で、55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下はわずか11.7%にとどまっています。若手の入職と定着を進めなければ、10年後の業界存続も危うい状況です。離職率の数字だけを見て安心するのではなく、こうした構造的な課題にも目を向ける必要があります。
施工管理の離職率が高いと言われる4つの理由

データ上は極端に高いとは言えないものの、施工管理が「辞める人が多い」といわれるのには理由があります。代表的な4つの要因を見ていきましょう。
- 長時間労働と休日出勤が常態化しやすい
- 精神的なプレッシャーと責任の重さ
- 転勤や現場移動による私生活の不安定さ
- 仕事量に対する給与の不満
長時間労働と休日出勤が常態化しやすい
施工管理がきついと感じる最大の要因は、長時間労働と休日出勤の常態化です。工期に間に合わせるために残業や休日出勤を強いられるケースは多く、天候不良で工事が遅れた分を後で取り戻すために連勤が続くこともあります。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されましたが、現場によっては運用が追いついていないケースもあり、依然として長時間労働の負担が大きい職場は少なくありません。プライベートの時間が削られる状態が続けば、心身ともに疲弊し離職を考える人が増えるのは自然な流れといえるでしょう。
精神的なプレッシャーと責任の重さ
施工管理は工程・品質・安全・原価という4大管理を一手に担う責任の重い仕事です。現場で事故が起これば責任を問われる立場であり、常に緊張感を持って業務にあたる必要があります。職人や協力会社、発注者など多様な立場の人と調整する役割でもあるため、人間関係のストレスも大きくなりがちです。
工期内に予算を守りながら高品質な工事を完成させるというプレッシャーは、若手や経験の浅い施工管理者にとってとくに重くのしかかります。こうした精神的負荷の蓄積が、離職を選ぶ理由として挙げられることは少なくありません。
転勤や現場移動による私生活の不安定さ
施工管理は担当する現場が変わるたびに勤務地が変わる仕事です。規模の大きい会社では全国各地に現場があり、長期出張や転勤が頻繁に発生することも珍しくありません。家族との時間を確保しにくく、結婚や子育てといったライフイベントとの両立が難しいと感じる人も多いです。
地域密着型の中小企業であれば移動範囲は限定されますが、大規模プロジェクトに関わる機会は減ります。働き方とキャリアのどちらを優先するかで悩み、結果として離職を選ぶケースも見られます。
仕事量に対する給与の不満
施工管理は他業種と比べて平均年収が高い職種ですが、業務量の多さや責任の重さに比べて給与が見合っていないと感じる人も少なくありません。長時間労働や休日出勤を含めた実労働時間で割り戻すと、時間単価としては必ずしも高くないというケースもあります。
また勤務先の企業規模によって年収には大きな差があり、中小企業では同じ仕事量でも大手より給与が低くなる傾向があります。年収アップを目指して大手企業や条件の良い会社へ転職する施工管理者も多く、これが業界内での人材移動を活発にしている要因のひとつです。
施工管理の離職を防ぐための4つの対策

現在の職場で辛さを感じている場合、すぐに辞める前にできる対策があります。段階的に判断していくことで、後悔のない選択ができるようになります。
- まずは原因を整理して優先順位をつける
- 社内の上司や人事に相談する
- 資格取得や担当現場の変更で環境を変える
- 改善が見込めなければ転職を検討する
まずは原因を整理して優先順位をつける
辞めたいという気持ちが強くなったときは、まず何が一番のストレス要因なのかを整理することから始めましょう。長時間労働なのか、人間関係なのか、給与なのか、転勤なのか。原因が明確になれば、それを解消する手段も見えてきます。
漠然とした不満のまま転職してしまうと、次の職場でも同じ理由で辞めることになりかねません。紙に書き出すなどして自分の気持ちを言語化することで、本当に転職が必要なのか、それとも社内で解決できる問題なのかが判断しやすくなります。
社内の上司や人事に相談する
原因が特定できたら、まずは社内で解決できないかを探ってみる価値があります。信頼できる上司や人事担当者に率直に相談することで、配置転換や業務量の調整、勤務地の変更といった対応が得られることもあるからです。優秀な人材ほど会社側も引き止めたいと考えるため、交渉の余地は意外と大きい場合があります。
ただし長時間労働や給与水準といった構造的な問題は、個人の交渉では解決しにくいのも事実です。相談しても改善が見込めない、あるいは相談すること自体が難しい職場であれば、次の段階に進むタイミングと判断してよいでしょう。
資格取得や担当現場の変更で環境を変える
現職にとどまる選択をする場合、1級施工管理技士などの資格取得や担当現場の変更によって、働き方そのものを変えていくアプローチも有効です。資格を取得すれば任される業務の幅が広がり、より責任あるポジションへ移ることで給与や評価面の不満が解消されることもあります。
担当する工事の種類を変えることで、勤務環境やチームの雰囲気が大きく変わるケースもあります。今の現場が辛くても、別の現場ではまったく違う働き方ができる可能性もあるため、すぐに辞める前に社内での選択肢を広げてみる価値はあるでしょう。
改善が見込めなければ転職を検討する
社内での対策をすべて試しても改善が見込めない場合は、転職を本格的に検討するタイミングです。施工管理の経験者は転職市場で需要が高く、より良い条件の職場を見つけられる可能性は十分にあります。長時間労働や低賃金で疲弊し続けるよりも、健康と生活を守るために環境を変える判断は決して逃げではありません。
転職活動を始める際は、現職を続けながら情報収集することをおすすめします。複数の求人を比較検討する余裕が持てるため、衝動的な選択を避けられます。建設業界に特化した転職エージェントを活用すれば、自分の市場価値や条件に合った求人を効率よく探せるでしょう。
離職率の低い施工管理会社を見極めるポイント
転職を選ぶ場合、次の職場で同じ失敗を繰り返さないよう、定着率の高い会社を見極めるポイントを押さえておきましょう。
- 平均勤続年数や離職率を公開しているか
- 週休2日制と残業時間の実績を確認する
- 建設DXや働き方改革に取り組んでいるか
平均勤続年数や離職率を公開しているか
求人情報や企業ホームページで、平均勤続年数や離職率といった定着指標を公開している企業は、自社の労働環境に自信を持っている可能性が高いです。一般的に平均勤続年数が10年を超える企業は、社員が長く働き続けられる環境が整っていると判断できます。
逆にこうした数値を一切公開していない企業は、開示できない事情がある可能性も考慮したほうがよいでしょう。面接の場で平均勤続年数や入社後の定着状況について質問することで、企業側の対応からも本気度が見えてきます。
週休2日制と残業時間の実績を確認する
完全週休2日制の導入有無や、平均残業時間の実績数値は、職場のホワイト度を測る重要な指標です。求人票で「週休2日(土日休み)」と書かれていても、実際には土曜出勤が常態化しているケースもあるため、「4週8閉所」や「年間休日120日以上」といった実績ベースの数字を確認することが大切です。
平均残業時間も「月20時間程度」など具体的な数値が示されている企業は、労働時間管理が適切におこなわれている可能性が高いといえます。残業時間の上限を厳格に守る運用ができている職場であれば、長時間労働で疲弊するリスクは大きく下がるでしょう。
建設DXや働き方改革に取り組んでいるか
施工管理アプリやクラウドツールの導入、BIM/CIMの活用、リモートワーク制度といった建設DXへの取り組みを積極的に発信している企業は、業務効率化と働きやすさの両立を経営課題として捉えているといえます。アナログな業務慣習に縛られている企業と比べて、施工管理者の負担軽減が進んでいる可能性が高いでしょう。
国土交通省が推進するi-Construction関連のプロジェクトに参加していたり、働き方改革関連の表彰を受けていたりする企業は、業界のなかでも先進的な取り組みをおこなっています。長期的にキャリアを築いていく場としても、こうした企業を選ぶ価値は大きいといえます。
まとめ
公的データで見る限り、建設業の離職率10.0%は全産業平均14.2%より低く、施工管理が「辞める人が多い職種」というイメージは必ずしも実態と一致していません。一方で新規学卒者の3年以内離職率は依然として高く、若手の早期離職と業界全体の高齢化は深刻な課題として残っています。
長時間労働や給与不満などの理由で離職を考えている場合は、まず原因を整理して社内で対策を試み、それでも改善しないなら転職を検討するという段階的な判断が大切です。施工管理の経験者は転職市場で需要が高く、定着率の高い企業を見極めれば、より働きやすい環境で長く活躍できる道が開けています。今の職場で我慢し続けるよりも、自分に合った環境を選び直す選択肢があることを覚えておきましょう。



